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Effort
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開賀 進が天翁から与えられた研究所、そこで鬼頭は千晶との戦いに向けて進から課せられたトレーニングをこなしていた。
あの日、公園から帰還するとまず鬼頭は血液を採取され翌日からはトレーニングの日々が続いていた、最初にトレーニングのメニューを渡された際に言われたことはひとつ、"トレーニング中は魔力を身に纏うこと。"それだけだった。
ボクシングや総合格闘技も習得し以前のような型のない雑な格闘術から一変して動きも洗練された、しかし肉体や体力は強化され日々強くなっている実感を得ていても鬼頭は不安と焦燥感を拭えずにいた。
そんなある日、鬼頭は進がいる研究室の扉をノックした。
「開賀さん、いるか?」
「・・・あぁ、鍵は開いている、入ってくれ。」
鬼頭が扉を開け研究室に入ると進は机に向かって立っており、一旦手を止めると入口の前に立っている鬼頭に声をかけた。
「前にも言ったが鬼頭くん、私のことは"博士"と呼ぶように。それで、今日のメニューはこなしたかね?」
鬼頭に尋ねたあと進はなにやら実験をしているのか目線を机の上に移し時折なにかをつぶやいている。
「あぁ、だけど毎日こんな普通のトレーニングだけで勝てるのか?」
「君のデータは日々観察している、成果は私のイメージを上回っているよ。なにも不安を感じる必要はない。」
自信ありげに話す進だったが鬼頭は以前あの公園で千晶と戦い、その底知れぬ強さを見せつけられている。
「けどよ、実際戦ってみてわかったんだ。アンタの息子、開賀 千晶は・・・天才だ。だからもっと魔術とかを───」
進は鬼頭の方へ振り向き手で制止し、鬼頭の言葉を遮った。
「天才・・・そう、確かに私の息子は天才だろう。そして君は魔力を扱えるだけの凡人だ、そこに間違いはない。」
『自分は凡人である。』その自覚がある鬼頭は進の言葉にただ俯いた。
「だからと言って、凡人が天才に勝てないという道理はない。ある偉人の名言に『天才とは、1%のひらめきと99%の努力である。』というのがある。ならば私たち凡人は100%の努力を以て天才に立ち向かおうじゃないか。」
そう言って進は鬼頭のもとへ歩み寄ると彼の肩を手でポンと叩いた。
「"長所を伸ばすこと"も立派な努力さ。君は格闘術に秀でている、それを極めれば十分に勝機はある。」
そして進は自身が実験を行っていた机を見た、それにつられ鬼頭も机を見ると、机の上には様々な実験器具や薬品、脇にはビッシリとメモ書きされたノートとタブレット端末が置かれている。
実験器具の中には試験管が2本あり、1本には赤い液体、もう1本には赤黒い液体が入っていた。
「そうだな・・・後日、また来てくれ。私の自信の根拠を証明しよう。」
「・・・わかった、そもそも俺がこの戦いに参加出来たのはアンタのお陰だ、アンタを信じるよ、"博士"。」
こうして鬼頭は進を信じることを決めた、そしてその後日、進が伊邪奈美命に説いた科学が起こす奇跡を、鬼頭は身をもって知る。
─────
───
─
「坊ちゃん!」
岩の壁の裏に隠れていた桐江が顔を覗かせ心配そうな表情で千晶を見つめる。
「大丈夫だ桐江、少し気が緩んでただけだ。」
千晶は立ち上がり桐江を心配させまいと微笑む、そして黒い闘気を纏い先程とはまるで様子が変わった鬼頭を見てなお千晶の表情から笑みが消えることはなかった。
「黒い闘気、アレが親父の発明品の効果か・・・」
そうつぶやき千晶が右手の杖で地面を叩くと背後に無数の岩の礫が空中を漂う、そして千晶が杖をひと振りするとそれらは一挙に鬼頭へ射出される。
先程とは桁違いのスピードで岩の礫を躱し、千晶との距離を詰めた鬼頭は黒い闘気を纏った拳を放つ。避ける素振りを見せない千晶の前に砂の壁が現れ鬼頭の拳を防いだ、しかし岩の壁ほどの堅固さはなく鬼頭の拳は砂の壁にめり込みながら千晶に迫る。
千晶は再び杖で地面を叩くと鬼頭の周囲を無数の岩の礫が囲い込む、鬼頭はその場から退避しようとしたがいつの間にか足下の地面が砂で覆われており両足を砂で拘束されていた。
そして千晶が杖を振ると岩の礫が鬼頭めがけて襲いかかる、鬼頭は纏っている黒い闘気を膨張させるとマントのように靡かせ、岩の礫をすべて弾き飛ばした。
その風圧に足下の砂も吹き飛び拘束から逃れた鬼頭は大地を蹴り一瞬で千晶の背後へ回り拳を放つ、ギリギリ砂の壁で守ったが予想外のスピードに千晶は驚きを見せた。
そこから鬼頭の猛攻は始まった。
千晶は目で追い、砂の壁で守るのがやっと、防戦一方である。
そして再び視界から鬼頭が消え、千晶は背後を振り返るとそこで鬼頭が拳を構えていた。千晶が砂の壁で守ろうとすると鬼頭はニヤリと笑い、一瞬で千晶の正面へ回り込み殴り飛ばした。
(手応えあり、あの天才を俺が圧倒している・・・!)
鬼頭は笑みを浮かべ身体が武者震いをする、離れて見ている進も自身のイメージ以上の成果に満足気な笑みを浮かべた。
あの日、公園から帰還するとまず鬼頭は血液を採取され翌日からはトレーニングの日々が続いていた、最初にトレーニングのメニューを渡された際に言われたことはひとつ、"トレーニング中は魔力を身に纏うこと。"それだけだった。
ボクシングや総合格闘技も習得し以前のような型のない雑な格闘術から一変して動きも洗練された、しかし肉体や体力は強化され日々強くなっている実感を得ていても鬼頭は不安と焦燥感を拭えずにいた。
そんなある日、鬼頭は進がいる研究室の扉をノックした。
「開賀さん、いるか?」
「・・・あぁ、鍵は開いている、入ってくれ。」
鬼頭が扉を開け研究室に入ると進は机に向かって立っており、一旦手を止めると入口の前に立っている鬼頭に声をかけた。
「前にも言ったが鬼頭くん、私のことは"博士"と呼ぶように。それで、今日のメニューはこなしたかね?」
鬼頭に尋ねたあと進はなにやら実験をしているのか目線を机の上に移し時折なにかをつぶやいている。
「あぁ、だけど毎日こんな普通のトレーニングだけで勝てるのか?」
「君のデータは日々観察している、成果は私のイメージを上回っているよ。なにも不安を感じる必要はない。」
自信ありげに話す進だったが鬼頭は以前あの公園で千晶と戦い、その底知れぬ強さを見せつけられている。
「けどよ、実際戦ってみてわかったんだ。アンタの息子、開賀 千晶は・・・天才だ。だからもっと魔術とかを───」
進は鬼頭の方へ振り向き手で制止し、鬼頭の言葉を遮った。
「天才・・・そう、確かに私の息子は天才だろう。そして君は魔力を扱えるだけの凡人だ、そこに間違いはない。」
『自分は凡人である。』その自覚がある鬼頭は進の言葉にただ俯いた。
「だからと言って、凡人が天才に勝てないという道理はない。ある偉人の名言に『天才とは、1%のひらめきと99%の努力である。』というのがある。ならば私たち凡人は100%の努力を以て天才に立ち向かおうじゃないか。」
そう言って進は鬼頭のもとへ歩み寄ると彼の肩を手でポンと叩いた。
「"長所を伸ばすこと"も立派な努力さ。君は格闘術に秀でている、それを極めれば十分に勝機はある。」
そして進は自身が実験を行っていた机を見た、それにつられ鬼頭も机を見ると、机の上には様々な実験器具や薬品、脇にはビッシリとメモ書きされたノートとタブレット端末が置かれている。
実験器具の中には試験管が2本あり、1本には赤い液体、もう1本には赤黒い液体が入っていた。
「そうだな・・・後日、また来てくれ。私の自信の根拠を証明しよう。」
「・・・わかった、そもそも俺がこの戦いに参加出来たのはアンタのお陰だ、アンタを信じるよ、"博士"。」
こうして鬼頭は進を信じることを決めた、そしてその後日、進が伊邪奈美命に説いた科学が起こす奇跡を、鬼頭は身をもって知る。
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「坊ちゃん!」
岩の壁の裏に隠れていた桐江が顔を覗かせ心配そうな表情で千晶を見つめる。
「大丈夫だ桐江、少し気が緩んでただけだ。」
千晶は立ち上がり桐江を心配させまいと微笑む、そして黒い闘気を纏い先程とはまるで様子が変わった鬼頭を見てなお千晶の表情から笑みが消えることはなかった。
「黒い闘気、アレが親父の発明品の効果か・・・」
そうつぶやき千晶が右手の杖で地面を叩くと背後に無数の岩の礫が空中を漂う、そして千晶が杖をひと振りするとそれらは一挙に鬼頭へ射出される。
先程とは桁違いのスピードで岩の礫を躱し、千晶との距離を詰めた鬼頭は黒い闘気を纏った拳を放つ。避ける素振りを見せない千晶の前に砂の壁が現れ鬼頭の拳を防いだ、しかし岩の壁ほどの堅固さはなく鬼頭の拳は砂の壁にめり込みながら千晶に迫る。
千晶は再び杖で地面を叩くと鬼頭の周囲を無数の岩の礫が囲い込む、鬼頭はその場から退避しようとしたがいつの間にか足下の地面が砂で覆われており両足を砂で拘束されていた。
そして千晶が杖を振ると岩の礫が鬼頭めがけて襲いかかる、鬼頭は纏っている黒い闘気を膨張させるとマントのように靡かせ、岩の礫をすべて弾き飛ばした。
その風圧に足下の砂も吹き飛び拘束から逃れた鬼頭は大地を蹴り一瞬で千晶の背後へ回り拳を放つ、ギリギリ砂の壁で守ったが予想外のスピードに千晶は驚きを見せた。
そこから鬼頭の猛攻は始まった。
千晶は目で追い、砂の壁で守るのがやっと、防戦一方である。
そして再び視界から鬼頭が消え、千晶は背後を振り返るとそこで鬼頭が拳を構えていた。千晶が砂の壁で守ろうとすると鬼頭はニヤリと笑い、一瞬で千晶の正面へ回り込み殴り飛ばした。
(手応えあり、あの天才を俺が圧倒している・・・!)
鬼頭は笑みを浮かべ身体が武者震いをする、離れて見ている進も自身のイメージ以上の成果に満足気な笑みを浮かべた。
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