41 / 125
第41話 陰を極めし者
しおりを挟む来週、中間試験ということで短縮授業になり午前中に学校は終わるようだ。
しばらく異世界にいたので、その辺のところがどうも曖昧になっている。
部活も休みなので午前の授業が終わるとみんな家に帰って行く。
クラスの陽キャ達は遊びに行く者もいるようだが、大半は約束を断ってさっさと鞄片手に教室を出て行った。
「でも、チーちゃんからお弁当をもらったよな、助かるけどどうして?」
疑問に思ってスマホを見ると、屋上のお茶会のメンバーから連絡がきていた。
……
お昼ご飯は、学校裏の公園で食べよう
……
学校裏の公園って、どこ?
スマホの地図で確認すると、少し離れているけど公園がある。
学校の裏口から出れば直ぐ着くみたいだ。
樫村さんはもう教室を出ていないし、その公園に向かうことにした。
トコトコ歩いて学校の裏門をでる。
下駄箱から少し遠いので、裏門を使う生徒は稀だ。
「こっちは、あまり人に会わないし、これからは裏門を利用しよう」
『陰気ですね』
「いいんだよ。俺は日陰者で。誰にも注目されずのんびり生活したいんだ」
「君、ちょっといいかい?今の言葉はとても感動的だった」
どうやら、エイシスとの会話が聞こえたらしい。
まあ、相手は独り言だと思ってるんだろうけど。
声をかけた人物は、少しというか、かなりぽっちゃりとした男子だ。
「何かようですか?」
「貴殿の人生観は素晴らしい。独り言をしてたのも拙者としては共感できる。
拙者もたまに独り言を言ってしまうクセがあるし、何より陰の者を極めた拙者が貴殿を見てビビっときたんだ。拙者の同類だとね」
何か変なやつに声をかけられてしまった。
陰の者を極めたと言ってるけど、極めた人物は知らない他人に声をかけられないと思うけど?
でも、極め過ぎると逆にこうなるのか?
『マスターがそうですものね』
(悔しいが言い返せない)
「拙者は1年1組の深海暗光《しんかいくらみつ》と申す。貴殿とは是非友人として縁を結びたい」
『マスターやりましたね。友達2人目ゲットです。水圧から解放されたような男子ですが』
(後の言葉失礼だろ!容姿で人をディスっちゃダメだ。俺もそう思うけど)
『身も蓋もありませんね』
「深海君だっけ、俺は4組の御門賢一郎。いきなりでちょっと戸惑ってるけど、別に構わないよ」
「それなら一緒に友誼を深めながら帰ろうか?」
「あ、これから従兄妹とその公園で待ち合わせしてるんだ。お弁当を一緒に食べようって」
「それなら拙者もよいでござるか?拙者も弁当を持参しているゆえ」
(これって事前にチーちゃん達に連絡入れといた方が良いのか?)
『そういう細かい気遣いは良いと思いますよ』
「ちょっと待っててくれる。今従兄妹に連絡入れておくから」
「その方が良いでござるな。いきなり拙者が現れたらいとこ殿が困るでしょうし」
チーちゃんに連絡入れたら、直ぐに返事が来て構わない、と書いてあった。
学校の購買部でジュース買ってから来るとも書いてある。
みんなを待っている間、深海君と話をしてわかったことだが、見た目通りオタク気質のある人だった。
ネット小説も良く読んでるようで、あらゆる分野の物を読破してるようだ。
昔から深海君がハマっているのはSFもので、ロボットが出てきて活躍するものが好みらしい。所謂、ロボットオタクである。
「……そうでありましたか、御門殿は、最近読み出したビギナーなのですね」
公園に着いて、割と目立つ場所のベンチに腰掛け、話をしてる。
みんなが来ても直ぐにわかるだろうという配慮からだ。
しばらくオタク談議をしていると声がかかった。
「居た!ケンくん、お待たせー」
みーちゃんの声が響く。
「ケン君の友達って深海君だったんだ。うん、うん、いいと思う」
何故かお姉さん目線で俺達をみるチーちゃん。
「御門君、あっちにお弁当食べる良い場所があるらしいの。私も教えてもらったんだけどねー」
樫村さんが、そう言って手でその方向を示した。
「な、な、な、な、な………何と御門殿は陽の者でしたか?ちょっとこちらへ」
深海君に連れられて、皆んなの前から離れると、
「御門殿の従兄妹というのは女子だったのですね。知ってますか?柚木千穂殿と国崎美鈴殿はこの学園では美少女として常に上位にランクインしているのですよ。もう一人の方は存じあげませんが、拙者は一目見て隠れ美少女と見抜きました。陰の者である拙者とは対極にある存在なのですよ」
そうか、チーちゃんもみーちゃんも凄いんだな。
「深海君が言ってる意味はわかるけど、チーちゃん、柚木千穂が俺の従兄妹なんだ。元々、俺は都内に住んでて夏休みの度にこっちに来てちーちゃんやみーちゃん、国崎美鈴ちゃんと一緒に遊んでたのでそういう感覚がないんだ」
「そうでござったか、いとこと幼馴染というわけでありますね」
二人でごちょごちょそんな話をしていたら、「ケンくんも深海くんもお弁当たべよー。私お腹すいちゃったよ」と、みーちゃんが叫んでる。
「ごめん、いま行くよ」
「拙者が柚木殿と国崎殿と一緒にお弁当を……」
そう言って深海君はオーバーヒートした。
◇
「ただいまー」
「お兄ちゃん、おかえり。どう?友達できた?」
拙者は、深海暗光。私立光明院学園の高校1年、中学生の頃からこの学園に通っている。
太った見た目と名前からアンコウと揶揄われており、未だ友人と呼ばれる存在に出会えなかった。
いや、拙者に自信と勇気がなくて友達をつくれなかった臆病者なのである。
だが、今年から妹の愛佳《あいか》が中学受験をして学園の中等部に通うこととなり、こう言われたのであった。
「私も頑張って友達たくさん作るから、お兄ちゃんも頑張って友達作ろうね。きっとお兄ちゃんの良さをわかってくれる人が絶対いるから諦めちゃダメだよ」
妹は、拙者のように太ってはおらず、近所では美少女と言われている。
だから、小学生の時も友達はたくさんいたし、学園に入っても人気者になるのは目に見えている。
だが、兄として妹にそう言われては頑張って友達を作るしかない。
高校1年の間は中等部から迫り上がってきた人達とクラスメイトとなるので、どう考えても拙者と友人になろうという人はいないだろうし難しいと思うが、高校からの進学組なら期待できるかもしれない。
そして、時は経ち諦め始めていた頃、いつものように裏門から帰ろうとした時に独り言を言ってる生徒を見かけた。
拙者の知らない顔だったので高校からの進学組だろうと思い、勇気を振り絞って声をかけたのがきっかけだった。
それが御門賢一郎殿。
雰囲気的に彼も拙者と同じ陰の者だと思ったのだが、彼は陰と陽を兼ね備えていたのだった。
「お兄ちゃん、無理しなくていいからね。愛佳が余計なことを言っちゃったからプレッシャーだったよね」
「そんなことはないぞ。見ろ!妹よ」
そう言ってスマホの画面を妹に見せた。
「何これ?[屋上のお茶会]って。どっかの貴族様って感じのグループ名だけど、どうしたの?」
「そのメンバーに拙者はなったのだ」
「まさか、変な宗教とかじゃないでしょうね?」
「違うぞ、拙者にも友達ができたのだ。今日公園でみんなとお弁当を食べたりしたんだぞ」
「本当に?嘘ついてない?」
「嘘などついてないぞ。それに明日そのメンバーと勉強会をすることになった。しかも泊まりがけでだ。妹よ、お兄ちゃんもやればできるのだ」
「そうなんだ(絶対怪しい……お兄ちゃん、騙されてるんじゃ……)」
「早速、明日の用意をしなければ」
「待って、愛佳も一緒に行く。愛佳もテスト勉強しないといけないし」
「愛佳も一緒にでござるか?一応、メンバーに聞いてみないと直ぐには返事ができないでござる」
「ダメでも一緒に行くからね!」
そう言って妹は、階段を駆け上がって行った。
「そういえば中等部も来週中間試験があったでござるな」
拙者は、直ぐにメンバーに連絡を入れたのだった。
139
あなたにおすすめの小説
七億円当たったので異世界買ってみた!
コンビニ
ファンタジー
三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。
ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。
「異世界を買ってみないか?」
そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。
でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。
一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。
異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。
チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。
駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ
壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。
幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。
「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」
泣きじゃくる彼女に、彼は言った。
「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」
「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」
そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。
※2019年10月、完結しました。
※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。
ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜
ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが……
この世界の文明レベル、低すぎじゃない!?
私はそんなに凄い人じゃないんですけど!
スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる