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1566 蜜月
謝罪
しおりを挟む「わかってるなら、わかってる行動しろよ」
アルバは妹に注意するように、ラスに説く。急に厳しくなった彼の口調にラスが小首を傾げる。
「それに気にしないでって言うのに、良いことだけ受けるのは違うだろ」
眉根を寄せ、ラスにこんこんと説教をする。ツィオには決してできないことだ。ラスに言えるのは、彼が妹と年頃の近いこと、雰囲気が似ていること、それから彼に多少信頼があるからだ。
ラスは最初はアルバが何を言おうとしているかわからなかったが、自分の傲慢さについて説かれているのだと気がつくと、途端に恥ずかしさでいっぱいになった。さっき彼に触られた時よりも顔を真っ赤にする。
「そうだね」
消え入りそうな声で、ラスがつぶやく。
「ごめんなさい」
彼はひどくいたたまれない表情だ。周りからの丁重な扱いは幼い頃からのことで、それは当たり前だと思っていた。自分が周りを萎縮させることにも鈍感でいたし、対等に扱ってくれない周囲に問題があるとまで思っていた。アルバに叱られて初めて、自分がどれだけ傲慢だったのかと気がつく。自分のこれまでの行いが頭を駆け巡り、ラスは羞恥心でたまらなくなる。
顔を赤くして黙り込んでしまったラスに、アルバはふうと息を吐く。「しょうがないな」とつぶやき、落ち着くまで彼の頭を撫でてやった。
「アルバ、私は君が好きだ」
赤みが引いてきた頃、ラスはそんなことを言い出した。羞恥のあまり潤んだ目をアルバに向け、その金色をきらめかせて見せる。
「こうやって私の至らなさを教えてくれる優しさが、本当に好きだ」
心の底からの言葉を伝える。彼があまりにもまっすぐなので、アルバはそれを自然と受け入れられる。ラスの愛情を感じられ、ほっとするぬくもりがからだ中に沁み渡った。
「あの」
言葉がアルバの口をついて出る。
「この前、怒鳴ってごめん」
安心から、彼はそんなことを口走った。突き放されるのが怖くて謝れなかったことは、ずっと心にひっかかっていたことだ。アルバはすっと謝った自分に動揺したが、すぐに次の言葉は出てくる。
「謝りたかった」
「いいよ。私も首を突っ込んでごめんなさい」
アルバが不安を取り戻すよりもずっと早く、ラスは彼を許す。それはあまりにあっけないので、アルバは驚きと嬉しさとで頭がぐちゃぐちゃになってしまった。ぽろりと涙がこぼれてしまう。
「アハ、なんだこれ、やだな」
年下のラスの手前、こんなことで泣くのは恥ずかしく、アルバは強がる。拳で乱暴に涙を擦ると、ラスは優しくその手に触れた。
「大丈夫だよ、アルバ」
穏やかにささやく。アルバは涙目でラスを見つめた。
「許すことと許さないことは相手の権利で、自分にはただそれを尊重することしかできない。それでも何かをしてしまったら、誠意として謝罪は必要だ。人として大切なのは、それをするかどうかだ。私は母さんにそう育ててもらった」
ラスが微笑む。
「君が不器用なのはわかってる。それでも、勇気を出してくれたんだね」
その言葉に、アルバはせきあえず泣き出してしまった。フードで顔を隠し、ぐずぐずと鼻をすする。ラスは彼に寄り添い、涙が止まるまでそばにいてくれた。
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