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27話 転生者の秘密と正義
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我々の名はアルベルト・アインシュタイン。
かつて双子の弟と共にそう称し、我々は2人で1人を永遠に誓い合った。
2人で、1人の人物を演じるのは双子であった我々なら容易、とまではいかなくとも可能ではあった。我々兄弟は『より多くの人を便利に、平和の礎に繋がる』をテーマに2人で研究に没頭し、2人で世紀の大発見を達成した。
そして双子で1人の人物を演じ切る、この秘密を互いに墓まで持っていくと決めた。
こうして我々は、この秘密を共有する幾人かの友人と家族と、平和で幸せな生活を送っていた。
そのはずだったのに、兄である私よりも先に弟は……アルバートは、戦争と陰謀の闇に葬られてしまった。
第一次世界大戦中……我々アルベルト・アインシュタインは平和主義を謳い、『戦争反対』の立場にいた。しかし、戦争賛美を謳う側にとって、我々は権威あるうるさい学者だったのだろう。
戦後、弟は家族もろとも暗殺された。
もちろん、奴らは確実にアインシュタインを殺したと思っただろうが……我々は2人で1人、兄である私は生き延びて復讐に取り憑かれてしまった。
弟を暗殺したのがドイツのホロコースト関係者だと知り、憎悪は膨れ上がった。
そんな折、第二次世界大戦に突入。
私はヒトラーが行った恐ろしさと、より大きな被害がでる前に叩くべきだという考えの元、『最早、兵役拒否は許されない』と表明し、戦争賛美側へと寝返った。
まるで人が変わってしまったかのようだと言われたこともあったが……その通り、人が変わったのは事実。第一次世界大戦中は主に弟のアルバートが社交関係を担当していたが、第二次世界大戦中は私しかいないのだから。
より多くの人に役立つための研究をしよう、そういったかつての2人の志は、復讐心にまみれた私にはすっかり残されていなかった。
そんな私に……我々が発案した相対性理論を元に、核兵器の開発を進めたいという書状が届いた。我はその兵器がドイツ軍よりも早く作れられる事を願って認可の署名をした。
それからは、地獄の後悔と終わらぬ悲しみの嵐が心を苛んだ。
核兵器という化け物は、日本という礼節と美しさ溢れる国に落とされ……何の罪もない人々を殺めてしまった。私の責任でもある。
何度もあの時をやり直せないかと神に願ったか……核兵器開発は反対するべきだったと、事が過ぎてから悔やむなど……。
弟1人も守れず、人の役に立つ研究をしていたつもりが、大量の殺戮兵器を作るきっかけとなってしまった。
私の人生にいかほどの意味があったのだろうか。
あぁ、自分は……、人間とはひどく愚かな生き物なのだな。
第3次世界大戦がどのように行われるかはわからない。だが、一つ言えることは第4次世界大戦では、人類のみなが石武器を手に懸命に振るっているだろう。
文明が崩壊するほどの破壊力を持つ、核兵器。
それは今後一切、絶対に使用してはいけないのだという警告が世界の人々に伝われば良いのだが……それがせめて、大量殺戮兵器を生みだすきっかけを作ってしまった私の贖罪だ。
◇
魔法。
それは私がいた元の世界になかった、魔力をエネルギーとして異界の力を呼び起こす。
非現実的で非物理的な現象だ。
さらに権能などと呼ばれる、完全に物理法則を無視した事象を引き出せる能力を持つ人間もいる。まさに人類は脳内で描く風景を現実にできる程に進化した、そう思わざるを得ない異世界に生まれ変わってしまった。
そうと気付いた時――もう、私は何もしなくていいのだと肩の荷が下りた気分になった。
憎しみに囚われることもなく、人類の可能性を広げようと奔走する必要もなく、ただ自由に平凡に過ごせるのだと。
それが今では謎の精強部隊を率いる銀髪少女と刃を……いや、銃弾を激しく交えるはめになるとは……やはり想像できなかった。
対艦ミサイルを撃とうが、銃弾をばらまこうが、その全てを紅い魔力弾で相殺させる少女は神業に等しい戦い方で以って、私を翻弄してくる。
一度懐に入られた際は拡散銃やショットガンといったもので対抗するも、弾が飛ぶ軌道の全てを読み切っているのか華麗にかわされてしまう。
「問う、転生者アルベルト・アインシュタイン。貴様はなぜ、【ケネディア黒宝都市群】を攻める?」
戦場の最中、突如として少数で万の軍を蹴散らす勢いで突撃してきた部隊。そのトップと窺える銀髪の美少女が、意志だけでこちらを押し潰さんばかりの覇気と共に質問を飛ばしてくる。
私がさきほど飛ばした対艦ミサイルは……何かしらの権能で防いだのか彼女に傷一つ付ける事はできていないようだ。
「1800年代の兵器では通用しないか……」
今までの戦いを見て確信する。
間違いなく彼女は、この異世界で相対してきた敵の中でも最強の部類に入るだろう。
相手が対話を望むのであれば、私の方としてもあのような強者と敵対するのは遠慮したい。話し合いで解決するのならば、それにこしたことはないのだ。
「少女よ……我が黒宝を攻める理由、それは手に余る武器を所有しだした黒宝の人間を平和に導くため」
「なに?」
「魔法という文化と力が存在するこの世界に、あるまじき兵器を持っただろう。まだ赤子のような文明に、銃という狂気が横行したら世界は戦乱の渦となる。それを未然に防ぐために、我は黒宝を支配し、今の世に銃というものを完全に抹消する」
「確かに黒宝側にも『見えぬ悪魔』は出回っていると聞いているけど……」
私は誓ったのだ。
私の近代兵器を具現化できる権能を使ってでも、この世界に飛び散った『見えぬ悪魔』という武器を、兵器を使う存在のことごとくを回収し、滅するのだと。
「しかし、転生者の貴様が……?」
信じられぬ、といった顔で少女は私を見つめる。
彼女がどのようにして私を転生者と知ったのかはこの際、どうでもいい。彼女の目的を知りたい。
そのためにも自分の思想をなるべくは理解してもらう必要があるだろう。
「こちらの世界では、平穏に生きるつもりだった」
「平穏……とは正反対の行いをしているようだが? それにその権能で数多の命を奪ってきた転生者の言葉を容易く信じられるものか……」
「私はこの能力を使い、冒険者として日銭を稼ぐために少しは活躍したこともあった……しかし、それも妻と出会い、子を授かってからは、生きるために必要最低限しか使用してこなかった」
暖かく、陽が差す小さな庭。
妻が手入れをした花々はとても綺麗で私の心を優しくほぐす。4歳になる娘がその庭で駆け回り、無邪気な笑顔を向けてくる。
私にとって太陽のような存在、幸せな日々。
そうして私達家族は平和に暮らしていた。
それがある日、見覚えのある兵器によって突如壊された。
「私の今世での家族の命は、この世界にないはずの兵器によって奪われた」
仕事帰り、我が家が見えて来たと急ぎ足になっていた私の目に映ったのは……中距離対戦車ミサイル。
この世界の文化水準では私以外は知り得ないそれを保有する人物によって、私の家は簡単に破壊された。在宅だった妻も子も、原型が留めていないほどの有様だ。
それからその人物は街の至るところを破壊し始めた。『憎き白輝どもめ!』と叫び狂いながら、銃弾を罪なき人々に向けたのだ。
「我が白輝の新総統となる前、黒宝の人間には『見えぬ悪魔』という武器を扱える人間が戦場で活躍していると知ってな。私しか、そやつらに対抗できぬと思ったのだ」
その者が持つ兵器を上回る兵器で私は、彼を殺した。
そうして、私は気付いた。
これは使命であり、呪いなのだと。
前世で弟を守れず、大量殺戮兵器を作るきっかけを生みだしてしまった私だからこそ、今世ではあのような間違いは絶対に繰り返させないと。
自分以外の誰かが近代兵器を保有すれば世界をまた戦果の渦へと巻き込んでしまう。
そうなる前にどうにかしたかった。家柄が特別良いというわけではない、平和的な根回しも権力を握るにも時間がかかりすぎる。穏健に行動していては一生涯をかけて国のトップになるぐらいしかできない。
しかし、この原始的な世界で最も物を言うのは武力。
手短に素早く、事を進めるためには必須だった。
「アインシュタイン、貴様に確認だ。『見えぬ悪魔』の製造していないのか?」
「無論だ」
武器の製造? そんな危険なことはしない。技術が他国に盗まれれば世界に拡散してしまう。
兵士らが使っているあれは私が貸し与えた魔法だ。私の許可なく、武器は具現化しない。
だから銃が世界に広まることはない。まだ、な……。
「黒宝の誰かが製造法を解明し、それを国家事業として取り組めば……世界に『見えぬ悪魔』は拡散してしまうだろう。それを防ぐためには、私が一早く黒宝を統一する必要がある」
「他に……方法はあったはずだ、アインシュタイン……」
「我にはこれしかなかった。こうして戦争を引き起こし、誰が近代武器を持っているのかあぶりだす。同時に黒宝を手中に治め、そこから兵器を持つ者を取り締まる方法しか……既に私の残された寿命でやりきれるか、どうか……!」
もう私は34歳にもなる。
この世界の平均寿命は40後半と聞いた。そうなると……戦争後の統治を考えれば、10年から30年は時間を労するだろう。それまでに、どうにかして上手く黒宝と白輝をまとめ上げ、平和的な国を築き上げる。その礎を、今度こそ、人の役に立つ礎となるのだ。
「アインシュタイン。貴様には貴様なりの正義があるとわかった」
少女は今まで発していた圧力をさらに増大させる。
空間が歪むほどに放たれる彼女の魔力量は、とても脅威的だ。
「しかし、こちらにも引けない理由がある。歴史を容易く改変してしまう、その強大な力、転生者の進撃を放っておくわけにはいかない」
「少女よ、どうしても戦うか?」
「貴様の意思は継ぐ。だから安心して死ぬがよい、アインシュタイン」
どうやら彼女の目的は、私の殺害にあるようだ。
であるならば――
「いやはや、想像の斜め上をいくレディであるな」
我も、平和と信念のために、銀髪少女1人を前にして立ち止まっているわけにはいかない。
彼女は――彼女たちはここで確実に仕留めなければ、将来必ず私の道を阻む強敵となる。
直感が私にそう訴えかける。
だから私は後方の全軍と、前方にある都市を包むようにして超合金でできた核シェルターを展開させる。巨大な山と見まがうソレが瞬時にして生成されたのを確認し、さらに少女たちの部隊を囲むようにして穴の開いたシェルターを設置する。
そして短距離弾道ミサイルを遥か上空にて具現化。
魔法とはかくも便利、このように核ミサイルの破壊力を局所的に発揮できるよう調節できるとは。
それでもどうか、この兵器を使う機会はこれっきりであってほしいと願い……
核弾頭を持つ戦術核兵器を、シェルターの穴めがけて発射させた。
かつて双子の弟と共にそう称し、我々は2人で1人を永遠に誓い合った。
2人で、1人の人物を演じるのは双子であった我々なら容易、とまではいかなくとも可能ではあった。我々兄弟は『より多くの人を便利に、平和の礎に繋がる』をテーマに2人で研究に没頭し、2人で世紀の大発見を達成した。
そして双子で1人の人物を演じ切る、この秘密を互いに墓まで持っていくと決めた。
こうして我々は、この秘密を共有する幾人かの友人と家族と、平和で幸せな生活を送っていた。
そのはずだったのに、兄である私よりも先に弟は……アルバートは、戦争と陰謀の闇に葬られてしまった。
第一次世界大戦中……我々アルベルト・アインシュタインは平和主義を謳い、『戦争反対』の立場にいた。しかし、戦争賛美を謳う側にとって、我々は権威あるうるさい学者だったのだろう。
戦後、弟は家族もろとも暗殺された。
もちろん、奴らは確実にアインシュタインを殺したと思っただろうが……我々は2人で1人、兄である私は生き延びて復讐に取り憑かれてしまった。
弟を暗殺したのがドイツのホロコースト関係者だと知り、憎悪は膨れ上がった。
そんな折、第二次世界大戦に突入。
私はヒトラーが行った恐ろしさと、より大きな被害がでる前に叩くべきだという考えの元、『最早、兵役拒否は許されない』と表明し、戦争賛美側へと寝返った。
まるで人が変わってしまったかのようだと言われたこともあったが……その通り、人が変わったのは事実。第一次世界大戦中は主に弟のアルバートが社交関係を担当していたが、第二次世界大戦中は私しかいないのだから。
より多くの人に役立つための研究をしよう、そういったかつての2人の志は、復讐心にまみれた私にはすっかり残されていなかった。
そんな私に……我々が発案した相対性理論を元に、核兵器の開発を進めたいという書状が届いた。我はその兵器がドイツ軍よりも早く作れられる事を願って認可の署名をした。
それからは、地獄の後悔と終わらぬ悲しみの嵐が心を苛んだ。
核兵器という化け物は、日本という礼節と美しさ溢れる国に落とされ……何の罪もない人々を殺めてしまった。私の責任でもある。
何度もあの時をやり直せないかと神に願ったか……核兵器開発は反対するべきだったと、事が過ぎてから悔やむなど……。
弟1人も守れず、人の役に立つ研究をしていたつもりが、大量の殺戮兵器を作るきっかけとなってしまった。
私の人生にいかほどの意味があったのだろうか。
あぁ、自分は……、人間とはひどく愚かな生き物なのだな。
第3次世界大戦がどのように行われるかはわからない。だが、一つ言えることは第4次世界大戦では、人類のみなが石武器を手に懸命に振るっているだろう。
文明が崩壊するほどの破壊力を持つ、核兵器。
それは今後一切、絶対に使用してはいけないのだという警告が世界の人々に伝われば良いのだが……それがせめて、大量殺戮兵器を生みだすきっかけを作ってしまった私の贖罪だ。
◇
魔法。
それは私がいた元の世界になかった、魔力をエネルギーとして異界の力を呼び起こす。
非現実的で非物理的な現象だ。
さらに権能などと呼ばれる、完全に物理法則を無視した事象を引き出せる能力を持つ人間もいる。まさに人類は脳内で描く風景を現実にできる程に進化した、そう思わざるを得ない異世界に生まれ変わってしまった。
そうと気付いた時――もう、私は何もしなくていいのだと肩の荷が下りた気分になった。
憎しみに囚われることもなく、人類の可能性を広げようと奔走する必要もなく、ただ自由に平凡に過ごせるのだと。
それが今では謎の精強部隊を率いる銀髪少女と刃を……いや、銃弾を激しく交えるはめになるとは……やはり想像できなかった。
対艦ミサイルを撃とうが、銃弾をばらまこうが、その全てを紅い魔力弾で相殺させる少女は神業に等しい戦い方で以って、私を翻弄してくる。
一度懐に入られた際は拡散銃やショットガンといったもので対抗するも、弾が飛ぶ軌道の全てを読み切っているのか華麗にかわされてしまう。
「問う、転生者アルベルト・アインシュタイン。貴様はなぜ、【ケネディア黒宝都市群】を攻める?」
戦場の最中、突如として少数で万の軍を蹴散らす勢いで突撃してきた部隊。そのトップと窺える銀髪の美少女が、意志だけでこちらを押し潰さんばかりの覇気と共に質問を飛ばしてくる。
私がさきほど飛ばした対艦ミサイルは……何かしらの権能で防いだのか彼女に傷一つ付ける事はできていないようだ。
「1800年代の兵器では通用しないか……」
今までの戦いを見て確信する。
間違いなく彼女は、この異世界で相対してきた敵の中でも最強の部類に入るだろう。
相手が対話を望むのであれば、私の方としてもあのような強者と敵対するのは遠慮したい。話し合いで解決するのならば、それにこしたことはないのだ。
「少女よ……我が黒宝を攻める理由、それは手に余る武器を所有しだした黒宝の人間を平和に導くため」
「なに?」
「魔法という文化と力が存在するこの世界に、あるまじき兵器を持っただろう。まだ赤子のような文明に、銃という狂気が横行したら世界は戦乱の渦となる。それを未然に防ぐために、我は黒宝を支配し、今の世に銃というものを完全に抹消する」
「確かに黒宝側にも『見えぬ悪魔』は出回っていると聞いているけど……」
私は誓ったのだ。
私の近代兵器を具現化できる権能を使ってでも、この世界に飛び散った『見えぬ悪魔』という武器を、兵器を使う存在のことごとくを回収し、滅するのだと。
「しかし、転生者の貴様が……?」
信じられぬ、といった顔で少女は私を見つめる。
彼女がどのようにして私を転生者と知ったのかはこの際、どうでもいい。彼女の目的を知りたい。
そのためにも自分の思想をなるべくは理解してもらう必要があるだろう。
「こちらの世界では、平穏に生きるつもりだった」
「平穏……とは正反対の行いをしているようだが? それにその権能で数多の命を奪ってきた転生者の言葉を容易く信じられるものか……」
「私はこの能力を使い、冒険者として日銭を稼ぐために少しは活躍したこともあった……しかし、それも妻と出会い、子を授かってからは、生きるために必要最低限しか使用してこなかった」
暖かく、陽が差す小さな庭。
妻が手入れをした花々はとても綺麗で私の心を優しくほぐす。4歳になる娘がその庭で駆け回り、無邪気な笑顔を向けてくる。
私にとって太陽のような存在、幸せな日々。
そうして私達家族は平和に暮らしていた。
それがある日、見覚えのある兵器によって突如壊された。
「私の今世での家族の命は、この世界にないはずの兵器によって奪われた」
仕事帰り、我が家が見えて来たと急ぎ足になっていた私の目に映ったのは……中距離対戦車ミサイル。
この世界の文化水準では私以外は知り得ないそれを保有する人物によって、私の家は簡単に破壊された。在宅だった妻も子も、原型が留めていないほどの有様だ。
それからその人物は街の至るところを破壊し始めた。『憎き白輝どもめ!』と叫び狂いながら、銃弾を罪なき人々に向けたのだ。
「我が白輝の新総統となる前、黒宝の人間には『見えぬ悪魔』という武器を扱える人間が戦場で活躍していると知ってな。私しか、そやつらに対抗できぬと思ったのだ」
その者が持つ兵器を上回る兵器で私は、彼を殺した。
そうして、私は気付いた。
これは使命であり、呪いなのだと。
前世で弟を守れず、大量殺戮兵器を作るきっかけを生みだしてしまった私だからこそ、今世ではあのような間違いは絶対に繰り返させないと。
自分以外の誰かが近代兵器を保有すれば世界をまた戦果の渦へと巻き込んでしまう。
そうなる前にどうにかしたかった。家柄が特別良いというわけではない、平和的な根回しも権力を握るにも時間がかかりすぎる。穏健に行動していては一生涯をかけて国のトップになるぐらいしかできない。
しかし、この原始的な世界で最も物を言うのは武力。
手短に素早く、事を進めるためには必須だった。
「アインシュタイン、貴様に確認だ。『見えぬ悪魔』の製造していないのか?」
「無論だ」
武器の製造? そんな危険なことはしない。技術が他国に盗まれれば世界に拡散してしまう。
兵士らが使っているあれは私が貸し与えた魔法だ。私の許可なく、武器は具現化しない。
だから銃が世界に広まることはない。まだ、な……。
「黒宝の誰かが製造法を解明し、それを国家事業として取り組めば……世界に『見えぬ悪魔』は拡散してしまうだろう。それを防ぐためには、私が一早く黒宝を統一する必要がある」
「他に……方法はあったはずだ、アインシュタイン……」
「我にはこれしかなかった。こうして戦争を引き起こし、誰が近代武器を持っているのかあぶりだす。同時に黒宝を手中に治め、そこから兵器を持つ者を取り締まる方法しか……既に私の残された寿命でやりきれるか、どうか……!」
もう私は34歳にもなる。
この世界の平均寿命は40後半と聞いた。そうなると……戦争後の統治を考えれば、10年から30年は時間を労するだろう。それまでに、どうにかして上手く黒宝と白輝をまとめ上げ、平和的な国を築き上げる。その礎を、今度こそ、人の役に立つ礎となるのだ。
「アインシュタイン。貴様には貴様なりの正義があるとわかった」
少女は今まで発していた圧力をさらに増大させる。
空間が歪むほどに放たれる彼女の魔力量は、とても脅威的だ。
「しかし、こちらにも引けない理由がある。歴史を容易く改変してしまう、その強大な力、転生者の進撃を放っておくわけにはいかない」
「少女よ、どうしても戦うか?」
「貴様の意思は継ぐ。だから安心して死ぬがよい、アインシュタイン」
どうやら彼女の目的は、私の殺害にあるようだ。
であるならば――
「いやはや、想像の斜め上をいくレディであるな」
我も、平和と信念のために、銀髪少女1人を前にして立ち止まっているわけにはいかない。
彼女は――彼女たちはここで確実に仕留めなければ、将来必ず私の道を阻む強敵となる。
直感が私にそう訴えかける。
だから私は後方の全軍と、前方にある都市を包むようにして超合金でできた核シェルターを展開させる。巨大な山と見まがうソレが瞬時にして生成されたのを確認し、さらに少女たちの部隊を囲むようにして穴の開いたシェルターを設置する。
そして短距離弾道ミサイルを遥か上空にて具現化。
魔法とはかくも便利、このように核ミサイルの破壊力を局所的に発揮できるよう調節できるとは。
それでもどうか、この兵器を使う機会はこれっきりであってほしいと願い……
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