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魔法の授業

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 青白い光がぼんやり灯る。光はどんどん浮上していき、天井に到達しそうになったところでゆらめいた。すぐに眩さが消え、広い部屋は自然光だけになる。

「この前より腕を上げましたね、殿下」
「以前よりましにはなったが……あとどれほど鍛錬すれば、そなたのようになれるのだろうな」

 光が消えた天井付近を見つめる少年は、悔しさで眉根を寄せる。あどけなさが残る横顔に微笑ましく思った。

「本日の勉学はお終いとしましょうか。また明日、他の魔法も試してみましょう」
「あぁ……明日も頼む、ヒロナ」

 隣に並ぶ少年がこちらを見上げる。顔の角度を変えたことで艶やかな金髪が揺れた。

「そういえば……ヒロナが城に仕えてもうすぐ一年になるな」
「早いものですね。この国での日々は楽しく、あっという間でした」
「私もヒロナが来てから有意義な時間を過ごせている。これからも私も国も、賢者殿の知識を頼ることは多くあるだろう」
「身に余るお言葉です」

 胸に手を置き、深くお辞儀する。自分の知識を頼られるのは嬉しく、感慨深かった。元々は、この世界の生まれではない、よそ者だから。
 六年前のある日、気づけば僕は見知らぬ街にいた。見慣れた日本ではなく、西洋に近い景色や人々のなか、一人ぼっちだったのを思い出す。
 最初は混乱したし戸惑いが大きくて、当然この世界を受け入れられなかった。夢なんじゃないか、どしたら元に戻れるのか、毎日そればかり考えていた。知らない土地に一人で放り出され、どうしようもなく心細かった。
 しかし、元の生活を思い返してみると、会社と家の往復でこれといった楽しみもない日々。ただ時間を淡々と浪費していたのに気づいた。
 それからは新たな人生が始まったのだと割りきり、この世界の生活を楽しんでいる。今では充実した日々を送っていた。
 世界を知るために五年間旅をし、この国に賢者として迎え入れられてもうすぐ一年が経つ。様々な国を巡り蓄えた知識や、この世界に来た時に扱えるようになった魔法を、国のために活かすという役目が今はあった。
 特に回復魔法を扱える人は少ないらしく、魔法での治療や、そのやり方を伝えていくことにも期待されている。

「私もヒロナほどの魔法を扱えたら父上の役に立てるのだが……」
「上達していらっしゃるのですから、焦らず、少しずつ伸ばしていきましょう」

 顔を上げた僕に金髪の少年――ロズア王子は頷く。賢者として知識や魔法を役立てる他に、こうして王子の家庭教師のようなことも任されていた。他国の情勢、歴史や地理、魔法の技術等を教えている。

「では、本日は失礼致します」
「……そうだ、ヒロナ。ルーフスに部屋に入るよう伝えてくれないか?」

 王子の口からでた名前に、一瞬、体が固まる。すぐに全身に広がる緊張が体を硬くさせた。しかし断るわけにもいかず、頷く。

「……承知しました」

 もう一度お辞儀し、広い部屋を後にする。大きな扉を閉めると少し息を吸った。扉のすぐ脇に立つ人物を見上げる。
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