この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜

涼月 風

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第ニ章

第51話 文化祭(2)

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 俺の前には、里にいるはずの母親が立っていた。

「えっ!? 母さん」

「そうよ。寝ぼけてるの? 」

 寝ぼけてはいない。
 意外だっただけだ。

「陽奈と瑠奈に連絡もらったのよ。文化祭があるから来てねって」

 そうか……

「陽奈達のところには行ったの? 」

「これからよ。景樹を誘って行こうとしたのよ」

「俺は行けないよ。受付あるし」

「そうなの? 困ったわね~~それと、忘れ物よ」

 母さんが忘れ物と称して持ってきたものは、俺の愛刀『夜烏』とお弁当だった。

「母さん、これ学校に持ってくるのはマズイというか……」

「何を言ってるの? 常に側に置いておくのが基本でしょう? 陽奈と瑠奈の分もあるんだから~~」

「マズいよ。ここ学校だよ」

 すると、母さんは真剣な眼差しになった。
 こんな顔をする母親は覚えがある。

「持ってなさい! 」

「わかった……」

「それと、お弁当に貴方達が好きなもみじの味噌漬けを入れといたわよ。

"もみじ"とは、俺達兄妹が大好物の鹿肉の事で味噌漬けを焼いて食べると美味しい。

「ああ、元気が出そうだよ」

「それと瑠奈からマムシと山椒魚を送ってと言われて、送ったのだけど誰か具合が悪かったの? 」

 今朝の得体のしれないドリンクは、母さんから仕入れたのか……

「最近、部活で徹夜が続いたから、瑠奈が心配したんじゃないかな。俺は平気なのに」

「そう、景樹が飲んだのね。良かったわ」

 母さんの言い方からすると、何かマズいものでも入ってたらしい。
 聞くのはやめておこう……

「じゃあ、陽奈と瑠奈のところに顔を出してくるわね」

 母さんは、そう言って中等部の校舎に向かって行った。

 そうか、母さんが来たって事は……
 俺は愛刀『夜烏』の入った筒状のケースを握りしめた。





 しばらくすると、女子の交代の時間になったようで、うつ伏して軽い睡眠を貪っていた俺の隣の席に女子が腰掛けた。

 気配で誰だかわかったが、俺は寝たふりをしていた。

「霞君、眠いのは仕方がない。だが、職務は全うしなくてはいけない。君が望んで受付に志願したのだろう? 」

 叱責する言い方を交えながら会話を振られた。

「う~~ん、そうだよね」

 俺は、起きて目を擦る。
 勿論、寝てはいないので演技だ。

「やっと、君と話ができる。何故、あの時、私との試合から逃げたのだ? 」

 真剣な眼差しを向ける庚 絵里香は、俺が何と答えるのかと獲物を捉えた蛇のように身動きせず待ち構えていた。

「あの時も言ったけど、戦う理由がなかったからだよ」

「理由なら、私を好きにしていいと言ったではないか? 」

「それは自信の顕れなのか? 庚に俺は勝てっこないという意味の? 」

「正直言えばそれもある。だが、勝負は時の運だ。絶対勝てるとは思っていない」

 ふぅ~~! 今日1面倒な女子だ……

「なぁ? 俺がもし勝った場合どうするつもりだったんだ? 」

「自分の言った言葉に二言はない。君の好きにしたらいい」

 何でそんな事言うのかなぁ~~
 俺だって男だし、庚にそう言われれば食指も動く。
 でも、その後が面倒そうだ。

 すると、教室の廊下の端から声を出して手を振りながら近付いて来た者達が現れた。

「お~~い。ここにいたんだあ」

 目立つ容姿の兄妹。
 柚木 優作さんと麗華さんだった。

「あっ、絵里香も一緒だ。パーティー以来だね」

 優作さんは、俺の隣にいた庚に気づき声をかけた。

「優作さんも麗華姉も文化祭に来たのか? 」

 庚は、眼を丸くして驚いている。
 こういう場所に2人が来るのは珍しいのだろう。

「陽奈ちゃんと瑠奈ちゃんに誘われたのよ。クッキー焼けるようになったから食べに来てって」

 この間、水沢の家でクッキー作りをしてたのは、文化祭のためだったのか……

「それにしても、景樹君は相変わらずモサ男してるの? 髪の毛あげたら格好いいのに」

 麗華さんは、余計なことを言う。

「ねぇ、絵里香も一緒に陽奈ちゃん達のところに行こうよ。勿論、景樹君も一緒だよ」

 遠慮します……

「受付け外せないから無理です」

「そんなの兄貴にやってもらえばいいから。さぁ、行こう! 」

 強引に、俺と庚の手を取って引っ張る麗華さんは、少林寺拳法をしてただけあって筋力がある。

「おい、麗華! 俺が留守番するのか? 」

「そうよ。兄貴、頑張ってね~~」

 優作さんは、“やれやれ……” と言いながら空いた席に座った。

 柚木家も兄は、妹に振り回されているらしい。


 麗華さんに連れられて俺と庚は、校舎を出て中等部の校舎に向かう。
 校舎の敷地内では、特設ステージが設けられており、綺麗な衣装を着た女子達が音楽に合わせて踊っていた。

「上手ね~~」

「麗華姉、私はここにいる霞君と話があるんだ! 」

 俺には無いけど……

「もう、絵里香は昔からクソ真面目なんだから。話は後でもできるでしょう? 」

 中等部に向かって3人で歩いていると、目の前に会いたくなかった人物が待ち構えていた。

「やっと、見つけた! 麗華さんを付けてて正解だったわ」

 その女子は、目深に帽子を被り多きなサングラスをして、おまけに大きなマスクまでしている。

 つい最近、何処ぞのデパートで見かけた女子がそこにいた。

「霞 景樹! 私と一緒に来るのよ! 」

 マジかよ……勘弁してよ……
 ここで何してるのさぁ、ストーカー・アイドルさんは……

「景樹君、君の知り合い? 」

 麗華さんは、俺を見ながらその不審人物の素性を訪ねた。

「いいえ、全く知りません」

 俺たちの会話を聞いていたのか、そのストーカー・アイドルは怒り出した。

「何言ってるの? この間デートしたばかりでしょう? 」

 ストーカーされてダイヤの指輪を買えという女子とデートした覚えはない。
 だが、麗華さんと庚は、その女子の言う事を少し信じたようだ。

「景樹君もやるわね~~。そうか、少し変わった彼女がいたんだぁ」

「麗華さん、彼女ではありません。そいつは金女かねじょです! 」

「えっ、金女って? 」

「人をストーカーして、38万円もするダイヤを買わせようとする金に汚い女子の事です」

 言ってる意味がわからないという顔をしてる麗華さんと庚だった。

「何言ってんのよ! 麗華さんは知ってるよね。一度挨拶した事があるもん」

 そう言ってストーカー・アイドルはサングラスとマスクを取って素顔を晒した。

「あーー! 唐変木48の連城 萌ちゃんじゃない。久し振りね~~」

 麗華さんと知り合いだったのは嘘ではなかったようだ……

『おい、連城 萌だってよ』
『マジかよ! 文化祭に来てるのか? 』
『何かのサプライズか! 』

 ストーカー・アイドルは素顔を晒した事で、麗華さんの声に近くにいた男子達が反応した。

『本当だ。連城 萌だ』
『可愛いーー! 』
『サイン貰おうぜ』

「キャッーー! やめてよ。今日は仕事じゃないんだから~~」

 あっという間に囲まれてしまったストーカー・アイドル。

「自称じゃなかったんだな……」

 俺は、それを放っておいて歩き出す。
 麗華さんも「いいの? 放っておいて」と言いながら一緒について来た。

「霞 景樹~~逃げるなーー! 」

 そう大声で叫ぶストーカー・アイドルを放っておけなかったのか、庚は、人垣の中に入り集まってくる人を蹴散らしていた。

 麗華さんと並んで歩いていると、流石に麗華さんも気づいたようだ。

「さっきまで晴れてたのに急に雲が出てきたね」

「夕方かと思ってたけど、こんな明るい時間だなんてね」

「景樹君、それって……」

「ああ、母さんが来たからね。こうなる事は分かっていたよ」

「景樹君達のお母さんが来てるの? 」

「里から出てきて、茜叔母さんの家によってこれを持ってきてくれたんだ」

「それって、絵じゃなくて剣が入ってるの?」

「そうだよ……」

 空に暗雲が立ち込めた。
 昼間なのに辺りは急に暗くなる。

 麗華さんは、バッグから持ち運びができる手甲を取り出した。

「麗華さんも持ってきてたんだ? 」

「いつも持ってるように陽奈ちゃんから言われてたのよ。歳下だけど私のお師匠様だからね」

 あれから麗華さんもそれなりに鍛えていたようだ。

「でも、何で景樹君のお母さん、分かったのかしら? 」

「母さんは『先読み』という神霊術を持っている」

「先読み? どういう能力なの? 」

「未来を垣間見る力だ。その力で俺は何度も助けられている」

「す、凄い能力ね」

「それだけじゃない。母さんは、神に愛されてる」

「神様に? 」

「嫌、少し違う。神の御使いとでも言うべきか……」

「景樹君のお母さんって何者なの? 」

「何者か……他言無用だよ」

「分かってるわ」

「母さんは、天から落ちてきた天女だ……」

『えっ!! 』

 俺の眼は、既に暗闇から這い出てくるあるものを捉えていた。



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