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1566 蜜月
初めてのキス
しおりを挟むラスがアルバに抱かれたまま、使用人に人払いを言いつける。使用人が離れに行ってしまい、二人きりになると、ラスはアルバを強く抱き返した。
「ごめん」
アルバはもう一度謝る。それから、彼の「どうして」に答え始めた。
「ぼくの家族や好きな人は、みんなぼくを捨てたんだ」
最後に呪いの言葉を吐いたツィオを、ぼんやりと思い出す。
「ラスもそうなるのかって思うと、そうじゃないって確かめたくてしょうがなかった。何を言ったって抱きしめてほしかった」
自分の気持ちを口にしてみると、妙に冷静になる。アルバは自分がラスを傷つけたという事実を噛み締めた。
不意に、ラスがアルバから体を引き剥がす。アルバは胸を痛め、しかし何も言えない。
「アルバ、私は人間だよ。君を全てわかるのは無理だ」
ラスが悲しげにアルバを見つめる。
「君をわかるように努力する。だから君も、私に努力してほしい。不安なら試さずにそう言ってほしい。別れるじゃなくて、抱きしめてって言ってほしい」
そう言い、ラスの指先がアルバの頬を撫でた。
「今すぐには難しくても、信じてほしい」
彼の白くて細い指が、頬骨を滑り、唇に触れる。幼さの残る顔つきが、途端に色っぽくなる。ラスがキスをしたがっていると気づき、アルバは目を閉じた。
「キスしていい?」
しかしそのまま唇を重ねることはせず、ラスが尋ねる。アルバは拍子抜けした。
「キスなんて聞かずにしていいのに」
「初めてのキスだよ。ちゃんと聞いてからするのが礼儀だ」
真剣な面持ちでラスは言う。アルバを大切にしたい。
その感覚はよくわからないが、アルバは彼を尊重して頷いた。するとラスは目を閉じて、そっと顔を近づけてくる。アルバも目を閉じると、彼の唇が優しく触れた。アルバは何度も口づけられると思ったが、ラスはすぐに顔を離す。金色の瞳が、熱っぽくアルバを見ていた。
「好きだよ。アルバは私を好きかい?」
うっとりと彼が尋ねる。たちまち、アルバは困った顔になった。返事を迷い、目を泳がせる。きっとラスを好きだが、その心は口に出せるほど確かに掴めていない。
「……まだ時間かかるよね」
ラスの表情が曇った。アルバは慌てて首を横に振る。
「ううん、いいよ。ゆっくりでいい」
無理に好きだと言おうとしたアルバに、ラスは優しく微笑んで見せる。それから、もう一度彼にキスをした。
「ぼくのこと嫌いになった……?」
「こんなことで嫌うわけないよ」
不安げなアルバの手を包み込むように握り、じっと見つめてやる。心に、愛おしさがあたたかく広がった。
「大好きだよ、アルバ。私の傍にいてね」
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