summer summer!

たがわリウ

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本編

08

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返却期限の日付を確認しながら歩く。二週間後の日付が記された紙を本に挟むと、周りをきょろきょろと見渡した。本棚の間に茶髪を探す。

「明、お待たせ」
「あ、成海くん。早かったね」

明は入口付近の本棚のそばに立っていた。日差しのなか、本に囲まれる明は立っているだけで眩しい。
夏休みの図書館はほとんど人がいないため、明はサングラスを外していた。俺に向いた顔が、微笑みを広げる。

「もういいの?」
「あぁ。付き合わせて悪かったな」
「ううん。俺がついてきたんだし」

小声で話しながら、図書館の自動ドアをくぐった。外は明るすぎるくらい晴れていて、目を細める。
涼しい冷房の空気がなくなり、むわっとした熱に包まれた。隣で明が帽子を被り、サングラスで顔を隠す。

「ここが成海くんの通ってる大学かぁ」
「明がいると変な感じがするなー」
「一緒に授業受けてみたかったな」
「明が教室にいたら授業どころじゃないだろうな。オーラやばいし」
「え? 俺、オーラあるの?」
「え? 気づいてねぇの?」

変装しているとはいえ、明は十分目立っていた。夏休みでほぼ人はいないけど、すれ違う生徒は絶対に明を見ていく。
注目を浴びているにも関わらず、明は呑気にキャンパスを眺めているから、俺の方がハラハラとした。
明にキャンパス内を案内できたら良かったけど、人にバレてしまうのが怖くて、図書館から大学の門へと直行している。
隣を歩く明が、ふっと息を吐いて笑った。

「成海くんとこうしてまた会えて、ほんとに嬉しいなぁ」
「……なんだよ、改めて」
「うん。なんか改めて伝えたくて」

黒いサングラスに隠れた瞳は見えなかったけど、幸せそうな笑顔が向けられているのはわかった。
会えて嬉しいなんて普段言われることのない俺は、どう返せばいいかわからなくなる。ただ、俺も同じだと伝えるために、頷いた。

「あ、そうだ。ねぇ、成海くん、ここって知ってる?」
「ん?」

明が差し出したスマートフォンには、マップが表示されている。場所は何度か行ったことがある駅の近くだった。

「あぁ、何回か買い物に行ったことある。結構人多いとこ」
「行ったことあるんだ」

明がモデルを務めたブランドの商品を買いに、とは言えなかった。そこの駅近くにはショップが固まっているから、買い物に来る人が多い印象だ。

「明日ここで撮影でさ。時間空いてたら、成海くん来てくれないかなと思って」
「え、俺、行ってもいいの?」
「うん、家族とか親しい人ならいいって言われてる」

家族、というワードに、俺の体は反応する。そう言って貰えるのは嬉しいことのはずなのに、どうしてか胸を掻きむしりたくなった。
それと同時に、明の撮影を間近で見られるのかと、信じられない気持ちになる。

「まじか……明日バイトだから、終わったら行くな」
「よかった。興味なかったら無理しなくてもいいんだけど……」
「いや、ある。ぜんぜんある」
「そう?」

ファンとしてこれ以上ない誘いに、俺はじりじりと喜びを募らせる。なんで明日バイト入れたんだよ、と過去の自分に怒りが生まれた。撮影に誘って貰えると知っていたら、絶対にシフトを入れなかったのに。
思いがけない大きな楽しみに俺は、気づけばさっき抱いた違和感も忘れてしまっていた。
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