魔王討伐戦で亡国の女帝をナンパしたら、めちゃくちゃ重たく愛されている勇者の俺

蒼山りと

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あかされる歌姫エリルの正体

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「エリル殿、あなたはなぜリファイア王女が魔鏡の件であなたを遣わしたのか、本当の理由を知りたいですか?」

シュベリートの声は静かだった。エリルの肩が小さく震える。俺は彼女の手をそっと握り直す。

「教えていただけますか」
エリルの声は、かすれていた。

「この帝国には、実は人物としての皇帝がいません」
シュベリートは窓の外を見つめながら言う。
「皇帝とは象徴であり抽象的な存在なのです。そういう政治形態です。しかし......」

彼は一度言葉を切り、俺たちの方を振り返った。

「帝国の高位にいる者たちは、領土の拡大に野心を燃やしています。より広い土地を支配することで、自分たちの地位がさらに高まると考えているのです」

エリルの手が、また冷たくなっていく。

「あなたがここに来たのは、私とリファイア王女にとって、重要な意味がありました」シュベリートの目が真剣な色を帯びる。「あなたがどちらがわの人間なのか、それを知りたかったのです」

「どちらがわ、とは?」
俺は思わず口を挟んでいた。

「簡単に言えば」
シュベリートは俺にも視線を向けながら続ける。
「騙し騙され、敵を出し抜くことをなりわいにしているのか。それとも友情と愛、親切心で動く人間なのか? その違いです」

その言葉に、エリルの体が強張るのを感じた。

「あなたの職業上、そのジャッジは我々には正確にできなかった。歌姫として、密偵として、あなたは常に仮面を被っている」

「密偵......?」

俺は思わず声を上げていた。エリルは......密偵? 王女付きの歌姫で、外交官だと思っていたのに。隣でエリルの体が小刻みに震えているのを感じる。

「アル......ごめんなさい」彼女の声が震えていた。

シュベリートは俺たちの様子を静かに見つめている。「だから私が直接見極めたかったのです」

エリルの手が俺の手を強く握り返す。その力の中に、彼女の動揺と......謝罪が伝わってきた。

「では、私は......」

シュベリートは答えなかった。代わりに、温かな微笑みを浮かべている。その表情が、エリルの本質を見抜いているかのようだった。

俺は混乱していた。エリルの正体、密偵という言葉の重み。でも、今この瞬間、彼女の冷たい手を握る俺の手に迷いはなかった。
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