Starlog ー星の記憶ー

八城七夜

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Strategy

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千歳と千尋の戦いが終わっても、鬼恐山内の屋敷では戦いが続いていた。

万歳と魁が戦う傍らで万尋は2人の戦いに邪魔が入らぬように手に持っている日本刀で魁の部下達を峰打ちで打ち倒していく。

「万歳!あんま無茶するなよ!?」

「無茶なんぞここに来てひとつもしとらんわ!」

万尋の言葉に言い返す万歳だが、昨日負った傷が痛むのか歯を食いしばっている。万歳自身は動いてなくとも加具土命かぐつちを顕現させ、戦わせるのにも気力を使っている。

その加具土命が放つ攻撃も魁は軽々と避け、防いでいく。時折魁が万歳に気遣いの言葉を投げかけるも逆にそれが万歳の怒りを買い、攻撃は激しくなっていく。

が、ついに万歳の身体にも負担がかかり過ぎたのか万歳は地面に片膝をつき、加具土命もただの炎状の魔力へと姿を変えてしまう。その様子を見た魁は『やれやれ』といったふうに小さく笑みを浮かべ、万歳の前に立つ。

「ご隠居、もういいでしょう。ただ単に以前の有間家に戻るだけです、なにがあなたをそこまでさせるのです?」


「決まっているだろう。千尋が帰ってきた時、儂らが迎えんでどうする?お前たちではなく、儂らが千尋を迎えてやらねばな。」


「・・・千尋さんが帰ってきたとして、それは我々の同胞である千尋さんです。あなたたちの元へ帰るわけではありません。」


魁のこの言葉に、今度は万歳が小さく『ふっ』と不敵の笑みを浮かべる。

「お前は前から千歳を侮っていたな、今回のこともそうだ。千歳に千尋を止められるわけがないと、そう思っているのだろう?」

「その通りです、千尋さんは初代様の再来とまで言われた逸材。そのような方が長門 千歳ごときに遅れを取るなど有り得ません。」

魁が言葉を言い終えた時、万歳と魁の間に青白い雷を纏い美琴を抱えた千尋が飛来し、着地する。


「お疲れ様でした、千尋さん。思っていたより時間がかかっていたようでしたが、この場を早急に片付けてしまえば・・・」

美琴を地面に下ろす千尋に魁がにこやかに声をかけるが千尋はただ黙って魁を睨んでいる、その目付きに魁は違和感を覚え、途中で言葉を止める。

「千尋さん、あなたまさか・・・」

魁が困惑の表情を浮かべながら千尋に問いかける、魁の珍しい表情を見た千尋がニヤリと笑うと人型の黒い影が万歳の横に飛来し、着地する。そしてその黒い影が晴れると、そこには千歳の姿があった。

「長門、千歳・・・!」

忌まわしいものを見るかのような目付きで千歳を見ながら魁が千歳の名前を呼ぶ、そしてすぐさま千尋を睨む。

「千尋さん、これはどういうことでしょう?まさか忘れているわけではありませんよね?」

魁がそう言いながら右手を上に掲げようとすると千尋は瞬時に建御雷を纏いそのまま魁に拳を突き出す。魁は両手に魔力を纏わせ、千尋の正拳突きを防ぐ。

「忘れるわけがない、だからその合図をする隙を与えないうちにアナタを倒す。それでこの戦いは終わる。」

「ふむ、いいでしょう。一度、力の差というものを教育して差し上げます。」


魁は一旦距離を取り魔力を纏う、千尋も美琴を気にしながら戦闘態勢をとる。一方で千歳と少し遅れてきた千悟は周りを見渡している。

ーーーーー
ーーー


戦いが終わったあと、千歳は千尋に尋ねていた。

「それで、榊先輩に憑いてる異形はどうする?」

異形であるがゆえに影で姿を捉えられると思っていたのだが、隠匿性の高い特殊な魔力を纏っているのか千歳の霊写しの眼でも見えたのはほんの一瞬、姿を現す時だけのようだ。

「長門の霊写しでも視えない異形、厄介この上ないな・・・」

千悟も顎に手を当て考えていると、なにか考えていた千尋がひとつため息をつき千歳と千悟の顔を見る。

「千歳、千悟。ひとつだけ考えがある、だけどこれはお前たちが重要な作戦だ。力を貸してくれるか?」

千尋にこう問われ、千歳と千悟はお互い訝しげな表情で顔を見合わせる。そして二人で千尋の肩を叩く。

「当たり前だろそんなこと。」

「お前の嫁さんの命がかかってんだ、俺らに出来ることならやってやるさ。」

二人の言葉に千尋は頭を下げ、礼を言うと二人に作戦を説明する。

・・・・・
・・・


「なるほどな・・・。」

「たしかに、俺らにしか出来ない事かもしれねぇな。けどすげぇ、なんつうか・・・。」

千悟が気を遣い言葉を選んでいる、千尋は作戦を異形に聞かれないように離れてもらっている美琴を見つめる。

「あぁ、デカい賭けだ。下手すれば美琴さんが危ないしな、けど・・・お前らなら出来るだろ?」

そう言いながら千尋が千歳と千悟の方へ向き直しニヤリと笑う、その様子を見て千歳と千悟も呆れ気味に笑う。

「あぁ、任せとけ!」

「きっちり終わらせて、魁の野郎をぶっ飛ばそうぜ!」


三人はお互いの顔を見合わせて頷くと拳を合わせる。
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