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逃避行の決意
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「ねぇ、アルくん。アルくんは何者なの?」
「ん? オレはただの村人だよ」
「古代魔法語が読めるってことは、……古代から来たひとなのかなって」
……オレが古代人? おれは柑橘類を育てる両親のもとで育った。その少年時代がある以上はその可能性はあるまい。
「いや、いくら勇者レンの村にいる人間だからって……」
「……いいにくいんだけど、まさかアルくん……勇者レンじゃないよね?」
「え? どうして? ってそんなことより作戦たてないと」
「……いいけどさ。アルくんが勇者レンだったら、どうしようって思ったの」
「なんで?」
「だって、建国姫イリスの婚約者じゃない。レンって……」
「ああ伝承ではな」
「魔王を倒すまでは結婚しないって、二人は誓っていたよね?」
「ああ、悲恋の物語として伝わっているな。魔王を封印したが、二人はその後行方がしれない。おそらく誰かに殺されたのだろう……と思われていたな」
リファイア王女が会話に割り込む。
「建国姫イリスさまが、魔王封印から300年が経過した現在にいらっしゃっているとしたら、会ってみたいですね……わたしは」
……たしかに、昔の偉人に会いたいという気持ちはわからないでもない。
だが……。
「なあ、後で話そう。鏡を無事持ち帰るのが使命なんだろ?」
「ええ……。魔王軍に近道を与えるわけには参りませんから」
と王女は言った。
「これをお貸しします」
と王女は髪飾りを外して僕に渡した。
「いや、ちょっとちょっと、髪飾りなんていらないですよ」
「建国姫イリスの懐刀ですよ……護身用に髪飾りに見えるように細工してあるだけです」
「オレに髪飾りをつけろと?」
「護身用ですから……、可愛くていいじゃないですか」
「いや、それは……」
王女は微笑んだ。
「からかってごめんなさい。偽装の魔法ですから……他のものにも擬態できます」
「男が持っていても不自然がないものにしたいですね……」
「ほら……笑って。アルさん。気負いすぎですよ」
「普通の剣のほうがいい気がしますが……」
「アルさんは村人ですよね? 訓練してないひとはこのぐらいが良いと聞いています」
……まあ確かに、小さい懐刀ぐらいがオレがうまく扱える武器の限界だろう。それに目立つのもよくない。
「わかりました。ありがとうございます」
「ねえ、アルくん。大丈夫だよ? 安心して! わたしがアルくんを護ってあげるから」
おれはエリルの顔をみる。屈託のない顔で笑っていた。
その笑顔をみて僕は安心した。
彼女が……密偵で……切った張ったに本当は自信があることを確信したからだ。
「……エリル。ありがとう! 頼りにするよ。オレもがんばるけどな」
「アルさん。そろそろ時間停止結界の効力が切れますよ……急いで」
とリファイア王女が言った。
「行ってきます!」
オレはエリルを連れて、鏡をぬけ帝都にもどる。王都までの逃避行になるだろう。ここに今度は自分の足で鏡を背負ってこなくてはならないのだ……。
強い想いを持って、オレは鏡へ古代魔法語を唱えた。
「ん? オレはただの村人だよ」
「古代魔法語が読めるってことは、……古代から来たひとなのかなって」
……オレが古代人? おれは柑橘類を育てる両親のもとで育った。その少年時代がある以上はその可能性はあるまい。
「いや、いくら勇者レンの村にいる人間だからって……」
「……いいにくいんだけど、まさかアルくん……勇者レンじゃないよね?」
「え? どうして? ってそんなことより作戦たてないと」
「……いいけどさ。アルくんが勇者レンだったら、どうしようって思ったの」
「なんで?」
「だって、建国姫イリスの婚約者じゃない。レンって……」
「ああ伝承ではな」
「魔王を倒すまでは結婚しないって、二人は誓っていたよね?」
「ああ、悲恋の物語として伝わっているな。魔王を封印したが、二人はその後行方がしれない。おそらく誰かに殺されたのだろう……と思われていたな」
リファイア王女が会話に割り込む。
「建国姫イリスさまが、魔王封印から300年が経過した現在にいらっしゃっているとしたら、会ってみたいですね……わたしは」
……たしかに、昔の偉人に会いたいという気持ちはわからないでもない。
だが……。
「なあ、後で話そう。鏡を無事持ち帰るのが使命なんだろ?」
「ええ……。魔王軍に近道を与えるわけには参りませんから」
と王女は言った。
「これをお貸しします」
と王女は髪飾りを外して僕に渡した。
「いや、ちょっとちょっと、髪飾りなんていらないですよ」
「建国姫イリスの懐刀ですよ……護身用に髪飾りに見えるように細工してあるだけです」
「オレに髪飾りをつけろと?」
「護身用ですから……、可愛くていいじゃないですか」
「いや、それは……」
王女は微笑んだ。
「からかってごめんなさい。偽装の魔法ですから……他のものにも擬態できます」
「男が持っていても不自然がないものにしたいですね……」
「ほら……笑って。アルさん。気負いすぎですよ」
「普通の剣のほうがいい気がしますが……」
「アルさんは村人ですよね? 訓練してないひとはこのぐらいが良いと聞いています」
……まあ確かに、小さい懐刀ぐらいがオレがうまく扱える武器の限界だろう。それに目立つのもよくない。
「わかりました。ありがとうございます」
「ねえ、アルくん。大丈夫だよ? 安心して! わたしがアルくんを護ってあげるから」
おれはエリルの顔をみる。屈託のない顔で笑っていた。
その笑顔をみて僕は安心した。
彼女が……密偵で……切った張ったに本当は自信があることを確信したからだ。
「……エリル。ありがとう! 頼りにするよ。オレもがんばるけどな」
「アルさん。そろそろ時間停止結界の効力が切れますよ……急いで」
とリファイア王女が言った。
「行ってきます!」
オレはエリルを連れて、鏡をぬけ帝都にもどる。王都までの逃避行になるだろう。ここに今度は自分の足で鏡を背負ってこなくてはならないのだ……。
強い想いを持って、オレは鏡へ古代魔法語を唱えた。
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