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建国姫イリスの残した手記
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吟遊詩人のエリルはイリス王国の歌姫として、有名だ。
すっぴんで地味なカッコをすることで普段は普通の人間にまぎれて生活しているので、オレと一緒にいるとき無粋にデートを邪魔してくる人間に遭遇することはほぼないのだが。
ともあれ有名人であることは間違いない。そしてその名は大帝国の帝都ヴァレイリアでも通る。 それを利用して皇帝の宮殿に忍び込むことができたということらしい。
そしてあろうことか、皇帝はエリルを私室にくるように命じたという。普段ならそういうプライベートな誘いにエリルが応えることはないらしいのが、鏡を盗み出すのに好都合であったから、エリルは皇帝の私室にいくことに同意し、宮殿を歩き回り、鏡を盗み出すことに成功したという。
「エリル、皇帝……になにかイヤなことはされなかったか?」
「アル……なにもないよ……ただ呼ばれて、熱心なファンのように矢継ぎ早に質問されただけ」
彼女はニッコリとくもりない顔で笑った。
その顔を見て自分はより一層不安になる。
エリルは気づいていないが、オレは彼女が嘘をつくときのクセを知っていた。疑いようのないぐらい屈託のない笑顔を一見演じているように他人なら見えるだろう。しかし、その笑顔を見せる前、一瞬だけその瞳が曇るのをオレは恋人として見逃すことはなかった。
……だが、オレは追求することはなかった。彼女の気遣いを無駄にすることもない。エリルはオレに心配させたくないのだから、オレはエリルと皇帝の間に、なにかあったとは思うことはしないし、そのことで気をもむこともしない。それがエリルの望みなのだから。
「エリル、皇帝は魔王だという報告があがっています。まだ完全にそれが真実であるかはつかめていませんが、……どうでしたか?」
「……リア……さま。わたしには彼が人間としか思えなかったです。すいません。魔王の人間への擬態が見破れるほど、わたしは偉大な魔法使いではないので……。ふがいないですが」
「……そうですか……」
「なぜ、ヴァレイリア皇帝のベイザー皇帝が魔王だと思うのですか、リア。いえ、リファイアさま……。すいません。やはりリアと呼ぶのはしっくりこなくて」
オレはリファイア王女に尋ねる。
「それはイリス王女が残した言葉によりますね。彼女がいなくなる間際に残した書き置きがございます。これがそれを書き写したものです」
といって、王女は書棚から、一片の手紙を取り出し、オレに見せてくれた」
手渡されたその手紙はそれほど古いものではない。ただの写しだからであろう。
書かれていたのは、魔王を封印したことと封印は完璧ではなく、300年後には弱り、魔王が復活してしまうことだ。そして、驚くべきことにイリス王女は時間を超えて300年後の世界に向かって時間転移し、魔王を倒しに行くというのだ。封印の効果は弱体化で、魔王300年後の今、昔より圧倒的に弱い存在になっているはずだというのである。
イリス王女はまた勇者レンもその時間転移のたびに同行してもらうつもりだと書き残している。
なんだろう、これは相当な機密文書な気がする。
だが、不思議なことにオレはその内容を読んでも、そこまでの感慨をもたなかった。それはなぜなんだろうか。オレが思うにあまりに不思議なことがおきすぎたがゆえ、感覚が麻痺しているのかもしれない。
「……魔王との最後の闘いは帝国の宮殿で行われ、宮殿で魔王は封印されたはずなのです。しかし、魔王は表舞台
に300年たってもでてこない。そして皇帝は神だという噂が流れています。人間離れした能力を見せることが時折あるそうです」
「……神のわけがない。つまり、魔王であるとリファイアさまは思われるのですね」
「……はい」
リファイアはうなづいた。
「……いまはこの程度の説明でよろしいでしょうか? 残りの時間はこのあと、どうやって鏡を王都まで、運ぶか
の作戦を練るのにつかうべきだと思うのですが」
とリファイア王女はオレに提案した。その意見には同意だ。
どうするべきか? とりあえず鏡をつたって、帝都に戻る必要はありそうだ。エリルが魔法の治療によって回復している今なら、宿に戻っても、なんとかできそうな気もする。さて、エリルに意見を聞こう。
すっぴんで地味なカッコをすることで普段は普通の人間にまぎれて生活しているので、オレと一緒にいるとき無粋にデートを邪魔してくる人間に遭遇することはほぼないのだが。
ともあれ有名人であることは間違いない。そしてその名は大帝国の帝都ヴァレイリアでも通る。 それを利用して皇帝の宮殿に忍び込むことができたということらしい。
そしてあろうことか、皇帝はエリルを私室にくるように命じたという。普段ならそういうプライベートな誘いにエリルが応えることはないらしいのが、鏡を盗み出すのに好都合であったから、エリルは皇帝の私室にいくことに同意し、宮殿を歩き回り、鏡を盗み出すことに成功したという。
「エリル、皇帝……になにかイヤなことはされなかったか?」
「アル……なにもないよ……ただ呼ばれて、熱心なファンのように矢継ぎ早に質問されただけ」
彼女はニッコリとくもりない顔で笑った。
その顔を見て自分はより一層不安になる。
エリルは気づいていないが、オレは彼女が嘘をつくときのクセを知っていた。疑いようのないぐらい屈託のない笑顔を一見演じているように他人なら見えるだろう。しかし、その笑顔を見せる前、一瞬だけその瞳が曇るのをオレは恋人として見逃すことはなかった。
……だが、オレは追求することはなかった。彼女の気遣いを無駄にすることもない。エリルはオレに心配させたくないのだから、オレはエリルと皇帝の間に、なにかあったとは思うことはしないし、そのことで気をもむこともしない。それがエリルの望みなのだから。
「エリル、皇帝は魔王だという報告があがっています。まだ完全にそれが真実であるかはつかめていませんが、……どうでしたか?」
「……リア……さま。わたしには彼が人間としか思えなかったです。すいません。魔王の人間への擬態が見破れるほど、わたしは偉大な魔法使いではないので……。ふがいないですが」
「……そうですか……」
「なぜ、ヴァレイリア皇帝のベイザー皇帝が魔王だと思うのですか、リア。いえ、リファイアさま……。すいません。やはりリアと呼ぶのはしっくりこなくて」
オレはリファイア王女に尋ねる。
「それはイリス王女が残した言葉によりますね。彼女がいなくなる間際に残した書き置きがございます。これがそれを書き写したものです」
といって、王女は書棚から、一片の手紙を取り出し、オレに見せてくれた」
手渡されたその手紙はそれほど古いものではない。ただの写しだからであろう。
書かれていたのは、魔王を封印したことと封印は完璧ではなく、300年後には弱り、魔王が復活してしまうことだ。そして、驚くべきことにイリス王女は時間を超えて300年後の世界に向かって時間転移し、魔王を倒しに行くというのだ。封印の効果は弱体化で、魔王300年後の今、昔より圧倒的に弱い存在になっているはずだというのである。
イリス王女はまた勇者レンもその時間転移のたびに同行してもらうつもりだと書き残している。
なんだろう、これは相当な機密文書な気がする。
だが、不思議なことにオレはその内容を読んでも、そこまでの感慨をもたなかった。それはなぜなんだろうか。オレが思うにあまりに不思議なことがおきすぎたがゆえ、感覚が麻痺しているのかもしれない。
「……魔王との最後の闘いは帝国の宮殿で行われ、宮殿で魔王は封印されたはずなのです。しかし、魔王は表舞台
に300年たってもでてこない。そして皇帝は神だという噂が流れています。人間離れした能力を見せることが時折あるそうです」
「……神のわけがない。つまり、魔王であるとリファイアさまは思われるのですね」
「……はい」
リファイアはうなづいた。
「……いまはこの程度の説明でよろしいでしょうか? 残りの時間はこのあと、どうやって鏡を王都まで、運ぶか
の作戦を練るのにつかうべきだと思うのですが」
とリファイア王女はオレに提案した。その意見には同意だ。
どうするべきか? とりあえず鏡をつたって、帝都に戻る必要はありそうだ。エリルが魔法の治療によって回復している今なら、宿に戻っても、なんとかできそうな気もする。さて、エリルに意見を聞こう。
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