ひとくみの魔鏡の真相

蒼山りと

文字の大きさ
10 / 13

魔鏡の真相

しおりを挟む
「人間は……我々魔族をどうあっても滅ぼしたいと思うだろう……か」

……魔王ベイザーの目が寂しそうになぜか見える。

「そうだ。さっき口にすべらしたな……家畜にされたくはない」
「私とレンとイリスは300年前話し合った。そして、300年とりあえず待ってみてから結論をだそうということになった。憎しみは消えるだろうかと」
「完全には……消えないだろう。鏡を持ったエリルを襲った怪鳥はなんだったのだ? あれは……魔族だろう」
「ひとくみの魔鏡がなぜ? 私が封じられた帝都とレンとイリスが居た王国の王都に在ったと思う。あの魔鏡は……300年前の我々のちょっとした友情の証だったのだよ……。それを盗まれたら……どう感じるだろうか?」
「……友情の証……か」
「そうだ。仲が良ければ会いたくなるだろう。まして、公にはできない友情であればな」

……たしかに、わからないでもない。わざわざ敵地と近道を作る理由がないからだ。

「その友情を裏切られた……と思ったのだ。部下の暴走だが」
「……300年の間、人間側が記憶を持ち続けるのは難しい」
「わかっているよ。でもレンよ、お前は記憶を失っても変わらないな」
「別に納得したわけではない。理屈には合うと言っているだけだ」
「それで十分だ。なぁ、もう300年間をもらえないだろうか……。300年の間、魔族と人間は戦争をしなかった。それを持って魔族を信じてくれないか」
「……300年後、オレは生きていない……」
「イリスの聖女としての奇跡であれば、300年のときを渡ることができるはずだ……彼女はお前の身近にいるはずだが」

と、そのときだずっと聴いていたエリルが口を開いた。

「アルくん……。離婚しよう……。妹のエル……イリスさんといたほうが……あるくんはいいんだよね?」

彼女は精一杯の笑顔で言った。恋人であるオレがみなくても、その笑顔にムリがあるのは自明だった。瞳から……涙がこぼれ落ちそうなのがわかる。

「突然なにをいうんだ。オレがエリルを捨てて、妹と結ばれることを望んでいるとでも思っているのか?」
「……でも、そんな深い絆で結ばれた二人の間に割って入るなんてムリ……」

魔王ベイザーがそのとき意外なことを言った。

「エリル……お前は私の求婚を断った。人間の皇帝であった私の求婚をだ。それは、一生を誓った恋人がいるからだ……と思っていたが……」
「……あのときは……そう思っていたの。でも自信がない……」

……そうか……それであのときの笑顔に嘘をオレは感じ取ったわけか……。

「エリル……オレは自分がレンであろうと、君を捨てることはしない」
「……うん。そう言ってくれるとは思っていたよ」
「別れるなんて言うなよ?」
「……すまない。エリルよ。私は魔族だが人間の女性と恋をしたかったのだ……。なぜだか、わかってもらえるだろうか?」

……魔王がおずおずとエリルに話しかける。
エリルは応えない。

「……人間と真の友好関係を結ぶ、私とレンとイリスの夢が叶うと思ったからだ。だから、忘れてくれ。……迷惑な求婚をして申し訳なかった」

そう言って魔王は謝罪した。

「アルくん! 私やっぱり別れない」
突然大声でエリルがオレの名を呼ぶ。
「そうだよ、そう誓ったじゃないか」

……彼女を安心させるため、オレは彼女に精一杯の笑顔をみせた。
エリルも笑ってくれた。

こうして、魔鏡がなぜ、魔王復活の地と王都を結んでいたかの謎は解けたかに見えた。……だが、オレは勇者レンとしての記憶を取り戻すべきなのだろうか? そして、妹のエルは本当にかつて300年前に婚約したという恋人だったのだろうか。 ……それを確かめるべきなのか、悩むことになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...