この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜

涼月 風

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第一章

第10話 新たな転校生

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 戊家つちのえけ当主との食事を終えて、家に帰ると玄関で仁王立ちして待っていた双子妹がいた。

「お兄、何で高級ホテルにいたの?」
「どなたと一緒だったのですか? 返答次第では覚悟して下さいね」

 うん、バレてるみたいだ。
 これって、夫の浮気を問い詰める妻の様相だよね。
 兄妹で、これっておかしくない? 

 勿論、そんな事は言えない……

「道を歩いていたら戊家当主にお昼を誘われたんだよ」

 俺は、何が起きたのか妹達に詳しく話す。
 疑われたままだと後が怖い。

「そうだったのですか……」

 瑠奈は何かを考えているようだ。
 思考中の瑠奈は右手であごをさするクセがある。

 一方、陽奈といえば

「お兄、ずるい。私も高級ホテルで食事がしたい! 」

 戊家当主の話よりも食い気の方が優っているようだ。

 掴みかかって来た陽奈を引き離しながら落ち着くのを待っていると、瑠奈が思考をやめて話しかけて来た。

「兄様、お願いがあります」

「何? 」

 瑠奈が俺にお願いするなんて珍しい。

「パソコンが欲しいです」

「パソコン? 今あるのではダメなのか? 」

「はい。スペックが心許ないです。出来れば高性能のデスクトップ五台と持ち運びできるモバイルが二台。それと、盗聴器、GPS装置。あと最新型のスマホを人数分。監視カメラを100台。拳銃では殺してしまう可能性がありますからスタンガンを予備を含めて10丁。それに移動用に車が欲しいですが、兄様はまだ免許を取れませんのでバイクが必要です。できれば、サイドカー付きの物が良いです。あとは……」

「ちょっと、待て待て! 瑠奈、暴走しすぎだ」

「いえ、暴走ではありません。これは今後必要となります。兄様は、己家の血筋と一戦交えるのですよね。現在、その血筋がどれ程いるか見当もつきません。それに、血筋であっても十家や霞の者に敵対しない者もいるはずです。敵を特定できなければ、戦略が立てられません。それに今回は邪鬼だけでなく人間相手になります。いくら十家の権力があっても公になって仕舞えば防ぎようがありません。戊家当主から預かった、そのブラックカードで早急に揃える必要があります」

「瑠奈の言いたいことはわかった。必要になりそうなものはメモ書きしてくれ」

「わかりました。早速取り掛かります」

 瑠奈は、真剣な眼差しで自分の部屋に向かった。

 その姿を見ていた陽奈は、

「瑠奈、本気だね」

 そう言う陽奈の口調も真剣だった。

「あぁ、そのようだ。俺達も出来るだけ身体を動かしておくぞ」

「うん、わかった」

 瑠奈の本気を見せられて、俺も陽奈も準備を始めた。






 瑠奈はその日遅くまで何かを調べていたようだ。
 次の朝、朝刊の配達を終えて帰宅すると瑠奈と陽奈が一緒にお弁当を作っていた。
 瑠奈は、眠そうな目を擦りながらウィンナーを炒めていた。

「珍しいな。陽奈も手伝っているのか? 」

「まぁね~~私が作った玉子焼き美味しいから期待しててね」

 そういう事なら期待しておこう。
 俺はシャワーを浴びて学生服に着替える。

 3人で一緒に学校に向かうのは、何時もの事だ。

 学校のある駅に着くと俺は、陽奈と瑠奈と別れて後からトボトボと如何にもモブらしい動作をしながら学校に行く。
 妹達からは、既に呆れられていた。

 通学途中に、例のホテルから出てきたクラスメイトの女子を見かけた。
 俺と同じボッチ飯を食べていた飯塚 早苗だ。

 美少女だしスレた感じはしないのだが、あの子がそんな事をしているなんて意外だ。
 隠れビッチという奴か。

 個人的な事情は、誰でもある。
 俺は、クラスメイトと深く関わるつもりはない。

 モブキャラとして設定した猫背の根暗な少年を維持しつつ俺は、自分のクラスに向かった。

 すると、

「あれっ……」

 イジメによって自分の机が突然無くなっている話はよく聞くが、逆に俺の机の隣にもう一つ机が置かれているのには、意味がわからない。

「都会では、ハブるのに机を増やすのか? それに何の意味が? 」

 よくわからないが、結局やる事は一緒だ。
 自分の机に座って、ただ今日一日無難に過ごせば良い。

 すると後ろから声をかけられた。

「霞君、おはよう」

「えっ、お、おはよう」

 水沢 清香だ。
 桜の古木のある公園でスケッチしていた時、話した相手だ。
 まさか、挨拶されるとは思わなかった。
 そして、水沢は、俺に顔を近づけてきて耳元で小声で囁いた。

「また、絵を見せてね」

「あ~~、うん。わかった」

 それだけの会話だが、それを見ていた男子から冷たい目で見られる。

 水沢には、やはり隠れファンがいるようだな……

 俺は、足早に自分の席に着いて机の上にうつ伏せた。
 こうしていれば「あいつ、寝てるのか? 」と思われ、声をかけづらいだろう。

 だが、それも庚によって意味のない事となった。

 庚が俺のところに来て

「霞君。今日の昼休み、ちょっと時間をもらえるか? 」

「ふぅえ!?  昼休みですか? 」

「そうだ。少し話がある」

「わかりました……」

「それから、前にも言った通りの敬語は無しだ」

「はあ……」

 それだけ言って庚は、自分の席に戻って行った。

 案の定、クラスの男子からは俺を貶す会話をしだした。
 ちゃんと本人に聞こえるように話しているのがタチが悪い。

 まぁ、気にしないけどね……

 すると、別の男子からは意外な会話が聞こえた。

 あいつらは、俺の妹の情報をいち早く察知した男子達だ。

『おい、聞いたか? 今日、このクラスに転校生が来るんだってよ』
『マジかよ。この間、来たばかりじゃねぇか』
『あ~~机が一つ多いだろう。気になって職員室に行ったらもう、その転校生が来てたんだよ』
『そうなんだ。で、またムサイ男か? 』
『そ、それが、聞いて驚くなよ。水色髪の超美少女だ』
『うおおおおーーマジか? 』
『声がデカい。マジだ』

 無駄に元気な男子達だ。
 何で机一つ増えただけで職員室に行くなんて、無駄なエネルギーを使うんだ?
 意味がわからん……

 でも、転校生が来るのか……俺に対する嫌がらせではなかったのだな。
 つまらんな……

 それから、俺は意識を外に向けながら軽い眠りに落ちた。

 しばらくすると先生が転校生を連れて教室に入ってきた。
 男子からオスの雄叫びのような歓声が聞こえる。

 煩い……

 男子を始め女子も騒ぎ出す中で、転校生の挨拶が始まった。
 俺は相変わらず机にうつ伏せている。

静葉しずはみずのえ 静葉しずは。宜しく」

 一切の無駄を省いた短い挨拶。
 好感が持てるな……

 えっ!? ……今、みずのえって言った!? 
 まさか……ね……。

 すると、クラスの男子や女子から質問が出始めた。

『壬さんは、どこから転校してきたの? 』

「◯◯県」

『趣味は何? 』

「無い」

『彼氏はいるの? 』

「いない……だけど……」

『だけど? 』

「旦那様はいる。そこの霞君」

『ええええええええ!!! 』

 クラス中、大騒ぎになった。

 俺の机を叩いたり蹴飛ばしたりしている男子もいる。
 前に座っている女子も俺の机を揺すっていた。

「はあ!? 何がどうなってるの? 」

 俺は、そこで顔を上げて初めてその壬 静葉をみた。
 水色の髪が陽光に照らされて綺麗に光っている。
 目が大きくその瞳は、透き通っている。
 その肌は、産まれたばかりの赤子のように白くて綺麗だ。
 まさに人形のような美少女が俺を見つめていた。

 クラスの男子が俺の胸ぐらを掴み出す。
 何か罵声を言っていたが、無視した。

 先生は、事態の収集に慌てふためいている。

 そこで『バシッ! 』っと大きな音がした。
 庚が竹刀で黒板を叩いたのだ。
 そのおかげか大騒ぎになっていたクラスの生徒達は一瞬で大人しくなった。

「ありがとうね。庚さん」

 先生が庚に礼を言っていた。

「いいえ、当たり前の事をしただけです」

 庚は、小さな礼をして自分の席に戻って行った。

「壬さんの席は、霞君の隣だから。そこに座ってくれる? 」

「はい」

 先生の言葉を素直に聞いて俺の隣の席に座る壬 静葉は、俺を見ながら

「宜しく、旦那様」

 そう小さな声で呟いた。
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