【更新終了】Bro.

十日伊予

文字の大きさ
113 / 271
1566 蜜月

初めてのキス

しおりを挟む


 ラスがアルバに抱かれたまま、使用人に人払いを言いつける。使用人が離れに行ってしまい、二人きりになると、ラスはアルバを強く抱き返した。
「ごめん」
 アルバはもう一度謝る。それから、彼の「どうして」に答え始めた。
「ぼくの家族や好きな人は、みんなぼくを捨てたんだ」
 最後に呪いの言葉を吐いたツィオを、ぼんやりと思い出す。
「ラスもそうなるのかって思うと、そうじゃないって確かめたくてしょうがなかった。何を言ったって抱きしめてほしかった」
 自分の気持ちを口にしてみると、妙に冷静になる。アルバは自分がラスを傷つけたという事実を噛み締めた。
 不意に、ラスがアルバから体を引き剥がす。アルバは胸を痛め、しかし何も言えない。
「アルバ、私は人間だよ。君を全てわかるのは無理だ」
 ラスが悲しげにアルバを見つめる。
「君をわかるように努力する。だから君も、私に努力してほしい。不安なら試さずにそう言ってほしい。別れるじゃなくて、抱きしめてって言ってほしい」
 そう言い、ラスの指先がアルバの頬を撫でた。
「今すぐには難しくても、信じてほしい」
 彼の白くて細い指が、頬骨を滑り、唇に触れる。幼さの残る顔つきが、途端に色っぽくなる。ラスがキスをしたがっていると気づき、アルバは目を閉じた。
「キスしていい?」
 しかしそのまま唇を重ねることはせず、ラスが尋ねる。アルバは拍子抜けした。
「キスなんて聞かずにしていいのに」
「初めてのキスだよ。ちゃんと聞いてからするのが礼儀だ」
 真剣な面持ちでラスは言う。アルバを大切にしたい。
 その感覚はよくわからないが、アルバは彼を尊重して頷いた。するとラスは目を閉じて、そっと顔を近づけてくる。アルバも目を閉じると、彼の唇が優しく触れた。アルバは何度も口づけられると思ったが、ラスはすぐに顔を離す。金色の瞳が、熱っぽくアルバを見ていた。
「好きだよ。アルバは私を好きかい?」
 うっとりと彼が尋ねる。たちまち、アルバは困った顔になった。返事を迷い、目を泳がせる。きっとラスを好きだが、その心は口に出せるほど確かに掴めていない。
「……まだ時間かかるよね」
 ラスの表情が曇った。アルバは慌てて首を横に振る。
「ううん、いいよ。ゆっくりでいい」
 無理に好きだと言おうとしたアルバに、ラスは優しく微笑んで見せる。それから、もう一度彼にキスをした。
「ぼくのこと嫌いになった……?」
「こんなことで嫌うわけないよ」
 不安げなアルバの手を包み込むように握り、じっと見つめてやる。心に、愛おしさがあたたかく広がった。
「大好きだよ、アルバ。私の傍にいてね」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...