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第37話 大精霊
しおりを挟む師匠達が解呪薬を泉に注ぎ始めるが、絶対失敗すると踏んでいた俺とエイシスは、逃げようと考えていた。
だが、泉からまばゆい光が立ち昇り、眼を開けていることができない。
「わーーっ!眩しい!」
《何が起きたの?天変地異の前触れ?》
耳たぶを噛んでいたペロも驚いて、噛むのを止めた。
眼を瞑っている時、師匠から「ああああ~~」悲鳴のような声が聞こえてきており、ララ達家族も「うわーー!」っと叫んでいる。
「ヤバい!間違って邪神でも復活させてしまったか?」
眼を閉じながら、そう思って一歩づつその場から後退りしだす俺。
いつでも逃げられるように、エイシスに語りかけた。
(エイシス、どんな状況?眩しくて眼を開けても視界が真っ白になっていてわからないんだ。逃げる?逃げた方がいい?逃げるぞ!)
『マスター、落ち着いて下さい。一時的に瞳孔が開いて真っ白に見えてるだけです。眼にヒールをかけることをお勧めします』
【ヒール】
すると、視界が戻ってきた。
《私にもそれやって!》
そう言われてペロにもヒールをかけた。
戻った視界で、泉を見てみると、先ほどではないが、泉全体が輝いている。
師匠達も眼をやられていたみたいなので、こっそりエリア・ヒールをかけて回復させた。
みんなも、眼が見えるようになった様子で、泉に起きている現象を声も出さずに見つめている。
そして、泉の光は次第に収束し始め、人の形へと変化し始めた。
「ああああーー」
師匠は、その光景を見て思わず声を上げた。
やがて光が治まり、泉の水面に佇んでいるのは、腰まである水色の髪に女神を想わせる整った顔立ちの女性だった。
「ウンディーネ様……」
師匠が涙を流してそう呟く。
だが、泣いているのは師匠だけではなかった。ウンディーネ本人も泣いていたのだ。
「これって解呪できたってこと?」
『そうとしか考えられませんね。賢者の石の叡智たる私でさえ、成功確率は低かったのでこれは予想外でした。まあ、結果が良ければ何も問題ありません』
「確かに、ほんと助かったよ」
しかし、解呪されたウンディーネはどこか様子がおかしい。溢れる涙を何度も手で拭って周りを見渡してキョロキョロしている。
(長い年月、邪神の呪いを受けてたんだ。そうとう辛かったんだろうな)
『そうでしょうね。解放された喜びとで感情が入り乱れているのでしょう』
俺とエイシスは、ウンディーネの心情をそう察していた。
そして、ウンディーネは、視線をこちらに向けた。
そして、師匠達が居るのにも拘らず脇目も振らず俺のいる場所に駆け寄って来たのだ。
(え、なんで俺のところに?)
『まさか、賢者の石を内包しているマスターのことを狙って?マスター戦闘準備を!』
(賢者の石のことがバレたのか?)
『そうとしか考えられません。大精霊たるウンディーネが賢者の石の力を手にした場合、神をも凌ぐ力を得ます』
(しかし、師匠達の前でウンディーネを攻撃するのはマズい。防御だ)
ウンディーネの行動が予想よりも早く、俺に手が届く距離まで迫った。
(間に合わない!『間に合いません』)
「ペロちゃーーん!!」
突如、ウンディーネは声をあげた。
それは、誰もが予想していなかった名前を叫んだのだ。
「『は!?』」
「ペロちゃんだあ~~辛かったよねー。正太も早苗も居なくなっちゃって、ひとりでひもじい生活してたんだねーー」
「『は!?』」
「もう大丈夫だからね。みんなが忘れちゃても私がいるし、もうひとりにはさせないわ。あとでお腹いっぱい美味しいもの食べようね」
ウンディーネは、そう言いながら俺の肩に乗っていたペロを抱きかかえ愛しそうにその胸に包みこんだ。
《な、何すんのよ!あんた誰よ!》
その時、ペロの叫び声が脳内に響いたのだった。
◇
あれから、大精霊ウンディーネの復活を祝ってエルフの村では飲めや歌えの大宴会が開かれた。
ここぞとばかり、ストレージに入れてある地竜やロック・タートルなど市場に出せば大騒ぎになる魔獣を提出した。
今は、目の前で美味しそうなお肉となっている。
主役は、勿論ウンディーネ、その脇にはどういう訳か俺が座っている。というか、ウンディーネがペロに執着するのでペロが怖がって俺から離れないからだ。
ペロのストーカーと化したウンディーネは、現在の容姿が顕現した時と少し……いや、大分異なっている。
長い間、邪神の呪いに抗い精霊力を行使し続けたウンディーネは、今は幼稚園児並みに小さくなっている。
それでも、長年師匠が解呪薬を泉に流し続けてくれたおかげで、精霊力が尽きることなく精霊としとの存在を保っていられたのだそうだ。
師匠の努力は無駄では無かったのだ。
因みに力を解放すれば、顕現した時の大人バージョンに3分間だけ戻る事ができるらしい。
「ウル◯ラマンかな?」
それと、ウンディーネがペロのことを知っていたのは、解呪薬に使ったペロの涙が原因らしい。
眠りながら邪神の呪いと戦っていたウンディーネは、解呪薬が泉に注がれた時にペロの記憶が一緒に流れ混んできたらしい。
その記憶があまりにも不憫で可哀そうなので飛び起きてしまったようだ。
邪神の呪いを吹き飛ばす程のペロの過去って、どれだけ悲惨なの?
《何、こっち見てんのよ!》
「わかってるよ。強がらないと生きてこれなかったんだよね。ヨシヨシ」
ウンディーネは、そう言って、俺の膝に乗っているペロを優しく撫でている。
(これ以上、ペロの過去を触れないでほしい。いたたまれないよ)
『みんなの前でペロの過去を暴露したマスターがそれを言いますか?』
エイシスにそう言われて反論ができない。
(す、すみません……)
『謝るのは私ではなくペロにでは?』
《さっきから何ごちゃごちゃ言ってんのよ。それより、こいつ何とかしてよー》
「『それは無理』」
ストーカー幼稚園児だが、神格を得た大精霊のウンディーネだ。
賢者の石のことがバレたらマズい。
「決めた!私を助けてくれたペロちゃんが私より格が低いのは納得できない!私の力を少し分けてあげる」
そう勝手に宣言したウンディーネの手からペロに何かが流れ込んだ。
それはペロの召喚主である俺にも派生的に流れ込んできた。
『これは、神力ですね』
神力を流し込まれたペロは、ひと回り大きくなっていた。
それでも体長30センチから50センチぐらいになっただけだけど……
………
ペロ(幼体)水の大精霊
レベル 16
能力
水操作
念話
幸福度増大
天候操作(雨降)NEW
念力 NEW
変化 NEW
霊体化 NEW
御門賢一郎の召喚精霊
………
「凄い、ペロが大精霊になってる」
『神力を流されたようですし、当然の結果でしょう。爬虫類から脱皮してやっと精霊らしくなりましたね』
だが、当の本人は……
《このお肉美味しいわねー。何のお肉かしら》
通常運転だった。
◆◆
「大変だーー!」
「魔王だ!魔王が復活したんだ」
「いいや、あれは300年前滅んだ邪神が復活したんだ」
聖王国ミストラルの王都では、大森林から立ち昇る光の柱を見て、王都民達は、騒いでいた。
その頃、王城でもこの光景を見ていたものがいた。
テラスでティータイムを嗜んでいたアミリヤ・マクスウェル第一王女だ。
「アミリヤ様、あれはなんなのでしょうか?」
そう尋ねたのは、侍女のネリア・ラクスバード。幼い頃から第一王女に付き従う伯爵家の令嬢だ。
「私にもわからん。だが悪い気はしない」
アミリヤ王女が、5歳の時に授かった祝福(ギフト)は、剣姫。
一月前に、王立騎士学校を主席で卒業したばかりで、今は自ら作った白鳳騎士団の団長を務めている。
その時、近衛騎士団の副隊長であるナザレス・ラクスバードがその場に訪れた。
「あら、お兄様、アミリヤ様にご用事ですか?」
ナザレスは、侍女ネリアの実の兄である。
「ネリアは、息災か?」
「はい、元気にしています。お兄様、私に用事なのですか?」
「あ、違う。すみません、アミリア様。陛下がお呼びです。執務室まで来てほしいとおっしゃってました」
「ははは、相変わらず妹と思いのナザレスだな。これではネリアが嫁に行く時は大変だな」
「アミリヤ様、ご勘弁を。それとネリアは私の目の黒いうちは嫁には行かせません」
「ははは、それではネリアが困ってしまうだろう。ネリアも年頃だ。好きな男性一人や二人はいるだろうしな、ははは」
「アミリヤ様、私にそんなお方がいないとわかっていてそう発言されましたね?
そう言えばアミリヤ様は、帝国第3王子の婚約の打診を断っていましたよね?
学園時代では、皇国の皇子からも言い寄られて、決闘騒ぎを起こして相手をボコボコにしたのをお忘れなく。
私が陛下や相手国の間にたち何とかなりましたが、下手をすれば戦争にまで発展しかねない状況だったのですよ」
「あ、いや、その……そうだ。父上が呼んでいるのだな。わかった。すぐ向かう」
自らの失言でネリアを怒らせてしまったようだ。
(ネリアが怒ると怖いんだよ)
二度と同じ過ちはしないと心に誓い、足早に陛下の下に向かうのであった。
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