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第三章
第64話 山頂でリフレッシュ
しおりを挟む「ひやっほーー!」
俺は、山の中を駆け抜けながら思わず喜びの雄叫びをあげてしまった。
大きな鳥居から参道に入り、まっすぐ行くと神社。
俺は、その参道から右に入り道無き道を駆け抜けている。
やはり、気持ちいい。
里にいた頃を思い出す。
都会では味わえない山の雰囲気にテンションはアゲアゲだ。
さて、時間もない。
どこかで、横になって至福の時間を堪能しなければ。
できれば見晴らしの良いところがいい。
俺は、大きな木に登り、高所から適当な場所を探す。
「周りが木ばかりでよく見渡せないな。でも、俺の感が向こう方面だと告げている」
大体の方角を念頭に入れ、俺は再び山を走り出す。
大きな岩など問題ない。
足場が悪いなど、気にもならない。
倒れた木など、俺の走りの障害すらならない。
俺は、自由だ。
自由を手に入れたのだ。
「おっ、鹿がいる」
走っている俺に驚いたのか鹿が飛び出して行った。
しかも、親子連れだ。
「懐かしいなぁ。陽奈なら喜んでたろうに……」
いかん、いかん、今は妹達の事は忘れるんだ。
せっかくの一人の時間を無駄にする訳にはいかない。
山の中を颯爽と走る俺は、水を得た魚のようだ。
山が、山が俺を呼んでるぜ~~!!
夢中に走って山の頂上付近に着いた。
開けた場所を発見。
突き出た岩の上に立つと、見晴らしの良い事この上ない。
人もいないし、ちょうどいい。
俺はこの岩の上で、念願の昼寝をする事にした。
「あーー最高!!」
◆
「結構、神社までありますわね」
「お嬢様、お疲れではありませんか?」
「大丈夫ですよ。ルミネほどではありませんが、私だって鍛えておりますもの」
参道を登って神社に向かう娘達。
祭りの飾りなのか、参道には雪洞が吊されている。
「いい風景ですね。日本は面白いです」
「そうですわね。趣があると言うのでしょうか」
戊家の二人は、そんな光景を楽しんでいた。
一方、陽奈と瑠奈は、
「里の山を思い出すね」
「里は、このように人の手は入ってませんが、山はいいですね」
久々の山で、二人も嬉しそうだ。
「瑠奈、動物いるかな?」
「気配がしますよ。近くにいるのは狸かもしれません」
「ポン吉元気にしてるかな?」
「心配ないでしょう。他の仲間もいますから」
楽しそうに話しながら登る娘4人。
そうこうして登っているうちに、神社へと続く石段が見えてきた。
「あれを登れば壬家ですわね」
「本当に山の中なのですね」
娘4人は、階段を登る。
登った先には大きな滝があり、その脇に見事な神社が建っていた。
お祭りという事で普段よりは多くの参拝者がおり、参拝するのに行列ができている。
「静葉さんに会う前にお参りいたしましょうか」
シャルロット・リズの言葉に従い両手を洗って口を濯ぎ、行列の最後尾に並んだ。
「お嬢様、壬 静葉さんの住まいは何処なのでしょう?」
「神社脇にある社務所の奥にあるみたいですね」
「滝壺のところに、魚いるかな?」
「どうでしょう?もし魚がいても食べちゃダメですよ」
リズとルミネさんはともかく、陽奈と瑠奈は相変わらずだ。
順番が回ってきてそれぞれ二礼二拍手一礼をしてお参りをする。
何を願ったのかは、本人のみぞ知ることだ。
「では、社務所の人に声をかけて参ります」
ルミネさんは、お札を売ってる巫女さんのところに行って話をしている。
話を聞いた巫女さんは、側にいた神主さんに声をかけていた。
驚いた様子の神主さんは、奥に行ったままだ。
暫く見物しながら待っていたら、社務所の脇からいつも静葉と一緒にいた清崎 流が姿を現した。
◇
社務所の脇を通り抜け神社を囲っていた玉垣の木戸を開けると石畳の道が山のおくに延びている。
木々に覆われた道を歩くことおよそ10分。開けた場所に出るとそこには、大きな和風のお屋敷があった。
門を潜り池の辺りを歩いて玄関に着くと、清崎 流が玄関を開けて娘達を招き入れた。
「山間の中に、こんな立派なお屋敷があるなんて想像がつきませんでしたわ」
「綺麗な庭園ですね。お嬢様」
「瑠奈、鯉がいる。鯉こくにすると美味しんだよね」
「私は鯉の洗いの方が好きです」
そんな話をしている娘達4人は、壬家の家に通されたのだった。
「遠いところまでよくぞ来てくれた。戊シャルロッテ・リズ殿とお供の者。それと霞の者の娘達よ。歓迎しようぞ」
そう発言したには壬家現当主 壬 龍子だ。
老年の淑女は、その佇まいから只者ではないと皆は思っている。
「突然の訪問、失礼とは存じましたが学友の静葉さんの安否を思いまかり通した次第でありますわ」
「うむ、静葉と仲良くしてくださっているという話は、ここにおる流から聞いておる。こちらこそ、これからも良き付き合いをしてもらいたいものだ」
リズと龍子とで挨拶が済むと、静葉の話になった。
「ところで静葉さんはどちらに?」
「ああ、実はのう……」
龍子は、思い口を開けた。
その内容を聞いたみんなは、驚いていた。
◆
山頂付近の岩の上に寝転んでいた俺は、雲の流れを見ながら心が開放されていくのがわかる。
「都会では味わえないよなぁ。一時はどうなるかと思ったけど山に来て良かった。これも静葉様、様だな」
静葉のメッセージがなければ、ここまで来ることもなかった。
俺は、心から感謝する。
「欲を言わせてもらえば、もっと時間が欲しい。でも、それは贅沢かな」
すっかり、ご機嫌になっている俺は、今、ドラゴンが襲ってこようとも負ける気がしない。
まあ、冗談だけど……
さて、少し寝るかな。
俺は目を閉じる前に周囲の気配を確認する。
「うむ!?」
獣かな?
少しだけ違和感がある。
人の気配のようだけど、登山客はいないし、そもそもここまで来る物好きはいないだろう。
「はて!?」
気になった俺は、その気配のする方に向かって歩き出す。
岩を降りて、木々の中を進むと獣道のような山道に出くわした。
「この山道を上の方か……」
確かめなくとも良いのだが、気になったので行ってみる。
今日の俺は機嫌がいいから。
ほんの5分程山を登ると、朽ちた鳥居の奥に古い祠が見えてきた。
「山の神様をお祀りしてるのかな」
里にある山頂にも、同じような祠がある。
気配はそこからしている。
俺はその祠に近づいてみた。
格子状の扉の奥に人が入れるほどのスペースがある。
汚れた幣束なども見ることができる。
「最近、誰か来たみたいだな。ホコリが綺麗に拭かれている箇所がある」
普通なら、そんな罰当たりなことはしないのだが俺は扉を開けてみた。
床板がズレている場所があり、そこから気配と風が流れ込んでくる。
「隠し部屋があるのか?」
こうなってくると『霞の者』としての血が騒ぐ。
もしかしたら、お宝が眠っているかもしれない。
俺は、ズレている床板をどかす。
思いの外、あっさりと動いた板の下には地下に続く階段があった。
面白そう。
トレジャーハンターになった気分だ。
俺は、ゆっくりその階段を降りる。
少しくらいが見えないほどではない。
それに、最近、誰か来たようで蜘蛛の巣などは張っていなかった。
1分もかからないうちに少し開けた場所に出る。
天井の岩の割れ目から太陽の陽射しがさして、暗い印象は受けない。
だが、その広場の奥に鉄格子があった。
「何だ。ここは?罪人でも閉じ込めておく部屋なのか?」
ゆっくり鉄格子に近付くと気配の素がそこで寝ていた。
「はい!?」
俺が、驚いて素っ頓狂な声を張り上げると、寝ていた気配の素は驚いたように俺を見る。
「えっ、旦那様!?」
山の上の古い祠の地下に鉄格子で閉じ込められた壬 静葉がそこにいた。
「旦那様、お、お腹空いた」
久々に会った静葉の第一声がそれだった。
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