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番外編
お月見
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※ゼンの祖母は再録本書き下ろしに登場しました。
残業を終え会社から出ると、やけに明るいことに気づいた。見上げた夜空にはまん丸の月が浮かんでいて、今日が十五夜だったことを思い出す。
「そうか、今日、お月見だっけ……」
いつもより眩い月を見て、自然と恋人の顔が浮かぶ。団子もススキも用意していないけど、この月を一緒に眺めたいと思った。
そのためにも早く帰らなくては。
「春樹、お疲れ」
「ゼンさん?」
少し離れたところから呼ばれた名前に振り返る。まさに今思い浮かべていた恋人が、車の窓から顔を覗かせていた。
仕事中にも会ったというのに、喜びで疲れは吹き飛び、車に駆け寄る。
「どうしたんですか?」
「そろそろかと思って迎えに。帰らないで待っていようかとも考えたんだが、お祖母様から荷物が届くのを思い出してな。風呂も入れておいた」
予期せぬ嬉しさで頬を緩めながら助手席に乗り込む。シートベルトを締める俺を労うように、大きな手が頭を撫でた。
エンジンがかかった車はゆっくりと動き出す。
「ありがとうございます。……マホラさんから荷物?」
「あぁ、お祖母様らしい物が届いたよ」
「え? なんですか?」
マホラさんはゼンさんの祖母で、一度挨拶にお邪魔したことがある。ありがたいことに俺を気に入ってくれたらしく、何度か電話があったり、贈り物が届いていた。
何が届いたのか訊く俺に、ゼンさんはイタズラっぽく笑う。
「帰ってからのお楽しみだ。夕飯はまだ用意できていないんだが、何か買っていくか?」
「え、なんだろ……。あ、夕飯は寄って欲しい所があります」
「わかった」
届いた荷物を気にしながらも、ゼンさんに向かって欲しい場所を伝えた。
「久しぶりに食べたけどやっぱ美味しいなぁ」
「俺は初めてだが美味いな」
「え、本当ですか?」
カシャカシャと包み紙を鳴らし、手にしている物にかぶりつく。甘めのタレと卵の相性は抜群だ。
開いている窓から月を見上げながら、ファストフード店のハンバーガーを頬張った。
「ゼンさんとお月見できて嬉しいです。あとでマホラさんにもお礼の電話しないとですね」
「そうだな、春樹から電話があればお祖母様も喜ぶだろう」
マホラさんから届いたのは団子だった。上品な箱に入っており、ひと目で高価な物だとわかる。
ハンバーガーセットのドリンクとポテトと一緒に机にあるのが、ちぐはぐで少しおかしい。
「……来年は、マホラさんとも一緒に見れると良いですね」
「あぁ、そうだな。来年はお祖母様と計画してみるか」
先の約束をするのは、いまだに少しドキドキとする。
窺うように言った俺をゼンさんは優しく見つめた。毛に覆われた手がのばされ、俺の頬を撫でる。
「でもこうして好きに春樹に触れられないのは困るな」
「それは、まぁ、俺もそうですけど……」
甘ったるい視線を受け、俺の首は熱を持つ。
ハンバーガーを食べながら照れている自分がおかしくて、口元が緩んでしまった。
撫でていた手でそのまま、軽く頬をつままれる。くすぐったさに促されて、ついに俺は笑い声をあげた。
いつもより明るい夜のなか、幸せで満たされる。
残業を終え会社から出ると、やけに明るいことに気づいた。見上げた夜空にはまん丸の月が浮かんでいて、今日が十五夜だったことを思い出す。
「そうか、今日、お月見だっけ……」
いつもより眩い月を見て、自然と恋人の顔が浮かぶ。団子もススキも用意していないけど、この月を一緒に眺めたいと思った。
そのためにも早く帰らなくては。
「春樹、お疲れ」
「ゼンさん?」
少し離れたところから呼ばれた名前に振り返る。まさに今思い浮かべていた恋人が、車の窓から顔を覗かせていた。
仕事中にも会ったというのに、喜びで疲れは吹き飛び、車に駆け寄る。
「どうしたんですか?」
「そろそろかと思って迎えに。帰らないで待っていようかとも考えたんだが、お祖母様から荷物が届くのを思い出してな。風呂も入れておいた」
予期せぬ嬉しさで頬を緩めながら助手席に乗り込む。シートベルトを締める俺を労うように、大きな手が頭を撫でた。
エンジンがかかった車はゆっくりと動き出す。
「ありがとうございます。……マホラさんから荷物?」
「あぁ、お祖母様らしい物が届いたよ」
「え? なんですか?」
マホラさんはゼンさんの祖母で、一度挨拶にお邪魔したことがある。ありがたいことに俺を気に入ってくれたらしく、何度か電話があったり、贈り物が届いていた。
何が届いたのか訊く俺に、ゼンさんはイタズラっぽく笑う。
「帰ってからのお楽しみだ。夕飯はまだ用意できていないんだが、何か買っていくか?」
「え、なんだろ……。あ、夕飯は寄って欲しい所があります」
「わかった」
届いた荷物を気にしながらも、ゼンさんに向かって欲しい場所を伝えた。
「久しぶりに食べたけどやっぱ美味しいなぁ」
「俺は初めてだが美味いな」
「え、本当ですか?」
カシャカシャと包み紙を鳴らし、手にしている物にかぶりつく。甘めのタレと卵の相性は抜群だ。
開いている窓から月を見上げながら、ファストフード店のハンバーガーを頬張った。
「ゼンさんとお月見できて嬉しいです。あとでマホラさんにもお礼の電話しないとですね」
「そうだな、春樹から電話があればお祖母様も喜ぶだろう」
マホラさんから届いたのは団子だった。上品な箱に入っており、ひと目で高価な物だとわかる。
ハンバーガーセットのドリンクとポテトと一緒に机にあるのが、ちぐはぐで少しおかしい。
「……来年は、マホラさんとも一緒に見れると良いですね」
「あぁ、そうだな。来年はお祖母様と計画してみるか」
先の約束をするのは、いまだに少しドキドキとする。
窺うように言った俺をゼンさんは優しく見つめた。毛に覆われた手がのばされ、俺の頬を撫でる。
「でもこうして好きに春樹に触れられないのは困るな」
「それは、まぁ、俺もそうですけど……」
甘ったるい視線を受け、俺の首は熱を持つ。
ハンバーガーを食べながら照れている自分がおかしくて、口元が緩んでしまった。
撫でていた手でそのまま、軽く頬をつままれる。くすぐったさに促されて、ついに俺は笑い声をあげた。
いつもより明るい夜のなか、幸せで満たされる。
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