【更新終了】Bro.

十日伊予

文字の大きさ
105 / 271
1566 蜜月

謝罪

しおりを挟む



「わかってるなら、わかってる行動しろよ」
 アルバは妹に注意するように、ラスに説く。急に厳しくなった彼の口調にラスが小首を傾げる。
「それに気にしないでって言うのに、良いことだけ受けるのは違うだろ」
 眉根を寄せ、ラスにこんこんと説教をする。ツィオには決してできないことだ。ラスに言えるのは、彼が妹と年頃の近いこと、雰囲気が似ていること、それから彼に多少信頼があるからだ。
 ラスは最初はアルバが何を言おうとしているかわからなかったが、自分の傲慢さについて説かれているのだと気がつくと、途端に恥ずかしさでいっぱいになった。さっき彼に触られた時よりも顔を真っ赤にする。
「そうだね」
 消え入りそうな声で、ラスがつぶやく。
「ごめんなさい」
 彼はひどくいたたまれない表情だ。周りからの丁重な扱いは幼い頃からのことで、それは当たり前だと思っていた。自分が周りを萎縮させることにも鈍感でいたし、対等に扱ってくれない周囲に問題があるとまで思っていた。アルバに叱られて初めて、自分がどれだけ傲慢だったのかと気がつく。自分のこれまでの行いが頭を駆け巡り、ラスは羞恥心でたまらなくなる。
 顔を赤くして黙り込んでしまったラスに、アルバはふうと息を吐く。「しょうがないな」とつぶやき、落ち着くまで彼の頭を撫でてやった。
「アルバ、私は君が好きだ」
 赤みが引いてきた頃、ラスはそんなことを言い出した。羞恥のあまり潤んだ目をアルバに向け、その金色をきらめかせて見せる。
「こうやって私の至らなさを教えてくれる優しさが、本当に好きだ」
 心の底からの言葉を伝える。彼があまりにもまっすぐなので、アルバはそれを自然と受け入れられる。ラスの愛情を感じられ、ほっとするぬくもりがからだ中に沁み渡った。
「あの」
 言葉がアルバの口をついて出る。
「この前、怒鳴ってごめん」
 安心から、彼はそんなことを口走った。突き放されるのが怖くて謝れなかったことは、ずっと心にひっかかっていたことだ。アルバはすっと謝った自分に動揺したが、すぐに次の言葉は出てくる。
「謝りたかった」
「いいよ。私も首を突っ込んでごめんなさい」
 アルバが不安を取り戻すよりもずっと早く、ラスは彼を許す。それはあまりにあっけないので、アルバは驚きと嬉しさとで頭がぐちゃぐちゃになってしまった。ぽろりと涙がこぼれてしまう。
「アハ、なんだこれ、やだな」
 年下のラスの手前、こんなことで泣くのは恥ずかしく、アルバは強がる。拳で乱暴に涙を擦ると、ラスは優しくその手に触れた。
「大丈夫だよ、アルバ」
 穏やかにささやく。アルバは涙目でラスを見つめた。
「許すことと許さないことは相手の権利で、自分にはただそれを尊重することしかできない。それでも何かをしてしまったら、誠意として謝罪は必要だ。人として大切なのは、それをするかどうかだ。私は母さんにそう育ててもらった」
 ラスが微笑む。
「君が不器用なのはわかってる。それでも、勇気を出してくれたんだね」
 その言葉に、アルバはせきあえず泣き出してしまった。フードで顔を隠し、ぐずぐずと鼻をすする。ラスは彼に寄り添い、涙が止まるまでそばにいてくれた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...