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第40話 再び学校へ
しおりを挟むタトゥーの入った金髪の兄ちゃんこと瀬戸海航平さんは、病気ガチな母親と妹と弟の4人家族だという。
父親は酒飲みの漁師だったが漁の仕事中に天候が崩れ、雷が船に落ちて船ごと海に沈んでしまったらしい。
母親の生まれが都内のため、海辺の街からこっちに引っ越してきたそうだ。
両親や親戚縁者から初めは良くしてくれたようなのだが、今はすっかり音沙汰なく援助らしいものはないという。
それで、今は公団の団地に住んでいるようだ。
会ったばかりの人とこんな深い話をしたのは、俺の髪が何故白いのか聞かれたからだ。
雷に打たれて白くなったことを伝えたら父親を雷で失った航平さんに「おーお前も雷か」と、気に入られてしまったからだ。
それで、「ケンとは今からマブダチな。俺のことは航平と呼べ」と、急に距離を詰められたのだった。
(ねえ、イケイケの陽キャの人ってこういう感じなの?)
『私に聞くのですか?』
確かにエイシスは人ではない。
それでも問いかけるのは、他に聞ける人が誰もいないからだ。
『マスターが残念なのは、今更でしたね』
距離の詰め方に戸惑っていると、土建会社の社長がやってきた。
待合室にいた俺と航平さんに謝罪したあと見舞金だと言って茶封筒を渡されたのだった。
後でこっそり見てみると茶封筒には5万円が入っていた。
◇
航平さんと病院でお互いの連絡先のIDを交換し、それぞれタクシーで帰路に着いた。
勿論、タクシー代は会社持ちだ。
ここ、重要!
俺達のような日雇いバイトは、今回の件があったため今後の仕事は未定となってしまった。それを含めての5万円らしい。
「となると、多いのか少ないのかわからなくてなってきたな」
真夜中のため家の周辺は真っ暗だ。
街頭があるが、都会ほど明るくない。
家に着いて、落ち着いてからタクシー代が◯万円単位になっていたのをメーターで確認しておいた。
行きは最寄り駅に集まって車で移動したから良かったが、もしタクシー代が会社持ちでは無かったら、もらった茶封筒の中身の数枚を払わなくてはならなかった。
『マスター、気にするとこはそこですか?』
「大事なことだよ。それに出来ればあの親に頼りたくないんだよ。あんな両親から早く独立したいんだ。経済面を含めて」
『それは可能でしょうけど、いつになることやら』
「早急に何とかしたい。でも、もう寝る、限界だ」
今は、午前3時ちょっと過ぎ。
異世界から帰って来てからストレージの中身や師匠からもらった魔法鞄の中身を確認する暇がなかった。
『5時に起こしますね。ランニングをしないといけませんので』
「……ランニング……するの?グーグー」
『寝てしまったようですね。さて、私は事故現場を撮影していた野次馬達の動画を削除しましょうか。マスターがまだ注目されるわけにはいきませんしね。それに黒い不審な車についても調べておきましょうか』
◇
「ケン君、ほら、もうすぐ学校だよ」
今朝は、いとこのチーちゃんと一緒に学校に向かってる。
なぜかというと、強制的な朝の鍛錬を終えて、シャワーを浴び着替えて家を出たらチーちゃんがお弁当を持って玄関先で待ってたからだ。
『アオハルですね』
エイシスはそういうが、男女とはいえ従兄妹同士なのでどうしたらそんな発想が出てくるのか分からない。
それより、眠くて仕方がない。
ボーっとしてたら、チーちゃんにさっきのように言われたのだ。
「ケン君、バイトで夜遅くまで起きてたんでしょ。無理しちゃダメだよ」
確かに、夜遅くまで起きてました。
ガス爆発に巻き込まれてね。
『ブスバスガイドバスガス爆発って言ったらどうですか?』
(早口言葉言ってどうしろと?それにブスって言葉が入っている時点で女の子に言ったらマズいだろう!)
エイシスは今日も絶好調のようだ。
「そういえば、昨夜大きな地震があったでしょう?それで都内でガス爆発があったんだって。でも、怪我人は出たけど死んだ人はいなかったらしいよ」
その話題だすの?
知ってるよ。現場にいたから。
「そうなんだ。怖いね」
「死人が出なかったのは、白い髪の男子が怪我人を一生懸命移動させてたらしいからなの。SNSで話題になってるけど、アップした動画が消えちゃったらしいのよ。そういうことはたまにあるから問題ないんだけど、不思議なのは、スマホで撮影した動画全てなんだって。だから、その子は妖怪だったんじゃないかって話が盛り上がってて、今その妖怪探しがいま話題になってるんだってさ」
「へーそんなことになってるんだあ」
ニュースやスマホを今日は見てないので、わからないが妖怪はないだろう!
でも、なんで消えたんだ?
それより、あの場面を撮られてたの?
「きっとその妖怪さんは、良い妖怪さんだね。それに、近くにいると思うんだ。ね、ケン君」
『これは8割方バレてますねー』
(なんでそんなことになってんのさ?ただバイトしてただけなのに……)
「そうかなぁ、近くにはいないと思うよ。都内の出来事だし」
「ふ~~ん、そうか。そうだよね、都内のことだしね。それと、近所のトミコお婆さんいるでしょ。いつも、朝早く目が覚めるんで、まだ暗い内から犬の散歩するんだって。今朝うちに野菜持ってきてくれたんだけど、朝方ケン君の家の前に都内ナンバーのタクシーが止まってたって言ってたけど、偶然だよね?」
田舎怖っ!
なんであんな時間に犬の散歩してんの?
それに、噂が広がり方がSNSより早いんじゃ……
「そ、そうなんだ。その時間寝てたから気づかなかったよ」
『マスター、別に隠す必要はないのでは?魔法を使ったのがバレたわけでもありませんし』
(一度否定したんだ。今更俺ですとは言えないよ)
『浅はかですね。私は知りませんからね』
エイシスはそう言って沈黙してしまった。
「ケン君がそう言うならそうなんだね。わかった、早く行こう」
何とかちーちゃんのジワジワ攻めてくる追及を躱し、学校に行くのだった。
『あの娘、意外とやりますね。マスターも形無しでしたし。今は無理でしょうが仲間に引き入れた方が良いかもしれません。一考してみますか』
エイシスの独り言は、誰にも聞かれずにそのまま霧散していくのであった。
◇
学校に着いて、直ぐに保健室に直行する。
別に具合が悪いとかではなく、前に先生から借りた一万円を返しに来ただけだ。
「失礼します」
保健室に入るが、先生は見当たらない。
代わりに、見たことのある女子が右足のサポーターの下に貼ってあった湿布薬を交換していた。
「あなた、何見てんの!」
スカートから伸びる日焼けした引き締まってる足を見てたわけじゃない、決して。
「何も見てませんよ。先生に用事があって来ただけです」
「ふーん、そうなんだ。先生なら9時にならないと来ないわよ」
「わかりました。1時間目の休み時間にまた来ます」
そう言って部屋を出て行こうとしたら、「ちょっと待って!」と、呼び止められてしまった。
「何かようですか?」
「その棚の中にある湿布薬を取ってくれるかな。新しいの卸して交換しようと思ったら、吸着面が合わさっちゃって使い物にならなくなっちゃったんだ」
確かに手にはくちゃくちゃになっている湿布薬が握られていた。
「いいですけど、どの棚ですか?」
棚と言っても壁際に隙間なくガラス棚が並んでる。
「右から2番目、真ん中あたりにあるから」
言われた通り、そのガラス棚に湿布薬があったので、渡した。
「ありがとう。でも、このフィルムを外す時が割と難しいのよねー。そうだ、君やってくれない?」
JKの右膝に湿布薬を貼れと?
難易度が高すぎる……
「それくらい自分で貼れるんじゃないですか?」
そう答えると、ヒラヒラとくちゃくちゃになった湿布薬を振って見せた。
「自慢じゃないけど、私不器用なのよね。私に出来ることは走ることだけだったのに……」
その言葉を聞いて思い出した。
担任で陸上部の顧問をしている猪熊先生に呼び出された時に、陸上部を辞めると言ってた先輩だ。
「わかりました。どこに貼れば良いですか?」
「ここよ、ここ。膝の両脇に一枚づつ貼ってくれる?」
膝の外側はまだいい。
でも、内側は足を開かなければ貼れない。
先に外側を貼り終えた。
薬剤の匂いが鼻に伝わる。
さて、問題の内側だ。
どうしたら良い?
「あのー先輩、もうひとつの方なんですが……」
「あ、大丈夫よ。スカートの下にスパッツ履いてるし、スカートを押さえてるから気にしないで」
気にするなと言われても困る……
「じゃあ、目を瞑ってやりますね」
「それじゃあ、ちゃんと貼れないでしょ。気にしないから早く貼って」
(先輩の足の怪我、ヒールで治せるかな?)
『ヒールだけでは無理ですね。膝の中に病巣がありますからキュアとの重ねがけなら治癒しますね。マスター、使うのですか?』
(今まで頑張ってきたみたいだし、JKの足にも触れられたし)
『変態ですね』
(煩い。いろいろ抱えてるけど、思春期なんだよ。人並みに性欲ぐらいあるわ)
【ヒール】【キュア】
湿布を貼りながら患部に治癒魔法をかけた。
「出来ましたよ。それじゃあ俺は行きますから」
「う、うん、ありがとう。君、名前なんて言うの?」
「1年の御門です」
「御門君だね、私は2年の弓崎玲奈よ。君って湿布貼りのプロかなんか?君が貼ってくれたら痛みがすーって消えたんだ。何だか走れそうな気がするよ」
「湿布貼りのプロなんているんですか?でも、痛みが消えたなら良かったです」
その後、会話を続けてうっかり口を滑らせてもマズいので、さっさと挨拶を済ませて保健室を出たのだった。
………
『マスターはなんだかんだ言って優しいですね。私がこの世界に来て15年、数多の人間の中からやっと見つけた適合者で特別な存在です。◯◯に対抗するにはまだ弱っちいですが、能力をひけらかす事もなく正しく使えているのは嬉しい限りです……期待してますよ、マスター』
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