現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

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第62話 湖のほとりに建つ教会

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猪熊亭に戻ると、ミーシャちゃんがちょうど帰ってきていた。
親父さんとミーシャちゃんからひとしきりお礼を言われ、手伝い料としてお小遣いと食材を分けてもらった。

そして猪熊亭を出ると、みんなを影の中に入れ、大森林にある湖のほとりへと移動した。

「えっ……なんで……」

拠点に着いた俺たちは影から出ると、その様相が変わっていることに驚いた。

草刈りをしただけの場所が、綺麗に整地され、積み上げておいた材木はベンチや周囲を囲む柵へと姿を変えていた。

それに、火を使った跡がいくつも残されており、まるでここで誰かが野営したかのようだった。

「ケンさま、前に来たときよりだいぶ変わってますね」

「あ、うん。誰かが勝手にここを使ったみたいだ。本当に頭にくるよな」

「ケンさまがそうおっしゃるなら、私、命を賭してでもその犯人を捕まえてきます」

そう言うと、ユリアちゃんは森の中へと踏み込もうとした。

「待って!ユリアちゃん。そこまでしなくていいから! とりあえず、住む場所が綺麗になったんだし、その件はあとで考えるよ」

……マジかよ、この子ちょっと無謀すぎないか!?

『マスターへの愛を感じますねー』

(そういうのはいいから!)

引き返してきたユリアちゃんは、俺の目の前まで来て、真剣な面持ちで話しかけてきた。

「ケンさま、前から言おうと思っていたのですが……私に“ちゃん”付けは必要ありません。これからはユリアと呼んでください」

……え、いまさら名前の呼び方なの?

「ケン兄さん、私も“ユメカ”って呼んでほしい! それから、ケン兄さんのことは今度から主人《あるじ》さまって呼ぶね」

ユメカちゃんまで参加してきた。

「俺はカナドでいいぞ」

……うん、カナドはもう既にそう呼んでるし。

「わかった。じゃあ、今度からそう呼ぶようにするよ」

そう言うと、二人は「「やったー!!」」と声を揃えて喜んだ。

……いや、正直意味わからんのだけど。

『マスターは人付き合いが下手ですからねー。コミュ障ですし……』

(ぐぬぬ……言い返したいのに、返す言葉がない)

……気を取り直して、教会を出して修復することにした。
幸い、地面は整地されているので、そのまま出しても問題ない。

「みんな、危ないから後ろに下がってて」
「よぉ、主。何するんだ?」

……カナド、お前までそんな風に呼ぶのかよ。

「寝泊まりする場所を出すだけだよ」

そして、ストレージから廃教会を取り出したのだった。

「「「うおぉぉー!」」」

背後から歓声が響く。
だが、本当の驚きはこれからだ。

【リペア!】

光に包まれた廃教会は、ゆっくりとその姿を変えていく。
崩れた壁は積み直され、砕けた窓は輝きを取り戻し、そして、新築同然の威厳ある教会がそこに現れた。

「綺麗……」
「わあーすごーい!」
「マジかよ……」

……うんうん。みんな驚いてるな。

「今日からここに住んで、みんなの鍛錬を始めます。辛い鍛錬になるだろうけど頑張ろう」

『どうせ最初に音を上げるのはマスターでしょうけどね』

エイシスの辛辣な言葉が胸に刺さった。



湖のほとりに、小さな教会がひっそりと建っている。湖から吹く涼やかな風と、水面から照り返す陽の光が優しく包み込み、まるでひとつの絵画のようにそこに佇んでいた。

「うむ、これはなかなか……」

思わず腕を組んで教会を眺めてしまう。

『マスター、いつまで鑑賞に浸っているんですか。ほら、みんなもう中に入ってしまいましたよ』

「そうか、中も綺麗になってるだろうしな」

『まるで自分が造った作品みたいですね。……貧民街からかっぱらってきたのに』

「おい待て、言い方! せめて“有効活用”とか“リサイクル”って言ってくれよ!」

『はいはい、言葉を飾ってもやってることは変わりませんから』

「ぐぬぬ……」

「主人さま。中もきれいだよ。早く来てよ」

ユメカが教会の扉を開き、嬉しそうに手招きしている。

「今行くよ」

ゆっくり歩き出して、教会の中に入る。
綺麗になった床を踏み締め進むと、礼拝堂の奥、神像が祀られているはずの神聖な場所に、なぜかペロがいた。

「なんでそこにいるんだ!」

いつのまにか亜空間から出てきたらしい。
なんでそんなに自由に出入りできるのか謎だ。

《ここ良いわねー。気に入ったわ》

(もう、好きにしろっ!)

『マスター、大変です!』

(なんだよ、急に?)

『ペロの神力が5000も増えてます』

(なにーーっ!?)

『そのおかげでマスターの神力が50増えました』

(なにーーっ!?)

ステータスを開いて、自分の神力を確認する。
………
神力 52/82
………

「マジで……?」

『マジです』

「もう、わけがわからん……」

そう言葉にして、考えるのを諦めた。



その日は、教会を住めるようにするだけで終わった。
荷物を運び入れたり、部屋を割り振ったりと、やることは山ほどある。

だが、俺は思った。

「……教会って、人が生活するのに使いづらくね?」

天井はやたら高いし、仕切りはほとんどないし、夜になると風がヒューヒュー通って寒そうだ。
神聖さは十分なんだけど、住みやすさという観点で見ると最悪だ。

「主、何言ってんだ。雨風凌げるだけで最高だろうが」

カナドたちが暮らしてた貧民街の家に比べたらそうかもしれんが、こちとら日本の現代っ子。
この環境は、サバイバルとなんら変わりがない。

それに、時々魔物が襲ってくるので、ユリアやユメカをうっかり外に出すわけにもいかない。
見た目は湖畔ののどかな風景でも、油断すれば、死に直結する。

(エイシス、どうにかならないか?)

『マスター、少しは自分で考えたらどうですか? 私はお腹のポケットから未来の便利道具を取り出すキャラではないのですよ。わかりましたか? の◯太……いえ、マスター』

(わかったから! マズいから、それ以上言うなって!)

危ない、これ以上は危険だ。
なら、冒険者歴のあるカナドに聞いてみるか。

「カナド、魔物が来ないようにするにはどうすればいい?」

「そうだな……余裕のある冒険者なら魔物避けの魔道具を使うんだが、あれはかなり高い。
ほかには魔物が嫌う匂い袋もあるが、臭くて使いづらいんだよな」

「なるほど……魔道具か」

お金はあるから買えるけど、しばらく王都には行きたくない。
なら、他の町で探すか……。

そういえば、エルフの里には結界が張られていて魔物が入ってこないって言ってたな。
あれって、どうやって張るんだ?

……師匠に教えてもらうか。

いや、この前の失態もあるし、エルフの村へ行くのは、しばらく時間を置きたい。

「なあ、主。夕飯は熊の親父さんからもらった食材を使ってもいいか?」

「構わないよ。魔法鞄の中に入れてあるから、好きに使っていい」

「おー、なら美味いもん作ってやるぜ」

カナドは料理にハマったのか?
そうだ、師匠のレシピに魔物避けのポーションってないかな?

ストレージから取り出したレシピ集を丁寧に見ていくと

「あったーっ!魔物避けのポーション」

なになに……

……
魔物避けポーションは、作ったものを周囲に撒くことで効果を発揮する。

「ふむふむ。ポーションを撒くんだね」
 
素材は、良く水洗いをしてから使うこと。

「まあ、ポーションを作る際の基本だね」

素材収集の場合は、怪我をせぬよう気をつけること。

「うむ、時系列がおかしいぞ」

ナイスバディーになりたい。

「……師匠もいろいろ抱えてるんだな」

ゴンキチ、てめーは早く死ね!  

「誰だよ!ゴンキチって!師匠何があった?」

ポーションは作ったら、状態保存の魔法陣を刻んだ容器を使用すること。

「ゴンキチが気になってポーションどころじゃなくなってきたよ」

以上
……

「え、素材は?作り方は?それよりゴンキチって誰?」

『マスター人の日記を読むのは良くないと思いますよ』

(エイシス、これはレシピなんだよ。日記じゃない)

『作り方は書いてありましたか?』

(いや、無かったよ)

『じゃあ、やはりレシピじゃなくって日記でしょう?あとでロリババアにチクッておきますね』

(やめろーっ!師匠に殺されるだろう?)

『それより、ペロの神力が増えたので能力の解放があったらしいです。その中に結界がありましたよ』

(マジで!?ペロって何者?)

《私は神よ!》

祭壇で寝ているはずのペロの声が聞こえてきた気がした。



………
参考資料 ペロの能力

幸福度増大
水操作
念話
天候操作(雨降)
念力
変化
霊体化
神聖結界(NEW)
神聖光線(NEW)




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