インミシべルな玩具〜暗殺者として育てられた俺が普通の高校生に〜

涼月 風

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第86話 長い夜(2)

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「グーグ、早く行くのネ!」

俺の尻に拳で叩くメイには遠慮という言葉はない。
 
警察が包囲していたトウキョウ・ドームの包囲網をかい潜り、目的の排気ダクトを見つけた俺達は今、狭いダクトの中を進んでドームの中に侵入している。
「虫がいると嫌だからグーグ、先行くネ」と言われ俺が先頭を行くことになった。

絵面的には、最後尾がいいのだろうが……

そういうわけで俺はメイに尻を叩かれているのである。
因みに、穂乃果は最後尾である。

「これでも急いでるんだぞ。メイや穂乃果のように身軽じゃないんだ」

「男の言い訳はみっともなあるヨ。ほれ、ほれ!」

「指で突くな!場所が……ヤバイって!ヒャい……」

すると、下の方で男達の声が聞こえた。

『おい、なんか今、声が聞こえなかったか?』
『さあ、俺はわかんなかったぜ』
『なんか気色悪い声だったぜ』
『もしかして、アレが出たのか?』
『何がだ?』
『ここは、昔から幽霊が出るって噂されてたんだ。空襲で亡くなった人の霊が出るらしい』
『マジかよ。この部屋はもういい、次行くぞ』
~~~~~

見回りの奴らしい。
それにしても幽霊と間違えやがって!

「グーグ、ここで降りるネ」
「そうだな、少し待ってろ」

俺は、ダクトの繋ぎ目を外す。
そして、下も部屋の降りた。
続いてメイと穂乃果も降りてくる。
2人とも服に付いた汚れを叩いて落としていた。

「グーグ、ここからは別行動ネ。誰が1番倒したか競争するのネ」

まるで遊びに来たようにメイは言うが、

「わかりました。その勝負お受け致しましょう」

穂乃果も乗る気だった。

「まあ、いいけど怪我するなよ」

「「わかったのネ(了解であります。はい)」」

緊張感に欠ける2人だ。

メイと穂乃果は、先に部屋を出てどこかに向かった。
隣の部屋で『ギョエ~~』とか『ほえ~~っ』とか言ってるけど、気にしないでおこう。

爆弾が最初に爆発したひとつだけとは考えられない。
犯人を捕まえて吐かせるのが手っ取り早いが、どうせ遠隔起動なのだろうし、うっかりボタンを押されても困る。

まあ、一人づづ潰していけば済む話か……

俺もこの場所を出てスタンド方面に向けて足を運ぶ。
入場口には、武器を持った連中が見張っている。
俺は、敵を見つけ次第倒して行く。
一気に間合いを詰めて手刀を後頭部に叩き込み。
銃など使わずとも楽勝な相手だった。
持っていた自動小銃は、回収しておく。
弾薬を抜いてゴミ箱にしてた。

警察の突入はまだ無い。
人質となっている2万8千人の命がかかってる。
慎重になっているのだろう。

俺は、観客になりすましてスタンドで様子を見る。
武装兵隊が、95式自動小銃を持ってウロウロしている。

騒いでいる観客はいない。
おそらく、俺達がここに来る前のひと騒動あったのだろう。
空の薬莢が散らばっているし、怪我した人も何人かいる。

さて、鴨志田さん達は……と

一塁側スタンド後方に行くと、立花達男3人はいるが、女性達がいない。
近くに行くと立花達は何かを話していた。
~~~~~
「おい、どうすんだよ~~女子達連れてかれちまったぞ」
「真吾がいけねぇんだぞ、チケットタダでくれるって言うあの男の話に乗っちまうから」
「太一だって、ラッキーとか言ってたじゃあねぇか!」
「おい、やめろ、今はそれどころじゃねぇだろう?女子達を助けにいくぞ」
「光希、無理だって!お前だって殴られてさっきまで気を失ってたじゃねぇか、あいつらヤバイって、機関銃持ってんだぜ。俺達じゃ無理だよ」
~~~~~

鴨志田さん達はどこかの連れて行かれたようだ。
立花達も一応の抵抗はみせたものの兵隊にやられたみたいだな。

ま、こいつらは放っておいても大丈夫だろう。

俺は連れ去られた女子達を探しに出かけた。






「おい、さっさと歩け!」

「やめてよ!変なとこ触んな!」

武装した兵隊に腕を引っ張られて叫んでいるのは、瀬川美咲。
その後を2年C組の女子、鈴谷羅維華、木梨由香里、佐伯楓、鴨志田結衣の4人が兵隊に囲まれて歩いていた。

「こいつらだろ?ボスが言ってた女子高生ってのは?」
「ああ、手出しするなと言われてるが、味見ぐらいはかまわねぇよな」
「確かに、味見ならな、へへへへ」

ゲスな会話をしながら兵隊は女子達をじろじろ見ていた。
そんな視線を受けて、気持ち悪さと恐怖で女子達の顔色は優れない。

兵隊達は、地下にある管理者以外立ち入り禁止ゾーンに入る。
そして、女子達は控え室のようなところに連れて行かれた。

「さっさと入れ!」

「キャッー!痛いじゃない!」

部屋に、押し込まれる女子達。

「粒ぞろいのJKだぜ」
「ああ、楽しみだ」

兵隊達の目的は、己の欲望を満たすだけの行為だ。
抵抗しようにも、兵隊達が持っている自動小銃の銃口が女子達に向いている。

「やめてよ~~!」

最初の標的は瀬川美咲だった。
兵隊達に乱暴に床の押し倒された。

「お前は、俺達にはむかった。最初の生贄にしてやるよ。ありがたく思うんだな」

瀬川美咲は、この男達が現れた時、抵抗して反抗したようだ。
その為、他の女子達より扱いが酷かった。

「こういう生意気な女が次第に従順になっていくんだ。快楽には勝てねぇのさ」

自動小銃を向けて他の女子達を威嚇する男。
声を出そうにも、怖くて声も出ないようだ。
だが、目の前で友達が犯されそうになっているのを黙って見てられるほど、みんな薄情ではない。

「誰か、助けて~~!!」

ありったけの声を出して叫んだ鴨志田結衣。
その叫びを聞いて嘲笑する兵隊達。

「叫んだって誰もこねぇつーーの!あははは」

その時、その部屋のドアが開いた。

そこには、白い仮面をつけた男が立っていた。





「呼んだか?」

その白い仮面をつけた男はそう言った。
まるで、緊張感のない声だった。

「て、てめーーは、誰だ?」
「誰でもいいだろう?どうせ、お前達と会うのはこれで最後だし」
「この野郎!」

そう言った兵隊は自動小銃を白い仮面の男に向けた。
だが、破裂音と共にその男は倒れた。

そして、数発の破裂音が聞こえた。
女子達の短い悲鳴が聞こえたが、その僅かな時間に全ての兵隊は床で寝転がっていた。

「え、私達助かった?」
「う、うん、そうみたい……」

女子達は、部屋に入って来た白仮面の男を見る。

「「「あっ!」」」

その白仮面の男に反応したのは、鴨志田結衣と鈴谷羅維華そして瀬川美咲だった。

「あ、………」

鴨志田結衣が声を出そうとした時、男は口に人差し指を添えて頷いた。
鴨志田結衣は、それだけで状況を理解したようだ。
そして、その男に抱きついていた。

「怖かったよ~~怖かったよ~~」

その目からは涙が溢れ、小さな口からは嗚咽が聞こえた。

「なんで、貴方が……それと結衣とどんな関係なの?」

状況を理解できない鈴谷は、それでも結衣と同じくその白い仮面の男に近づいて抱きついた。

「助けに来てくれたんだあ、ありがとう、カズマ……」

鈴谷羅維華は、その白仮面の男をそう呼んだ。
男は少し困ったような仕草をしていたが、持ってた拳銃を腰に挟むと、抱きついていた2人をそっと引き離して、倒れている兵隊のところに向かい自動小銃を回収する。そして、弾倉を抜いて、そのままゴミ箱に捨てた。

みんなが落ち着いて来た頃顔の男は話し出した。

「外には警察がいる。俺が出口まで送って行くから付いてきてくれ」

女子達は、黙って頷いた。

部屋を出て、少し行くと正面から銃声を聞きつけた兵隊達が走って来た。
白仮面の男は、腰から二丁の銃を抜いて、その兵隊達に向けて発砲する。

その様子を見ていた女子達の反応は様々だ。
日頃、銃に慣れていない女子達は、その発砲音だけで身を竦めた。
だが、怖いながらもしっかりとその男を見ていた女子がいた。
鴨志田結衣だ。彼女の顔は、何かに見惚れるように顔を赤くしていた。

迫って来た兵士達を尽く撃ち抜いた白い仮面の男は、出入り口のところまでみんなを連れてやってきた。

だが、出入り口は、既に制圧済みだった。
横たわる兵隊達が口から泡を拭いている。

(これは穂乃果の吹き矢の毒かな?)

白仮面の男が小声で何かを言っていたが、女子達に聞こえていた様子はない。

「ここから、出ていけば警察が身柄を保護してくれるはずだ」

「あの?貴方は一緒に行かないの?」

鴨志田結衣は、心配そうに白仮面の男を見つめる。

「俺にはやる事がまだ残ってる」

踵を返して、戻る白仮面の男。
その背中に鈴谷羅維華が言葉をかけた。

「あの、カズマ、た、助けてくれてありがとう」

お礼を言ってだが、白仮面の男は、

「そんな名前の奴は知らない。さっさと行け!」

そう答えていた。

「うん、もう行くよ」

寂しそうに俯く鈴谷に、白仮面の男はつぶやいた。

「ああ、無事で良かった……気をつけてな」

その言葉を聞いた鈴谷羅維華の目からは綺麗な涙が溢れていた。


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