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しおりを挟む「……リオール……」
数日経って釈放されたアルバはリオールの顔を見て駆け寄ってきた。存在を確かめるように何度も何度もその腕でキツくリオールを抱き締める。リオールは涙を抑えることができず不安だった気持ちが解放されたように泣いた。
「……っ馬鹿馬鹿馬鹿、旦那様なんて嫌いです、馬鹿」
「悪かった……、悪かった本当に」
髪を撫でられる。短くなった髪は項を中途半端にしか隠さない。リオールはぐちゃぐちゃになりながらアルバの背中を離さないようにキツく抱き締めた。
王子とその隣には聖人がいて、駆け出したアルバの後ろからついてくる。フォスとクロードは頭を下げるが、王子は不要だと手を軽く振る。
「フォス殿。国王陛下は貴方に功績があるとして望むものを与えるようにと俺に命じた。貴殿は、アルファとオメガの番契約の解除の方法を探していたと聞く。必要とあらば与える、と」
フォスは驚いたような顔をしている。そして傍にいたクロードを見た。クロードは困ったように眉を下げ、フォスに伝える。
「いいよ俺は。お義母さんに支配された人生が嫌だったんだよね。自分で鎖をちぎったんだから、最後の一個もちゃんと解いておきなよ」
クロードは笑った。オメガである鎖、番がいることによっての制約。継母に強制された最後の一つが、番であるクロードの存在だった。フォスは怒り出した。
「いつもお前はそうだな……っ、ただ他人に支配されて、好き勝手にされて、悔しくは」
「ただ……、ただ。俺がフォスを好きなことは変わらないよ。それをいくらやめろと言われても無理。支配されてるってフォスは言うけど、確かに立場もあって好きに発言もできないし好きなところに行けるわけでもない。でも俺はそれを支配だと思ってない。心は自由に生きてる。誰にも囚われていない。お前のことが好きだよ」
その真摯な訴えに、フォスは言葉を失った。顔を百面相のように変えて、最善を探っている、そんな表情だった。
「この前のアレは、惚れ直したよ。あの場で誰よりも悪役だった」
「はあ? 私は正義を成したんだ。悪役であるものか」
「いいや。誰よりも楽しそうに笑っていたな」
王子にそう言われてフォスは黙る。そして唇に指を当てては離し、考えに耽る。
「即答できないくらいには俺に情がある? それは嬉しいよ、フォス」
「あっ……、たりまえだ! 私が番解消で一番楽なのはお前を殺すことだ! それをしていないんだ、分かれよ」
「そんなの、分からないよ誰にも。言われないとさ」
クロードが嬉しく微笑むので、フォスはふんと鼻を鳴らし報酬を保留とした。王子は「いいのか」と言ったが、もう確認してくださるなとフォスは苦々しい顔で言っていた。
「して、今後はどうするおつもりか」
「うちの父は、今回のことを重く捉えて引責のため隠居するそうなので、公爵家を継ぐ跡目がいなくなりましてそこにすっぽりと。うちの番は伯爵家の次男なので跡目を継ぐことはないでしょうし」
「甲斐性なくて悪かったよ」
クロードとフォスが顔を見合わせる。そしてリオール達の元へと近づいてきた。リオールはアルバの腕の中で見る皆の嬉しそうな顔が嬉しくて、微笑んでいた。
「帰ろう、アルバ」
「ああ」
アルバはリオールを離すことはなかった。子どもが腹にいると、フォスの口から何の感動もなく言われた時にアルバは動揺し、リオールを歩かせない方がいいのではないかと抱きながら移動させようとしていたところだった。
リオールの先が分からない人生は今から始まる。ただ一つ言えるのは、どうあってもアルバと生きていくことだけであった。
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