この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜

涼月 風

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第ニ章

第50話 文化祭(1)

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ーー文化祭1日目ーー

 クラスの出し物は、模造紙三枚に書かれた学校の歴史。
 人気の無い催し物。
 当然、見に来る人は殆どいない。
 だが、受付は必要。

 受付は必要……

 俺は、思ってしまったのだ。

 これ、超モブっぽくね?

 受付……これが冒険者ギルドの受付なら荒くれ冒険者に人気の受付嬢。
 だが、そのギルドの奥にいるであろう男性事務員は見向きもされない。

 俺が目指すのは、この男性事務員。

 また、街を訪れる商人や冒険者を相手する門番。
 そして、その門番の奥の門番小屋にいる控えの門番。

 俺が目指すのは、この控えの門番。

 俺は率先して、この受付に立候補した。
 文化祭の間、この受付に徹すればどこに行こうか迷わなくて済むし仕事してるので感謝もされる。

 クラスの決まりで男女1組交代でする事になってるいた受付を丸2日男子の受付に立候補したのだ。
 男子は誰もやりたがらないしみんな決めるのは面倒なのですんなり通ってしまった。

 それで、俺は今日と明日どこで何をするのか迷わなくて済むしなんかモブっぽくて正直嬉しい。

「あ~~最高! 」

「何が最高なんだ? 」

 隣に女子がいなければの話だが……

 男女1組で受付……
 俺の隣には、クラスの女子がいた。
 それも、この前まで入院してた飯塚  早苗だ。

「飯塚、お前いつ退院したんだ? 」

「はあ!? 3日前だよ。入院中に散々説教たれてあれ以来一度も顔見せなかったよな」

「まあ、それには色々事情がある。飯塚だって俺が来たら迷惑だったろう? お互い様だ」

「迷惑なんて言ってねぇぞ。まぁ、ちょっと言い合いになっただけじゃねぇか」

 そんな会話をしてる時に見学者が来る。
 受付にはノートが置いてあり、来場者は名前を書いて入場してもらうシステムだ。

「こちらに記入してもらえますか? 」

 飯塚は、丁寧に来場者に話しかける。
 さっきまで俺と話していた口調とあまりにも違うので俺はおかしくなり、下を向いてくすくすと笑っていた。

「な、何がおかしいんだよ。ああ? 」

「お前もいろいろ大変なんだなと思っただけだ」

「だから、何がだよ! 」

「何でもないさ」

 飯塚の体調不良は、薬よりも精神的なストレスによるものが大きく入院生活ですっかり良くなったと言ったいた。
 ストレスの原因であったヤバい組織は壊滅したので、飯塚も気が楽になったのだろう。
 それに、庚 絵里香の母親である女医の庚 澄香が警察関係に手を回してくれたそうだ。
 学校に来られるのも庚家のフォローのおかげらしい。

 そんな話をしながら時は過ぎ、女子は交代の時間となった。





「早苗、お疲れ様ーー! 」

 元気よく現れたのは、結城 莉愛夢だ。
 今度は、こいつの番らしい。

 飯塚と交代して結城が隣の席に着く。

「霞君もお疲れーー」

「俺は、ずっとここだけどね」

「そうだったね。何で受付立候補したの? そんな事に立候補するなんてあり得ないよね? 」

 結城は、知らないのだ。
 ぼっちで過ごす文化祭という苦難の行を……

「そうか? 」

 俺のズボンのポケットに入っているスマホからは、さっきからブルブル振動している。

「霞君、電話じゃない? 」

 結城は、自分のスマホを確かめてから俺に問いかけてきた。

「そうかもな。後で見るよ」

 恐らく瑠奈からだろう。
 飯塚と一緒にいる時からメッセージが送られてきた。
 痺れを切らして電話をかけてきたに違いない。
 内容を確認すると返信せざるを得ない。
 というか、確認するのが怖い。

「霞君、気になるんだけど。それ」

 友達の多い結城には、連絡の入っているスマホを無視する事が出来ないようだ。
 俺は、仕方なくスマホを取り出して確認する。

 やはり、瑠奈と陽奈からだ……

 メッセージは……

『兄様、お身体の具合は大丈夫ですか? 』
『兄様、兄様、何をしてるのですか? 』
『兄様、連絡がありませんが』
『兄様、まだ身体の火照りはありますか? 』

『ヤッホーお兄。クッキー作ったよ』

『兄様、お忙しいのですか』
『兄様………』

 電話連絡も瑠奈からだった。

 俺は『受付で出られない』とだけ、返事をしておいた。

 これ、いつか瑠奈に刺されそうだよね……

「誰から? 」

 結城は、興味津々といった感じで聞いてくる。

「妹達からだよ」

「そっかーー受付終わったら陽奈ちゃん、瑠奈ちゃんのクラスの軽食店に行く予定なんだ」

 妹達と仲良くしてくれるのは有り難い。

「俺は、行けないと伝えといてくれ」

「そうだねーーバカなお兄さんは、受付に立候補してその場から離れなれないって言っておくよ」

 バカだけ余計だ……

「明日の午前中、剣道部の模擬試合があるんだぁ」

「結城も出るのか? 」

「うん。でも主役は絵里香だけどね」

 人は群れると、集団心理の中で自分の位置付けを知らず知らず決めてしまっている。
 自分の人生の主役は他の誰でもないのにな……

「そうか、俺は主役よりは裏方の方がいい」

「ふ~~ん。もしかして、霞君は裏方から誰かをサポートして成功させてあげるっていう考えなの? 」

 誰かの為にしてるわけではない。
 自分がそうしたいからするだけだ。

「そんな大層な人間に見えるか? 」

「見えなくもないよ。霞君は底がしれないからね」

「そういえば、パーティーの時、庚と一緒にいたよね? 」

「そうそう、あの時の絵里香おかしかったんだから。あの辛 誠治さんとかいう人や従姉妹の人達に霞君の事、聞いていたんだよ。物凄く真剣だったんだ。怖いくらいに……」

 辛 誠治が言ってた事は本当のようだ。
 俺には、庚がどうしてそんなに『霞の者』の事を知りたいのか理解ができない。

 倉庫で一角鬼と戦って穢れを祓う事をやめた庚は、あれから剣道の鍛錬に精を出していると聞く。

 英雄にでもなりたいのか?

『ガリレイの生涯』という戯曲の中で、地動説を唱えたガリレイは異端審問にかけられる。拷問の酷さにガリレイは自説を撤回した。だが、弟子のアンドレアはそんなガリレイに失望し「英雄のいない国は不幸だ」と非難する。すると、ガリレイは「英雄を必要とする国が不幸なのだ」と答えたという。

 英雄……そんなものはいらない。
 ガリレイの言う通り英雄なんて必要とする世界が不幸なのだ。
 邪鬼が存在しない世界ならば、どんなに幸福な世界になるだろう。

 俺は、親父からその話を聞いてそう思った。

 しかしながら、その邪鬼は存在しており、世界は人知れず裏側から蝕まれている。
 そんな、残酷で過酷な裏側に自分から進んで臨むなど英雄願望があるのではないかと疑っていた。

 今の世界に英雄はいらない。
 必要なのは、ドブさらいでも平気で熟す駆逐者だ。

「霞君、どうしたの? 難しい顔をして」

「えっ、何でもない。考え事をしてただけだ」

「ふ~~ん、そうなんだ」

 しばらく、結城と他愛の無い話をして交代の時間となった。
 次に来たのは、俺の前の席に座っている女子、千野  茉莉花だ。





「霞さぁ、私、行きたいところあるんだけどここ任せてもいい? 」

 千野 茉莉花は、いきなり受付けを押し付けてきた。
 だが、俺としては願っても無い話だ。

「いいよ。暇だから俺だけで十分だよ」

「いいの? 悪いね」

 遠慮なしに受付けをボイコットした千野は世間では褒められたももではないが、俺には千野が天使のように思えた。

「これで、のんびりできる……」

 飯塚や結城はおしゃべり好きだ。
 特に飯塚は、絡みながら話してくるので面倒くさかった。

 俺は、身体の火照りが抜けて少し眠気が襲ってきていた。
 受付の机にうつ伏して、徹夜で眠っていなかった睡眠を確保する。

 だが、そんな時に声をかけられたのだった。

「景樹、何寝てるの? 」

 その声は懐かしく、そして暖かい。

「えっ、母さん!? 」

 現れたのは、里にいるはずの母親だった。





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