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十日伊予

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1567 復讐

揺れる心

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 二人は花束を従者に持たせ、視察に向かう。ザラス家の人材を技術者として育てるだけでなく、ルルトア村の人々も教育する計画のため、発電所を見て回ると村の様子も見る。村をまわる間、アルバは村人の皆に話を聞いて回った。平民として育ったアルバにはそれは自然なことだが、アルバは村人にとっては手の届かない存在なので、村人は皆大喜びでなんでも話してくれる。「下々の声を聞いてくださるなんて」と、アルバを拝んで泣き出す村人も少なくない。
「発電所は、煙がひどくって」
 村人はアルバたちにそうぼやく。
「建物の壁が煙で黒くなってしまうんです。子どもはいっつも咳が止まらないし、体の弱い子は長く生きられない」
「それに、水もばかみたいに使うんです。私たちの川から引くから、雨が少ないとすぐに水車も回らなくなって、粉も挽けなくなる!」
 彼らはそう話しながら、発電所の職員を睨みつける。職員は知ったことかとツンとそっぽを向いている。
「なんか、発電所、地元には結構嫌われてるね」
 村人たちの話を聞き、アルバがそんなことをつぶやく、ジーグリッドはシッと唇に指を当て、彼を黙らせた。
 その夜は、二人は発電所に泊まる。発電所には雷神やリルぺ家の者が訪れた時のために寝泊まりができる客室が用意されている。ウェイドはそこに呼び出された。
「久しぶり。うまくやってる?」
 部屋に入ってきたウェイドに、アルバは心なしか暗い声で声をかける。憎い雷神がいた空間で夜を明かすことが、嫌でたまらない。彼が寝泊まりするベッドには触れたくなくて、アルバはあたりをウロウロと歩いている。
「ええ、はい。おかげさまで」
 アルバを殺そうとした負い目で、ウェイドは目を泳がせてもじもじと答える。ベッドに腰かけていたジーグリッドは、ウェイドの顔を見ると眉を片方上げた。
「随分と顔色がいいな」
 ジーグリッドの言葉に、ウェイドははにかんで頭をかく。
「はは、ここでの暮らしは、結構よくって」
 そう答える彼は、出所したばかりの時よりずっと肉付きがいい。表情からも鬱屈とした雰囲気はなくなり、明るいものだ。
「俺の過去を知る人もいないし、技術者見習いとしていいもの食わせてくれるし、まあ、その、感謝しています」
 ウェイドはそう話し、アルバをチラチラと見る。アルバはその視線に気が付くと、話を続けるように促した。
「ええと、では、計画のことですが」
 胸の前で手を組み、ウェイドは報告を始める。技術者としてはまだまだ素人なので、今は特に力になれることはない。村に来た際に砦の見学をさせてもらったが、武器類は結構残っているらしい。武器はさびた刃物や防具がほとんどで、それらの保管場所は見せてくれたが、ひとつ残っている火薬庫は厳重に管理しているらしく場所も教えてくれない。
 そんな話に、計画の輪郭がはっきりしてきたことを感じ、ジーグリッドは腹の奥がきゅっと縮こまる感覚を覚える。アルバは真剣な顔で話を聞いている。彼の据わった目つきに、ジーグリッドは思わずうつむいてしまった。脳裏には花束をくれた少女の姿が浮かび、そこにマリートルトの笑顔が重なる。
 計画を降りたい。腹の底にはそんな気持ちが居座り、しかし口から外に出すには、王座の褒美とマリートルトの犠牲を切り捨てる覚悟がない。
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