現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

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第41話 陰を極めし者

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来週、中間試験ということで短縮授業になり午前中に学校は終わるようだ。

しばらく異世界にいたので、その辺のところがどうも曖昧になっている。

部活も休みなので午前の授業が終わるとみんな家に帰って行く。
クラスの陽キャ達は遊びに行く者もいるようだが、大半は約束を断ってさっさと鞄片手に教室を出て行った。

「でも、チーちゃんからお弁当をもらったよな、助かるけどどうして?」

疑問に思ってスマホを見ると、屋上のお茶会のメンバーから連絡がきていた。
……
お昼ご飯は、学校裏の公園で食べよう
……

学校裏の公園って、どこ?

スマホの地図で確認すると、少し離れているけど公園がある。
学校の裏口から出れば直ぐ着くみたいだ。

樫村さんはもう教室を出ていないし、その公園に向かうことにした。

トコトコ歩いて学校の裏門をでる。
下駄箱から少し遠いので、裏門を使う生徒は稀だ。

「こっちは、あまり人に会わないし、これからは裏門を利用しよう」

『陰気ですね』

「いいんだよ。俺は日陰者で。誰にも注目されずのんびり生活したいんだ」

「君、ちょっといいかい?今の言葉はとても感動的だった」

どうやら、エイシスとの会話が聞こえたらしい。
まあ、相手は独り言だと思ってるんだろうけど。

声をかけた人物は、少しというか、かなりぽっちゃりとした男子だ。

「何かようですか?」

「貴殿の人生観は素晴らしい。独り言をしてたのも拙者としては共感できる。
拙者もたまに独り言を言ってしまうクセがあるし、何より陰の者を極めた拙者が貴殿を見てビビっときたんだ。拙者の同類だとね」

何か変なやつに声をかけられてしまった。
陰の者を極めたと言ってるけど、極めた人物は知らない他人に声をかけられないと思うけど?
でも、極め過ぎると逆にこうなるのか?

『マスターがそうですものね』

(悔しいが言い返せない)

「拙者は1年1組の深海暗光《しんかいくらみつ》と申す。貴殿とは是非友人として縁を結びたい」

『マスターやりましたね。友達2人目ゲットです。水圧から解放されたような男子ですが』

(後の言葉失礼だろ!容姿で人をディスっちゃダメだ。俺もそう思うけど)

『身も蓋もありませんね』

「深海君だっけ、俺は4組の御門賢一郎。いきなりでちょっと戸惑ってるけど、別に構わないよ」

「それなら一緒に友誼を深めながら帰ろうか?」

「あ、これから従兄妹とその公園で待ち合わせしてるんだ。お弁当を一緒に食べようって」

「それなら拙者もよいでござるか?拙者も弁当を持参しているゆえ」

(これって事前にチーちゃん達に連絡入れといた方が良いのか?)

『そういう細かい気遣いは良いと思いますよ』

「ちょっと待っててくれる。今従兄妹に連絡入れておくから」

「その方が良いでござるな。いきなり拙者が現れたらいとこ殿が困るでしょうし」

チーちゃんに連絡入れたら、直ぐに返事が来て構わない、と書いてあった。

学校の購買部でジュース買ってから来るとも書いてある。

みんなを待っている間、深海君と話をしてわかったことだが、見た目通りオタク気質のある人だった。

ネット小説も良く読んでるようで、あらゆる分野の物を読破してるようだ。
昔から深海君がハマっているのはSFもので、ロボットが出てきて活躍するものが好みらしい。所謂、ロボットオタクである。

「……そうでありましたか、御門殿は、最近読み出したビギナーなのですね」

公園に着いて、割と目立つ場所のベンチに腰掛け、話をしてる。
みんなが来ても直ぐにわかるだろうという配慮からだ。
しばらくオタク談議をしていると声がかかった。

「居た!ケンくん、お待たせー」

みーちゃんの声が響く。

「ケン君の友達って深海君だったんだ。うん、うん、いいと思う」

何故かお姉さん目線で俺達をみるチーちゃん。

「御門君、あっちにお弁当食べる良い場所があるらしいの。私も教えてもらったんだけどねー」

樫村さんが、そう言って手でその方向を示した。

「な、な、な、な、な………何と御門殿は陽の者でしたか?ちょっとこちらへ」

深海君に連れられて、皆んなの前から離れると、

「御門殿の従兄妹というのは女子だったのですね。知ってますか?柚木千穂殿と国崎美鈴殿はこの学園では美少女として常に上位にランクインしているのですよ。もう一人の方は存じあげませんが、拙者は一目見て隠れ美少女と見抜きました。陰の者である拙者とは対極にある存在なのですよ」

そうか、チーちゃんもみーちゃんも凄いんだな。

「深海君が言ってる意味はわかるけど、チーちゃん、柚木千穂が俺の従兄妹なんだ。元々、俺は都内に住んでて夏休みの度にこっちに来てちーちゃんやみーちゃん、国崎美鈴ちゃんと一緒に遊んでたのでそういう感覚がないんだ」

「そうでござったか、いとこと幼馴染というわけでありますね」

二人でごちょごちょそんな話をしていたら、「ケンくんも深海くんもお弁当たべよー。私お腹すいちゃったよ」と、みーちゃんが叫んでる。

「ごめん、いま行くよ」

「拙者が柚木殿と国崎殿と一緒にお弁当を……」

そう言って深海君はオーバーヒートした。





「ただいまー」

「お兄ちゃん、おかえり。どう?友達できた?」

拙者は、深海暗光。私立光明院学園の高校1年、中学生の頃からこの学園に通っている。

太った見た目と名前からアンコウと揶揄われており、未だ友人と呼ばれる存在に出会えなかった。

いや、拙者に自信と勇気がなくて友達をつくれなかった臆病者なのである。

だが、今年から妹の愛佳《あいか》が中学受験をして学園の中等部に通うこととなり、こう言われたのであった。

「私も頑張って友達たくさん作るから、お兄ちゃんも頑張って友達作ろうね。きっとお兄ちゃんの良さをわかってくれる人が絶対いるから諦めちゃダメだよ」

妹は、拙者のように太ってはおらず、近所では美少女と言われている。

だから、小学生の時も友達はたくさんいたし、学園に入っても人気者になるのは目に見えている。

だが、兄として妹にそう言われては頑張って友達を作るしかない。

高校1年の間は中等部から迫り上がってきた人達とクラスメイトとなるので、どう考えても拙者と友人になろうという人はいないだろうし難しいと思うが、高校からの進学組なら期待できるかもしれない。

そして、時は経ち諦め始めていた頃、いつものように裏門から帰ろうとした時に独り言を言ってる生徒を見かけた。

拙者の知らない顔だったので高校からの進学組だろうと思い、勇気を振り絞って声をかけたのがきっかけだった。

それが御門賢一郎殿。

雰囲気的に彼も拙者と同じ陰の者だと思ったのだが、彼は陰と陽を兼ね備えていたのだった。

「お兄ちゃん、無理しなくていいからね。愛佳が余計なことを言っちゃったからプレッシャーだったよね」

「そんなことはないぞ。見ろ!妹よ」

そう言ってスマホの画面を妹に見せた。

「何これ?[屋上のお茶会]って。どっかの貴族様って感じのグループ名だけど、どうしたの?」

「そのメンバーに拙者はなったのだ」

「まさか、変な宗教とかじゃないでしょうね?」

「違うぞ、拙者にも友達ができたのだ。今日公園でみんなとお弁当を食べたりしたんだぞ」

「本当に?嘘ついてない?」

「嘘などついてないぞ。それに明日そのメンバーと勉強会をすることになった。しかも泊まりがけでだ。妹よ、お兄ちゃんもやればできるのだ」

「そうなんだ(絶対怪しい……お兄ちゃん、騙されてるんじゃ……)」

「早速、明日の用意をしなければ」

「待って、愛佳も一緒に行く。愛佳もテスト勉強しないといけないし」

「愛佳も一緒にでござるか?一応、メンバーに聞いてみないと直ぐには返事ができないでござる」

「ダメでも一緒に行くからね!」

そう言って妹は、階段を駆け上がって行った。

「そういえば中等部も来週中間試験があったでござるな」

拙者は、直ぐにメンバーに連絡を入れたのだった。



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