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十日伊予

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1567 復讐

顔見せ③

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 あわれみ深く愛を示してくれたと思った父に、アルバはまた恐怖を抱く。ぞっとして彼を見ていられなくなり、下を向いて床を見つめた。アルバがそうしていると、国祖神がプールから身を乗り出してずいと顔を寄せてくる。
「どうだ、アルバ、やれるか?」
 父の問いに、アルバは黙り込んでしまった。アルバの眼前で、国祖神が首を傾げる。
「できないのかよう?」
 国祖神のその声音は、突き放したように聞こえる。アルバは背筋が寒くなり、何か答えなければと焦る。
「だって、関係のない人たちが……!」
 彼の苦し紛れの言葉に、国祖神は興ざめしたような顔になる。
「それがどうした」
 冷たく言い、アルバへの落胆を隠そうともしない。
「奴らへの恨みはその程度か?」
 その一言に、アルバはハッとする。体がぶるぶると震えるのを堪え、拳を握る手に力を込めた。
「私は眷属を通して、いつもお前を見ていた」
 淡々と、国祖神が話す。
「お前を託したあの男が死んだ時も、よく覚えている。雷神を心の底から恨んで、奴らの不幸を切に願っていたよう。何を犠牲にしてでも、復讐を望んでいた」
 アルバは心臓が凍るような気分になる。養父ナャの話を出されると、彼はそむくことができない。
「お前は父のような気概はないのだな」
 国祖神が言い放つ。アルバは長く黙り込んで、やがて苦しげに「できる」とつぶやいた。
 たちまち、国祖神の機嫌が良くなる。彼はまたにこにこと笑って、アルバの頭を撫でまわしてくしゃくしゃにする。
「お前はできる子だ。うまくやれよう! そうだ、都での後始末は考えずとも構わない。兄上を閉じ込めたら、頃合いを見て私の雨に沈めるからなあ」
 国祖神は、上機嫌にそんなことを言う。アルバはさらに戦慄した。そんなことはお構いなしに、国祖神は満面の笑みだ。
「今のテレスは兄上に良い顔をする。そのせいで貴族までが雷神派に寄ってしまったからよう、一度やり直すのさ。こういう時のために、国を作った時、我が子達を地方に散らさず都の一箇所に集めたのだ」
 そう言って、彼はアルバの肩を叩いてやる。
「やり直す際には、お前をテレスの後釜に据えてやるよう」
 さぞ嬉しいだろう? と、息子の顔を覗き込んだ。アルバは真っ青で、冷や汗をかいている。そんなことは国祖神には些末なことで、「なんだ、楽しめよう」と軽く言うと、アルバから離れる。プールに手を差し入れて手のひらに薬湯をすくうと、きゅっと握った。彼が手を開くと、薬湯は青みががった透明の小石になっている。
「約束の証にやるよう」
 彼はアルバに小石を差し出す。アルバは断れず、震える手にそれを押し付けられた。
「お前がすることは三つだ。民草の雷神への不満を煽ること、発電所に事故を起こすこと、民草に雷神の屋敷を襲撃させること。わかったな?」
 国祖神がにっこりと微笑んで、またアルバの顔を覗き込む。アルバは額から汗を垂らし、自分の激しい拍動を感じながら小さく頷いた。


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