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吟遊詩人エリルと僕は婚約したが、彼女は闇をかかえている
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陰謀論かもしれないが世界を旅する芸人たちは王国の密偵である、という噂があった。一見華やかに見えるその世界は闇が深いのだと。
それが本当かどうかはわからない、だがオレは知っている。
闇が深い世界かどうかはともかく、華やかさからは信じられないほど、地味な草の根活動が彼らの輝かしい経歴のはじまりであるのだと。
オレが王国の歌姫と呼ばれるエリルと出会ったのは、彼女がまだ、安く飲める町外れの酒場の小さな舞台でひとり弾き語りをしていたころだ。
今は大きな舞台で演じることが多くなったエリルだが、それでも、この酒場には必ず寄る。彼女は古いファンを大事にしている。そして決まり文句を言う。
「私が初めて舞台に立ったのは、この、日暮し酒場のちょこっと劇場です」
と。
今日もその決まり文句は同じだったが、その後が違うことをオレたちは知っていた。観客たちは小さい酒場にひしめいている。
エリルの話に応え、歓声を楽しげにあげる。
「今日は報告があります」
きたぞ! わざとらしく、どよめく観衆。
オレは舞台に登る準備をする。
「一番最初のファンと、わたしエリルは、婚約することになりました」
オレは登壇する。
みんなオレとエリルのことをよく知っているから、台本通りだ。
その日が幸せの絶頂にあったのかもしれない。
そして、陰謀論は本当だったのかもしれない。
なぜって、オレの大好きなエリルはハネムーンで、各地をまわって歌を披露していくなか、大陸いちの都市である、大帝国と通称されるヴァレイリア帝国の帝都ヴァレイリアの宿に、ボロボロの状態で、本当にひどい状態で、逃げ込むように帰ってきたからだ。
エリルは、まるで自分の命より大事なもののように、古いまがまがしくも見える大きい鏡を背負っていた。
「エリル! しっかりしろ! なんで? どうしたんだ」
「ごめん、アルくん……。わたし死ぬかも。でもこの鏡をわたしと思って、大事にして……」
と言い残すとエリルは瞳を閉じ、その場で倒れた。
それが本当かどうかはわからない、だがオレは知っている。
闇が深い世界かどうかはともかく、華やかさからは信じられないほど、地味な草の根活動が彼らの輝かしい経歴のはじまりであるのだと。
オレが王国の歌姫と呼ばれるエリルと出会ったのは、彼女がまだ、安く飲める町外れの酒場の小さな舞台でひとり弾き語りをしていたころだ。
今は大きな舞台で演じることが多くなったエリルだが、それでも、この酒場には必ず寄る。彼女は古いファンを大事にしている。そして決まり文句を言う。
「私が初めて舞台に立ったのは、この、日暮し酒場のちょこっと劇場です」
と。
今日もその決まり文句は同じだったが、その後が違うことをオレたちは知っていた。観客たちは小さい酒場にひしめいている。
エリルの話に応え、歓声を楽しげにあげる。
「今日は報告があります」
きたぞ! わざとらしく、どよめく観衆。
オレは舞台に登る準備をする。
「一番最初のファンと、わたしエリルは、婚約することになりました」
オレは登壇する。
みんなオレとエリルのことをよく知っているから、台本通りだ。
その日が幸せの絶頂にあったのかもしれない。
そして、陰謀論は本当だったのかもしれない。
なぜって、オレの大好きなエリルはハネムーンで、各地をまわって歌を披露していくなか、大陸いちの都市である、大帝国と通称されるヴァレイリア帝国の帝都ヴァレイリアの宿に、ボロボロの状態で、本当にひどい状態で、逃げ込むように帰ってきたからだ。
エリルは、まるで自分の命より大事なもののように、古いまがまがしくも見える大きい鏡を背負っていた。
「エリル! しっかりしろ! なんで? どうしたんだ」
「ごめん、アルくん……。わたし死ぬかも。でもこの鏡をわたしと思って、大事にして……」
と言い残すとエリルは瞳を閉じ、その場で倒れた。
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