インミシべルな玩具〜暗殺者として育てられた俺が普通の高校生に〜

涼月 風

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第38話 ミニコンサート

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「「あっ………!」」

見つめ合う2人。俺は、偶然にも、幼稚園の園内でクラスメイトに遭遇してしまった。

「東藤和輝……」
「木梨なんとか……」
「なんとかではない。由香里だ」

「さとし君のお姉さんとカズお兄ちゃんって知り合いなの?」

そう聞いてきたのは珠美。
無邪気そうな顔をしてるが目は鋭い。

「クラスメイトだ」
「ふ~~ん、そうなんだあ」

そこに沙希もやってきた。

「カズキ先輩にクラスメイトなんていたんですね」

トゲのある言い方をする沙希。
その目も鋭い。

「ほおう、中等部で有名な神宮司さんと付き合っているという話は本当らしいな」

木梨由香里は、誤解をしてる。

「カズお兄ちゃん、どういうこと?」
「そんなあ、付き合ってるなんて~~」

珠美、俺を睨むな。
沙希、コンニャクみたいにクネクネするな!

「付き合ってはいない。後輩だ」

「なんだあ、ただの後輩なんだ」
「カズキ先輩、このちびっ子シメていいですか?」

「「むむむむ」」

仲良く珠美と沙希はにらめっこしている。
そんな時、木梨さんが俺に話しかけてきた。

「あのさ、東藤和輝、今日の事はみんなに黙っててくれないか?」
「安心しろ、俺には話す相手がいない」
「そうかな?最近、結衣と楓と話してるだろう」
「何を言ってる?守秘義務は当然のことだ」
「ははは、何か面白いね、こんなんだったんだあ、東藤和輝は」

何がおかしい?

「さあ、珠美、帰るぞ」
「待って、先輩。私も行きます」

それから俺と珠美それと沙希は、仲良く家に帰りました。

珠美と沙希は、途中で何度もにらめっこしてたけど……






今日は、土曜日。
『FG5』のサブマネージャーの仕事の日だ。
何でも、ヨメイリ・ランドでミニコンサートをするそうだ。
夏に行われる武道館コンサートの前哨戦みたいなものだとマネージャーの蓼科美晴さんが言っていた。

そんなわけで、俺はヨメイリ・ランドに来ている。

「屋外なのか」

「そうよ!武道館とはスケールが違うけど、私達にとっては最初からクライマックスなの」
「リリカ、それ、どこかで聞いたセリフ」

メンバー内にアヤカのような突っ込み担当がいるのはありがたい。

「というわけでジュース買ってきて!」

リリカ達メンバーに言われて、いつもの通り売店でジュースを買いに行く。

しかし、今日は暑い日だ。
ジュースも多めに買っておこう。

テクテクと大きな空のバッグを持って1人で歩く。
周りはカップルばっかしだ。

そういえば今日は土曜日だったな……

そんなカップルばっかのところで男2人が仲良く会話しながらこっちに来た。
俺は、思わず店の裏に隠れる。
いや、隠れなければならなかったのだ。

「いや~~今日は絶好の『FG5』日和だよな~~」
「全く、最高だぜ。生だぜ、生リリカ様達を拝めるなんてなあ~~」

アホ丸出しの会話をしてるのは、同じクラスの新井真吾と南沢太一だった。

「そこの売店で何か買おうぜ!喉渇いたし」
「そうだな、店員さん綺麗だしな」

2人は売店にやってきて注文し始めた。

「すみませ~~ん、君の笑顔をひとつ下さい」
「お姉さん、大学生?バイト終わったら俺らと遊ばない?」

俺はこんなアホなクラスメイトと一緒の教室で勉強してるのか……

むすっとした顔で応対する女性の店員さん。
一生懸命働いている時にチャラチャラした奴がいい加減な話をしてきたら誰でも嫌だろう。

「ご注文は何ですか?」

店員さんは、不機嫌さ全開で応対する。

「俺、アイスコーヒー」
「じゃあ、ポップコーンとコーラで」

『少々、お待ち下さい!』

店員さんは汗をかきかき、仕事をしてる。
そんな様子を男子2人は、下品な顔して眺めていた。
お金を払って商品を受け取る2人。
店員さんに手を振って、どこかに行ってしまった。

スマホがなったので見てみるとリリカが「遅い」と催促のメッセージだった。
好きで遅くなったのではないと断固言いたい。

俺は、店舗の裏から出ようとするとイヤな気配を感じた。
それは、こちらに向かって歩いて来る男から発しているものだ。
その男は帽子を目深に被り、サングラスをして黒いマスクをしている。
見た目からは、わからないが、学校でいつも感じてる雰囲気にそっくりだ。

まさかな……

明らかに変装してますって感じの男は、売店の店員さんに「アメリカンドッグとコーラ下さい」と言ってお金を払った。
定員さんは明らかに不審者を見るような目付きで仕事を始めた。

「はい、こちらになります」

「どうも」

言葉少なめにそれらの商品を持ってどこかに消えて行った。

さっきの声、立花光希に似てたが……

いくら気配と声が似てるとはいえ、自意識超過剰な立花があんな格好をするはずはない。

俺は人違いと判断して、リリカ達のジュースを買って楽屋入りしたのだった。





「遅いじゃない。何してたの?」

リリカは、ご立腹のようだ。

「ジュースを買ってた」
「そんなのわかってるわよ。何で遅かったのか聞いてるの?」
「知り合いがいたから隠れてただけだ」
「何で隠れるの?サブのカズキが」
「必要なことだったんだ」

ご立腹のリリカは、面倒くさい。

「ほら、リリカ、それよりジュース飲もう。あんまりサブちゃんを虐めないの」

アヤカにとっては俺はサブちゃんらしい。

「それよりどう?今日の衣装は?」

俺がジュースを買いに行ってる間に着替えたようだ。

「ああ、いいんじゃないか」

「あのね~~サブ君。リリカは、サブ君が来る前、どうかな?おかしくないかな?カズキに変に思われないかな?とか言ってたんだからもっと褒めるべき」

流石、暴露癖のある天然系のカレン。
リリカは慌ててカレンの口を押さえた。

「カ、レ、ン、貴女は何を言ってるのかな、かな?」
「何も言ってないよ~~」

リリカの攻撃にめげないカレン。
図太い神経の持ち主でなくては、アイドルなんかできない、と誰かが言ってた気がする。

「今日は何曲歌うんだ?」
「新曲含めて5曲だよ」

そう答えたのは、ミミカ。
少し緊張しているようだ。

「そういえばサブ郎は、普段何してたの?」

ユキナにとって俺はサブ郎らしい。

「普通に高校通ってたよ」
「ねぇ、今度英語教えてくれる?受験もあるし結構ヤバいんだ」
「いいよ。わかる範囲なら」
「やったーー!これでステージに集中できるよ」

「そういえば、サブ君の連絡先知らない」

カレンがそういうと

「「「私もーー」」」

リリカ以外はみんな答えた。
俺はみんなと連絡先を交換した。
俺は初日に蓼科さんから聞いてたけど、これは内緒にしておこう。

あと、リリカだけは俺を睨んで見ていた。





コンサートが始まる前に、リリカに呼び出された。
何かモジモジしてるが……

「トイレならあっちだぞ」
「違う!おトイレぐらい1人で行けます~~う」
「じゃあ、どうしたんだ?」

「あの~~その~~この間なんだけど……」
「この間?何かあったか」
「ほら、カズキが入院してたでしょう。屋上で~その~」

リリカは額の傷が気になるようだ。

「この傷のことか、これは昔、いろいろあったんだ。その時の……」
「違う、傷じゃない。私が変なこと言っちゃったでしょう?」
「だから、この傷は……」
「そうじゃないの。あれは焦って言っちゃっただけだから。だから気にしないでね」

意味がわからんけど……

「わかった」

「じゃあ、私今日のステージ頑張るからね。カズキの為に歌うから」

そう言って楽屋に戻って行った。

歌はファンの為に歌わなきゃダメだ、とは言えなかった。



彼女達のミニコンサートは最高のパフォーマンスを観客に見せて終了した。
来ていたファンも大喜びだった。

歌い終わった彼女達は、コンサートではあまりかかなかった汗を吹き出した。
タオルと水分補給のためのジュース、それと冷却材を用意して俺は楽屋を出る。
蓼科さんが会場責任者との話を終えてやってきた。
部屋のドアの前に待機していた俺に、サムズアップをしてみんなのいる楽屋に入って行った。

みんなの汗が引かないと着替えができない。
ドアの前に待機してる俺にも中で慌ただしくしてる彼女達の様子が伝わってくる。

「あ~~パンツまでぐっしょりだよ~~」
「私も胸の谷間に汗疹ができそう」
「それって嫌味かな?」

「まだまだみんな成長期だから小さな事で気にしないでね~~」

これは蓼科さんだ。

「美晴さんはいいわよね~~大人の余裕って感じで」
「彼氏も惚れなおすほどのスタイルだもんね~~」
「バカ、アヤカ。美晴さんはこの間彼氏と別れたのよ」
「え~~なんで?」
「時間が合わなくてダメになっちゃったんだってさ」
「そうなんだあ、美晴さん、辛いよね。悲しいよね」

「さっさと着替えろ!このマセガキども!!」

これも蓼科さん?


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