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小さい秋、みぃつけた!
13:妹は尊い/side ゴーシェ
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「きゃ~!!たかい、たか~い!!ゴーちゃのおんぶは、すっごいたかいねぇ~!ね、びゅーんってして~」
「あっ、こら!アオちゃん、足をバタバタしたら落っこちちゃうから大人しくしてて、ね?」
学校でできる調査を済ませ、とりあえず本人と約束していたおんぶをして今は家へと向かっていた。
身体だけが小さくなったのかと思ったけれど、『アオは何歳だ?』とキラが質問したら『あーちゃは5歳らよ!』と元気一杯に答えていた……5歳!?
このキャッキャとご機嫌にはしゃいでいる『あーちゃ』ことアオちゃんは、あの焼き菓子を食べた直後からどんどん小さくなり、この5歳児のサイズでようやく止まった。
治癒をかけても当然効果はなくて、これ以上小さくなってしまったらどうしようかと、ものすごく慌てた。
教室で急に小さくなってしまったアオちゃん。間違いなく緊急事態の為、あの後すぐに上着を被せて教室を飛び出した。
別室にて小さなアオちゃんと向き合うと、『おにいたんたちは、だえれすか?』と聞かれて一瞬思考が飛んだけど、『アオちゃんのお兄ちゃんのゴーシェだよ』と言うと、へにゃっと笑って『なぁんだ!ゴーちゃは、あーちゃのおにいたんらったの?イケメンらね!』とすんなり受け入れた。キュン
今のアオちゃんはこの世界のことは何もわからない状態だと思うのに、どうしてまた僕をすんなり兄と受け入れたのだろうか?素直過ぎてちょっと心配……
ついでのようにキラにも名前を聞いたのに、なぜか彼のことは『チラチラトカゲ』と呼んでいた……トカゲ?断片的な記憶があるのかな
なにはなくても、すぐに菓子の持ち主に事情を聞きに……と立ち上がったものの、アオちゃんは『あそびた~い!!』と泣き出してしまった。
そのままぐずって僕にしがみついたまま離れないアオちゃんに、『あとでおんぶしてあげるから』と約束し、何とか宥めてキラに預けた。
「嘘ついたら針千本飲ます」って、ものすごい脅しじゃないかな?アオちゃんの世界は比較的平和って聞いていたのに、【指切り】って響きまで怖いよね。
そんなことを考えつつも、このお菓子を作ったという女子にこの菓子は何なのか話を聞きに走った。
とりあえずは穏便に、元に戻す方法や解毒が必要か、副作用は?などの情報が、今はすぐにでも欲しいから。でも、これがもしも好意と見せかけた悪意、組織的犯行なのであれば、絶対に容赦はしない
***
「ゴーシェ、遅ぇよ…マジで疲れたぁぁぁ。おい、めちゃくちゃ眉間にシワ寄ってるけど、どうだったんだよ?」
「あ、キラ。ごめん、考え事してた。アオちゃんの様子は?」
二人にはそのまま借りた空き教室で待機してもらっていた。待っている間の変化については特に変わりないけど、とにかくアオちゃんは元気一杯で、キラが考案した『騎竜でぴゅーん!』という遊びを偉く気に入った様子だとか。
キラはその遊びをひたすら何度も何度も…何度も…え、何回?小さなアオちゃんを脇に抱えながら部屋中を走る、というのをエンドレスにやらされていたとか。アオちゃん騎竜は怖いんじゃなかった?
初めはお馬さんごっこだったみたいなんだけど、手綱代わりに髪の毛を鷲掴みにされ、引っ張られて敵わなかった為、『騎竜ごっこにしてくれ!』と土下座して変更してもらったとか。
ちょっと後ろがむしられてるけど、言わないでおこう……
でも、わざわざ土下座をさせている辺り、アオちゃんは小さくなってもキラをイジる趣味は変わらないんだなと思った。キラも本気では嫌がっていないみたいだし、アオちゃんが楽しいならそれで良しだと思う。
キラも『なんでこんなクソガキに俺が土下座を……』と悔しそうにしていたけど、何だかんだ言いつつも面倒見がいい彼に、遊び相手を任せたのは正解だったのかもしれない。
「うん、聞いたところによると、なんか1個で1日だけ子供にできるっていう菓子らしい。僕に食べさせて子供時代を見てみたかったって言ってた。僕を子供にしても、全く面白味もないと思うのに」
「あー…お前の子供時代か……なるほど。うん、そうか」
何かを思い出しているのか、今度はキラの方が眉間にシワを寄せて腕を組み、『確かに、あれはもう一回見たいかもしれないな、いやでも…』などと意味のわからないことをブツブツ言っている
「特におかしなものは入っていないって。アジェアの妖術師が営む菓子屋で売り出されたものらしくて、その噂を聞いて取り寄せたみたい。取り急ぎ、今カーモスに残りの焼き菓子から成分なんかを調べて貰ってるよ」
買った女生徒は、渡す前に何度か自分でも念の為試していたみたいだけど、食べた数の日数経てば元に戻り、毒もない悪意もなかったって泣いて謝ってた。そもそも手作りだと嘘もついていたわけで、あまり信用できないし、簡単には許せそうにない
「とりあえず戻るのはいいけどよ、アオのやつ2個食べてたよな?ってことは2日間もこのままなんだろ?ルーティエになんて説明すんだよ……かなり、、、ヤバくないか?」
「そう、、、そこなんだよね……どうしよう」
僕も混乱しているせいか、2日間も小さいままのアオちゃんを見たルーティエ兄さんの反応が、どっちに転ぶのか全く予想できないでいた。
***
カーモスからはすぐに『菓子は普通の焼き菓子』と返答が来た。尤も、その菓子に掛けられた妖術によって引き起こされたらしいけど、それについても女生徒の話通りだとのことでようやく安堵することができた。
キラには僕の分とアオちゃんの荷物を家まで運んでもらい、すぐに帰ってもらった。肉体的にも精神的にも疲れている様子だったし、さすがに彼に責任はないから。
家に入れない方が後々 巻き込まれる心配もないだろうと思う。
彼もその辺はわかっているので、荷物を置くと逃げるように帰って行った。
5歳のアオちゃんは随分とわんぱくな女の子で、この世界では誰も知らない彼女の子供時代を垣間見た気がした。ちなみに当然服はサイズが合わないから、カーモスに言って僕の子供時代の服を着せている。学校ではブラウスに体育着の短パンでなんとか凌げた。
自分で着替えができる年齢で本当に良かった……下着はそのままだけど、胸当ては、、、残念ながら、床に脱いだ服と共に転がっている。とりあえずそのままにはしておけない為、タオルを掛けて見えないようにはしておいた。
着替え直後に悪ふざけで『みてみて~!ねこちゃんのみみ~』と言いながら被っていた時は、目を覆わずにはいられなかった。
衝撃過ぎて、思考がまた停止しかけた。どうやって止めたのか記憶がない
***
キラの遊びが功を奏したのか、アオちゃんが少し眠たくなってきたようだ。うん、このまま寝てもらおう。考え事をしたくても、アオちゃんがこんな状態なので全く集中できなくて困っている。
「ゴーちゃ、どこもいっちゃヤ。あーちゃのおててにぎってて?ぜったいらよ?」
「うん、どこにも行かないよ。ずっと、あーちゃのそばにいるからね」
別の意味で困った。どうしよう……可愛い。窓から叫びたいほど可愛すぎる!さっきから何回キュンとなっているんだ僕は。これってアオちゃんがよくなっている現象と同じじゃない?あーちゃこそ、絶対天使!尊い!!
言動も行動も見た目も全てが幼いせいか、本当に僕に小さな妹ができたような気持ちだ。胸ポケットに入れて歩きたい可愛さ……
「うん。じゃ、あーちゃネンネするから、おやすみのチューして?」
「うんうん、チューね――……はっ?チュー??」
え?チューってあの、、、いや、でもそれは……宜しくないと思うんだけど、あーちゃ。。。
「うりゅぅ~ゴーちゃは、あーちゃがキライらの?ずっといっしょっていったー!ウソつき~ふぇぇぇん!」
「あぁ、あ、あーちゃ、ごめん、ごめんね!あぁどうしよ、どうしよ……あ、じゃあ、うんする!するから目をつぶってくれる?」
幼いアオちゃんはピタリとすぐに泣き止んで、素直に目を閉じた。でも、疑っているみたいで片目だけ器用にちょっと薄目を開けていて……ヤバイ可愛い、そろそろ語彙力が死にかけてきた
「チュッ!はい、おしまい。これで寝れるよね?」
「あ、おでこ~!」
なんとか打開策として、かつて自分が両親からおでこにされていた、<おやすみのキス>をあーちゃにした。これは家族にする、普通の挨拶。そう、おやすみの挨拶だ。
それでも嬉しそうにおでこに小さな両手をあてているあーちゃは、間違いなく天使だと思う。
クスクス笑いながら、寝る気があるのかないのか……アオちゃんは小さい頃から目が離せないんだねぇ。
あーちゃが手をちょいちょいっと手招きしている、内緒話をしたいのかな?
僕は話を聞いてあげようと思い、彼女の方に顔を近づけた
「うん?内緒のお話かな?……うわぁ!!」
「ちゅっ!んふふ~♡あーちゃも、ゴーちゃにチューしちゃったぁ~」
えぇぇ!!不意打ちで頬にキスをしてくるなんて思わなくて、避け切れなかった!5歳のあーちゃは積極的というか、子供思考は本当に読めないよ……
今日の記憶が、戻った後にも残っていたらどうしよう!!いや、消えるって言ってたし大丈夫だ。それに挨拶。うん、これはおやすみの挨拶だよ!Not Kiss。全くの別物、うん。
「ゴーちゃ、これであーちゃとずっといっしょらね~。ふたりでチューしたら、ずーっといっしょにいれれるっておまじないなんらってー。たえセンセがいってたもーん!えへへ~」
うわぁぁぁぁぁぁぁ!!アオちゃん、いや、あーちゃ!気持ちは嬉しいけど、嬉しいけどもさ!!お気持ちだけで十分なので、絶対ルーティエ兄さんの前でそれ言わないで!!タエ先生、5歳児に何を教えているの!?
よし、寝かせよう!もう寝ちゃおう?
「う、うん、そのお話は二人だけの秘蜜にしようね?」
「ないしょ?ヒミツは はかばまで!ってやつらね。わかった!!」
「うん?う~ん、そうだね。とにかく言わないでね?ほら、あーちゃ眠たいんでしょ。もう寝んねしよう、ね?」
「むぅーーあーちゃ、もう、ねむくにゃいしっ!」
「あーもうっ!さっきは眠そうだったでしょ?呂律も回ってないじゃない」
コンコン―…
その時、ドアのノック音と同時にドアがバァァンと豪快に開く。え?まだ返事もしていないんだけど……もしかして
「アオイ、助けて下さい!!今日は完全にアオイ不足で死にそ……ゴーシェ?なぜアオイの部屋にゴーシェが?まさか!?アオイの体調でも悪いのですか?怪我ですか?それとも食べ過ぎですかっ?」
「あ、あ、違いますっ!あーちゃ…いえ、アオちゃんは元気いっぱいの女の子です、そうなんですけど……」
「ほわぁぁぁ!ゴーちゃ、このしとイケメンなおじたんらね~」
僕の陰になっていたあーちゃが、ベッドから起き上がり、ルーティエ兄さんの方へひょっこり顔を覗かせた。しかし、『おじたん』はマズイ……
「は……?ゴーちゃ??おじたん?あの、ゴーシェ…この、可愛いアオイをさらに小さく圧縮して、どの角度から見ようとも可愛くしか見えない天使のような愛らしい子供はまさか……まさか、ですよね?」
「はい……そのまさかのアオちゃんです。5歳になってしまった、、、あーちゃです」
「んんん??ねぇねぇ、イケメンのおじたんは、ゴーちゃのオモモラチ?」
「あ、あーちゃ……この人こそ、あーちゃとずーっと一緒にいてくれる人だよ」
「ふぇ……ゴーちゃは?ゴーちゃもいっしょらよね?」
「ゴーシェ、今すぐ説明!!」
「は、はいっ!!実は―……」
小さなアオちゃんからの『このおじさん誰?』にルーティエ兄さんは怒りとショックが入り混じった状態だった。それはそうだろう、命よりも大切なアオちゃんに、自分を認識してもらえないなんて……
僕は順を追って、事の顛末を話した。
***
「つまり、丸二日後には元のアオイに戻っていて、今の記憶は残らない。それは間違いないのですね?」
「はい……」
「全く、そんな赤の他人から受け取った、何が入っているかもわからないものを……。アオイが欲しがったからと簡単にあげてしまうとは迂闊にもほどがあります!しかし、アジェアの妖術師……でしたか?少々きな臭いですね」
「本当に……申し訳ありません」
「ゴーシェ、あなたももう成人しているのです。今回は責任を取るべく調査に参加しなさい。カーモスの指示を仰ぐと良いでしょう。私は明日、アオイと共にリイルーンの方へ行きます。あちらにも何か情報が来ているかもしれませんし、それでいいですね?」
「はい、それは当然です。ぜひ、やらせて下さい!でも確かに……こんな『寵命守』とも違いますし、里のファパイ様のように変身魔法の類でもないですよね?」
ファパイ様も性別、年齢など様々な姿に変身できると聞くけれど、あくまであれは自分で掛けている魔法だから違うだろう。
「ゴーシェ…ないとは思っておりますが、アオイにもしものことがあれば……身内とは言え、それ相応の覚悟をしておくのですよ?まぁ今回は大丈夫でしょうけど。ハァ、欲しがるアオイもアオイです……元に戻ったら再教育ですね」
ルーティエ兄さんの再教育が優しいものであればいいなと思っていると、そばで大人しくしていたあーちゃが、僕の服の袖にキュッとしがみ付いてきた
「このおじたんイケメンらけど、コワイ。ゴーちゃ、なんれごめんねしてるの?」
「アオイ……いえ、あーちゃがゴーシェのおやつを食べたから、代わりにゴーシェが怒られているのですよ」
「ふぇ!?うりゅぅ~…あぅ、あーちゃの、あーちゃのせいらの?じゃ、ゴーちゃは、ゴーちゃはワルくないれしょ?あーちゃがワルいの、えぐぅっ!らから、ゴーちゃおこっちゃヤラ~うえぇぇぇぇん」
「あ、あぁ!あーちゃ、違います、怒っていません!もう怒っておりませんよ、ね?だから泣かないで下さい」
「あーちゃ……」
そのすぐに人を庇っちゃうのは、子供の頃からなんだね。僕は妹に庇われてばかりで情けないなぁ……優しいばかりでは駄目だ。これからはもっと強くならなくちゃ
「あーちゃ、大丈夫だからもう泣かないで。あーちゃに良い事教えてあげる。そのカッコいいお兄さんは、僕よりももの凄く強くて、僕よりもあーちゃを大大大好きで、ずっとずーっとそばにいてくれるから、おまじないを後でしてあげて欲しいな。僕もあーちゃが望んでいてくれる限り、あーちゃと一緒にいるから」
「わかったぁ。ゴーちゃは、あーちゃが『ゴーちゃとずーっといっしょがいい』っていったらいるんれしょ?らったらいいよ~」
「はい、良い子。じゃあ、お兄ちゃんはちょっとお出掛けしてくるから、あーちゃはこのお兄さんと一緒にいるんだよ?」
「いいよぉ。おじたんはイケメンらもん。ねぇ、おにゃまえは?」
「私ですか?おじさんではなく、お兄さん、ですよ。私はルーティエと言います。あーちゃには……いえ、好きなように呼んで下さい」
「んーっと……ルーチェだね!ルーチェはあーちゃとずーっといっしょにいてくれる?」
「ええ、もちろんです。あーちゃも私とずっと一緒にいてくれますか?」
「うん、いいよ。ルーチェはカッコいいもん!じゃあ、おまじないのチューする?」
「おや?あーちゃは小さい頃の方が積極的なのですね。ふふ、ずっと一緒にいられるおまじないがあるのでしたら、ぜひお願いしたいです」
僕は最後にあーちゃの頭をひと撫でし、ルーティエ兄さんへそのまま託した。
その足ですぐにカーモスにも調査の件について説明した。明日、アオちゃんがリイルーンへ行っている間に、僕もアジェアまで行って調べなければ……
必要なら僕も本気でアジトごと殲滅する覚悟で向かわなくちゃ……
「あーちゃ、今度こそお兄ちゃん頑張ってくるからね!」
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