インミシべルな玩具〜暗殺者として育てられた俺が普通の高校生に〜

涼月 風

文字の大きさ
79 / 89

第76話 日曜日は繁忙(3)

しおりを挟む



意外な場所で蓼科さんに見つかり、連れて行かれた高級和食店で豪華な松花弁当を食べてる俺と女子達。

女子はスマホを片手に写真を撮ったり、どこかのサイトにアップしてるのか、忙しい様子だ。

そんな最中、ひとつのメッセージが届く。
見るとミサリンこと瀬川美咲からだった。
~~~~~
「みんなでランチ。豪華でしょう?」

と書かれており、目の前にある松花弁当の写真が貼ってある。

「確かに、豪華だな」
~~~~~

と俺は返信しておく。
嘘はついてない。
豪華なものは豪華なのだ。
この場では嘘はついてないが、瀬川美咲との出会い事態が嘘みたいなものなのだから。

そんなハプニングもあったが、女子達は美味しいものが食べられて満足してるようだ。

デザートのアイスを食べ終わり、俺は少し別行動する事を伝える。
鴨志田さんと木梨は不機嫌そうな顔をしていたが、他の女子は勝手にどうぞ、みたいな感じだ。

そして、約束通り隣の部屋に入ると、俺の顔を見た途端、ちびっ子達みんなが『すっ』と立ち上がり、敬礼し出した。

え~~と、どういうことかな?
穂乃果の妹のカノカが恥ずかしがってるけど、やるの嫌なんだろうなぁ……

いつまでも敬礼してるので、ちびっ子達に声をかける。

「ご苦労、問題はないか?」

「「「「「「「「イエス、マイロード!」」」」」」」」

「そのマイロードって誰に対して?」

「「「「「「「「もちろん、東藤閣下であります」」」」」」」」

メイの奴……!!

「東藤君は閣下なの、いいわよね~~。私なんか軍曹よ、軍曹。なんでって言いたいわ」

蓼科さんが女軍曹……何か妙を得てる。
凄いな、ちびっ子達の感性は……

「とにかく楽にしてくれ、これからが本番なんだから」

そういう時、ちびっ子達の良い返事をもらいみんな席の着く。
まだ、本番までは時間がある。
ここで、俺達はミニ・コンサートの詳細を話し合った。





~樫藤穂乃果~

「陽奈殿との待ち合わせはこの辺りと聞いていたのですが……」

トウキョウ・ドームシティアトラクションの3分間しか戦えないヒーローの銅像の前で陽奈殿と待ち合わせしていた穂乃果は、まだ来ていない友人を探していた。

すると、アイスクリーム売り場の前に並んでいるテーブルのところで女性がお腹を抱えて苦しんでいる。
周りにいる男達はオロオロしていた。

「痛たたたた、お腹が~~盲腸があ~~」

お腹を抱えて痛みを叫ぶ女性に知り合いの男性が『おい、大丈夫か、しっかりしろ!』と声をかけている。
そしてさらに知り合いらしい男性が、スマホ片手に救急車を呼んでいた。

「そのご婦人は大丈夫ですか?」

穂乃果は、近場で起きたその事態を放っておけなかった。

「どうもお腹が痛いらしくて救急車呼んだから」
「しかし、困った。これではショーが……l

すると女性の知り合いの男達は穂乃果を見始めた。

「「ジーーッ」」

「あの、何か?」

異様な視線に戸惑う穂乃果。
元来人見知りな彼女は、こういう視線に慣れていない。

「君、時間あるよね?」
「頼む、お願いだ」

何かを必死に頼む若い男達。
その前で苦しんでいる女性。

穂乃果は、陽奈と待ち合わせをしてるので、断ろうとすると救急隊員がやってきた。
女性をストレッチャーに乗せて去って行く。
その場に残った男子2人は困った顔をしている。

「あいつ大丈夫か?」
「盲腸が、とか自己申告してたな」
「あれ、あいつ盲腸、この間してなかったっけ?」
「う~~ん忘れた。でも、あいつ腹痛くなる前アイスをガバガバ食べてたぜ」
「そう言えば『こんな暑い中やってられないわよ!』とか言ってたな」
「「…………」」

「そんな事より、君!頼むから少し時間をくれないか?」
「そうなんだ、ちびっ子達が楽しみにしてるんだ。お願いだから頼む」

元来、人見知りと人から頼まれたら断る事が苦手な穂乃果は『少しの時間なら」と了承してしまった。

了承してしまったのだ……



『この綺麗な地球を脅かす乱れた髪の毛も持ち主達から地球を守る5人の戦士が現れた』

ヒーローショーの会場にナレーションが流れた。
すると、正義の戦士が現れれる。

「キラりんレッド!」
「ツルりんグリーン!」
「ペカりんイエロー!」
「スベりんピンク!」
「ピカりんブルー!」

「「「「「ピカっと参上!ツルっと解決!キラレンジャー参上!」」」」」

『わ~~~~パチパチパチ』

会場にいる子供達は大喜びだ。

「いいかい、樫藤さん、乱れた髪怪人が現れたたらポーズを決めて戦闘だから、わかってるよね」
「ええ、このような些事、見事役目を全う致しましょう」
「う、うん助かるよ。バイト代弾むからね」

小声で話すレッドとピンク。
どうやらピンクの中身は穂乃果のようだ。

『お~~っと、怪人乱れ髪とロングソバージュが現れたぞ~~。5人の戦士は勝てるのか?そして、悪から地球を守れるのか?』

ナレーションが流れて戦闘に入る。
敵は怪人乱れ髪とロングソバージュ、そして取り巻きの縦髪ロール怪人軍団だ。

まずは、ピカりんブルーから戦いが始まった。
必殺技バリカンシェードで見事に怪人も髪の毛を七三分けにする。

次はスベりんピンクの番だ。
大きなハサミを持ち戦闘に入る。
穂乃果の武芸が合わさって、今日のピンクの動きは尋常ではない。
連続バク転からのムーンサルトキックに始まり、天井に付けられてる照明器具近くまでの高ジャンプ。そして、プールの高飛び込みのような回転を加えてからの電撃チョップ。
会場は大盛り上がりだ。

『ピンクつえーー!』

子供達の感性が響く。
すると動きをさらに加速させたピンクは、怪人ロングソバージュの髪を持ってたハサミで切りそろえ、おかっぱ頭にした。

『おーー、ピンク、ピンク、ピンク』

会場からはピンクコールが叫ばれている。

(むむ、あやつはカズキ殿にいつも絡んでる輩達では……)

ふと、会場を見るピンクは、何を思ったか持ってたハサミをたって見ていた男に投げつけた。

彼の髪の毛は、脳天部分の一部が見事に短くカットされていた。

慌てたのは、キラりんレッド。

「樫藤さん、マズいよ。お客さんにハサミ投げちゃ~~」
「ちょっと手が滑りました」
「どうする。後でクレームくるよ。絶対に……」
「それなら私のバイト代を彼に渡して下さい」
「いいの?」
「ええ、構いません」

その後、イエロー、グリーン、レッドが怪人と戦いショーはひとまず無事?終了した。

そして、ショーの終了後、嬉しそうにお金を受け取る男子高校生がいたらしい。





3分しかもたないヒーローの想像の前でウロウロしてる男女がいた。
2人とも美男美女で、行き交う人々はその姿に目て通り過ぎて行く。

「穂乃果ちゃん、遅いなぁ~~」
「連絡はつかないのか?」
「うん、スマホの近くにいないのかな?」
「約束したんだ。時期に来るよ。陽奈、アイスでも食べるか?」
「そうね、暑いもんね」

誰かと待ち合わせしてる2人の男女は、目の前にあるアイスクリーム屋さんに寄ってアイスを注文してテーブルに腰掛けた。

「そう言えばさっき、ここで倒れた女の人がいたようだな」
「そうそう、救急車で運ばれていったよね~~」

そんな会話が隣のテーブルから聞こえてきた。

「お兄ちゃん、もしかして穂乃果ちゃんじゃあ……」
「陽奈、落ち着け。まだそうだとは決まってない。少し店員さんに話を聞いてくるよ」
「う、うん」

待ち合わせ人が
救急車に運ばれていったのではないかと心配する神崎陽奈。
でも、周りの人は陽奈の心配とは別にその美貌に興味があるらしい。

「あの~~『HINA』ですよね。読モの?」

素の格好をしてると、近寄ってくる男子がいる。
それを苦手とする陽奈は、少し怯えていた。

「そうですけど、今、仕事中なんですみません」

そう断りを入れるのが日常化していた。

「そうですか?カメラマンとかいないじゃないですか?良かったらランチでもどうですか?」

ナンパ慣れしてる大学生のような人が絡んでくる。
兄の姿を探したけど、店員さんと仲良く話し込んでいた。

困ってると、突然、声が聞こえた。

『ピカっと参上!ツルっと解決!』

声が聞こえた途端、陽奈に絡んでいた男は、ぐらりと倒れ込んだ。
周囲の人達が、どうしたんだ?という感じで寄ってくる。
周りの野次馬の1人が救急車を呼んだらしい。

「すみません、熱中症みたいで……ええ……倒れてます」

一生懸命状況をオペレーターに説明する心優しい男性。
その間に、神崎陽奈は手を掴まれて別の場所に移動して兄と合流していた。
遠くからその光景を見る神崎兄妹と樫藤穂乃果の3人。

今日、アイスクリーム屋さんの前では2人目が救急車で運ばれて行った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...