この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜

涼月 風

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第ニ章

第54話 学校での戦闘(2)

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ーーかのえ 絵里香ーー

 私は、何もできない自分に苛立っていた。
 窓の外では、邪鬼との戦闘が行われている。
 今日の自分は、剣を持っていない。
 竹刀や木刀では、邪鬼を倒せない。

(私だって、少しは何か出来るのではないか……)

 そんな、思いが心の血を熱くさせている。

 そんな時、私の肩を叩く人物がいた。
 振り返って、その人物を見ると……

「どうしたの? 怖い顔しちゃって」

 彼女は、同じ剣道部の結城 莉愛夢だった。

「いや、何でもない」

 私の返答は、大雑把になった。
 気持ちは、既に校舎の外にある。
 剣があれば、直ぐにでも外に出て戦いたい。

「すごいきりよね。こういうのってかすみともいうのだっけ? 」

「霞……」

 その言葉に、絵里香は引っかかった。
 突然の黒雲。
 急速に広がった霧。
 邪鬼が溢れる校舎の外では、剣を交える音と工事のような爆発音。

(まさか、霞 景樹が戦っているのか……)

 疑問は沢山ある。
 しかし、妙に納得できてしまう。
 彼の底が見えない不気味さ。
 十家である私の父の他にも壬家、戊家、辛家、そして従姉妹の麗華姉や優作さんとも面識がある。

 そんな事を考えてる私にまた、声がかかった。

「庚さん、結城さんもここにいたんだぁ。探しちゃったよ」

 ふと、現れて声をかけてきたのは、クラスメイトの水沢 清香だった。

「外見てたんだ。凄い霧よね」

「うん、でも校内放送で校舎の外には出ないで下さいって言ってたじゃない。もしかしたら、工事現場からガスか何かが漏れたのかもしれないって、みんな噂してるよ」

 外に出るのは危険だ。
 でも、これはガスじゃない。
 私だけが、その事を知っている。

「ねぇ、美術部の展示見に行かない? 霞君や壬さん、それにリズ先輩の絵も展示されてるみたいだよ」

「そうね。ここにいても退屈だし見に行こうか? 絵里香も行こう」

「私は……」

「ここに居てもつまらないよ。見に行こうよ」

 誘われるまま、断る事も出来ずに莉愛夢の後をついて行った。



 美術部の部室前の廊下には受付が置かれおり、一人の女性が本を読みながら椅子に腰掛けていた。

「こんにちは。見学いいですか? 」

 水沢さんが、声をかける。
 受付の女性は、ふと読んでいた本を隠すような動作をして慌ててノートを差し出し記名を促した。

「どうぞ、どうぞ、ゆっくりご覧下さい」

 受付の女性は、嬉しそうに中に招き入れた。
 私は、霞 景樹がどんな絵を描くのか少し気になった。

 会場である美術部の部室では、展示された絵が飾られている。
 一際目立つ場所に、大きくて豪華な額に入れられた絵が飾ってある。
 作者を見ると、戊 シャルロット・リズというネームプレートが絵の下につけられていた。

「見て見て、これ、リズ先輩のだよ」

 リズ先輩の絵は、円形の水場の中央に噴水が湧き出た絵だった。
 正直、上手だとは思えなかったが、額が豪華なせいで絵に価値があるのだと勘違いしてしまいそうだ。

 その隣には、壬さんの絵が飾ってある。
 幾何学模様の意味が理解できない絵だった。

 水沢さんが、一つの絵を熱心に見ている。
 私も気になってその絵を覗き込むと、何とも柔らかい穏やかなタッチの絵だ。

「これ、霞君の絵だよ。私が住んでる近くの公園なの……」

 水沢さんは、嬉しそうにその絵を見ている。

「これを霞君が描いたのか……」

 彼からは想像もできない絵だった。
 何というか、彼らしくない。
 私はそう思ったが、水沢さんは違ったようだ。

「こんな絵が描けるなんて、きっと、霞君は優しいのね」

 優しい……

 その言葉に違和感を感じる。
 彼は、優しいのか?

 すると、『コツコツ』と杖をつきながら、入ってきた中年男性がいた。
 目にはサングラスをしており、杖は白かった。

 一瞬、気にはなったが、私は霞 景樹の絵を再度見始めた。
 池の奥に大きな木が一本描かれている。
 池の周りの植え込みも、一本一本丁寧に色付けされていた。

 その時、私の視界が黒くなった。
 気を失う、そんな感じだ。

 私は、倒れる寸前誰かの声を聞いた。

『そんなとこで、おいたをしたら兄様の素敵な絵が汚れてしまいます……』

 どこかで聞いた事のある声だった……





 白い杖をつきながら、美術部の部室に入っていく男を確認した。
 間違いなく、忍びだ。
 瑠奈は、そっと気配を消して近づく。
 中に入ると、庚 絵里香がいた。

 狙いは、この女らしい。

(また、このお尻ですか……)

 瑠奈は、面倒くさそうにため息をついたが、お尻が見ていた絵は気になった。

(あれは、兄様の絵ですーー!! )

 その時、その白い杖の男は、杖に忍ばせた剣を引き抜き庚を背後から襲った。

 瑠奈の目が一瞬金色に輝く。
 すると、1秒後には来場していた女子達は床に伏せっており、斬りかかった白杖の男は、瑠奈のワイヤーで拘束されていた。

「そんなとこでおいたをしたら、兄様の素敵な絵が汚れてしまいます」

 そう言った瑠奈は、天井から垂れ下がっていたワイヤーに絡まって拘束されている男の前に立った。

「貴方は、誰ですか? 」

「これを、早く解け! 」

 男は、命令口調だ。
 目の前に現れたのが、子供の女だと思いバカにしてる様子だ。

「何を偉そうに話しているのですか? どうせ、貴方は紅の者の下っ端でしょう? 雑魚臭がプンプンします」

「き、貴様、まさか……霞の者? 」

「今頃気付いたのですか? 一瞬で拘束された時点で普通気づきますよ」

「ふざけた小娘だ。そうだ、俺は紅の者、青蜥蜴あおとかげだ。驚くがいい」

「聞いたこともない名前です。それもそうですね。美術部の展示品が飾ってあるこの教室に目の悪い人物の変装をして入り込む程、知能が足りないおバカさんですものね」

「何だとーー! このクソ女め! 」

「言葉使いが悪すぎます。幼稚園からやり直す事をお勧めします」

 瑠奈は、そう言ってワイヤーを引っ張った。

 青蜥蜴と名乗った男の身体にワイヤーが食い込む。

「ひゃいっ! 」

 情けない声を上げる青蜥蜴。

「さて、私としては、そのお尻がどうなっても構わないのですが、貴方は兄様の絵を汚そうとした罪があります。これは、もう極刑です。地獄行きです! 」

 天井から吊るされ拘束される青蜥蜴に向かって瑠奈はある武器を取り出した。

「私は、糸使いではありません。これは、趣味みたいなものです。私の本当の武器はこれです」

 手には、ドス黒いむちを握っていた。

 瑠奈が、鞭を振るうと床に『ピッシッ! 』と軽快な音が響いた。
 音は、軽快だが床は少し焦げている。

「理由はわかりませんが、これを使うと何故か兄様が怖がるので、滅多に使いませんが、威力は保証済みです」

 瑠奈は、遠慮なしに青蜥蜴に鞭を振るう。
 その度に、青蜥蜴の身体には無数の傷が増えていった。

「や、やめてくれ……頼むから……」

「やめるわけにはいきません。兄様の絵を汚そうとした罰です」

『ビッシッ! ビッシッ! ビッシッ! 』

「や、やめろーー! 痛っ! 」

「まだまだですよーー」

「痛っ! テメーっ、このままで済むと……痛っ! やめて下さい。お、お願いします」

「今度は、少し力を入れてあげますね」

 瑠奈の振るった鞭は、勢い余って奥に立てかけてあった美術部の入場門を破壊した。

「あっ、手元が狂いました。でも、兄様の絵は無傷ですから良しとしましょう」

 瑠奈は、その勢いで青蜥蜴に鞭を振るう。

『ビッシッ! ビッシッ! ビッシッ! 』

『ギャッーー! 』

 瑠奈の鞭が軽快に宙を舞う。
 青蜥蜴は、見るも無残に口から泡を吹いて気絶していた。

「もう、動かなくなってしまったのですか? つまらないですね」

 瑠奈は、そう言って天井に止めてあったワイヤーを外して青蜥蜴を床に落とした。
 それから、その青蜥蜴を窓から外に放り投げた。

「この高さなら死なないでしょう」

 瑠奈も窓からジャンプして外に出る。
 そして、青蜥蜴と共に霞の中に消えていった。

 後に残ったのは、夢の中で過ごす受付けの女子と中で見物していた女子達だけだった。



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