Starlog ー星の記憶ー

八城七夜

文字の大きさ
72 / 93

Ancestor

しおりを挟む
 千尋ちひろ天翁てんおうの同志であるかいの案内で空間の裂け目に足を踏み入れ、その先の世界で鎧の男が腕を組み、仁王立ちで千尋を待ち構えていた。

 魁は二人にお辞儀をするとどちらに言ったのか、『ご武運を。』という言葉を残してこの場から去っていった。二人は少しの間お互いに顔を見合わせていたが鎧の男が口を開いた。

「小僧、名は?」

「千尋です、有間ありま 千尋ちひろ。」

 千尋の名を聞き、鎧の男は意味ありげに『ふむ』と声をあげた。

「あの木刀の小僧は長門ながとだったか、なぜ有間の御前が長門の小僧と友になっている?」

「二代目の時に生じた有間と長門の対立関係は俺たちの父の代で解消されました、アナタの言っている長門ながと 千歳ちとせと俺は親友です。」

 "親友"───この言葉に反応して鎧の男が眉をピクっと動かした。

「そして、俺も千歳も次期当主です、お互いが当主になった時も俺たちの友情は変わりません。」

 この千尋の言葉に鎧の男が疑念を抱き、問いかける。

「御前たち二人、どちらかが道をたがえた時、果たして同じことが言えるか?」

「───俺は一度、道を外れそうになったことがあります。」

 鎧の男の問に千尋は間を置いて語りはじめた、魁の計画した有間家の建て直し、その騒動の中で千尋は魁の思惑で古くから有間と対立関係にあった長門の次期当主である千歳と戦った。

 結果として戦いは引き分けに終わり、二人の友情は有間と長門の友好関係の象徴として現在も揺らがぬものとなっている。

「その時に俺を今の道に連れ戻してくれたのは千歳です。もしアイツが道を外れそうになった時は、今度は俺が連れ戻します。」

 自信に満ちた表情で答えた千尋を見た鎧の男は満足気にうっすらと笑みを浮かべた。そして───

「いらぬ杞憂だったようだな・・・」

 と、千尋には聞こえない小声でつぶやいた。

「よかろう、御前の"力"がその意志にふさわしいものかどうか、御前たち有間家の創設者であるこの有間ありま 一陽いちよが見定めてやる。」

 そう言って一陽は『大地を焼いた』と伝えられる紅蓮の炎を身に纏うと辺りに熱風が吹き荒れる、その姿は加具土命カグツチを身に纏っているようであった。

 千尋も建御雷を身に纏いファイティングポーズをとる、一陽は構えをとる様子を見せずまるで『かかってこい』と言わんばかりに笑みを浮かべている。

 次の瞬間、千尋の姿が消え、バチッ!という雷鳴と共に一陽の眼前に現れると拳を突き出した。一陽は身を翻して回避すると蹴りを繰り出し、千尋は刀の一振りのような鋭い蹴りを躱すと後方へと大きく飛び退いた。

(千歳より速く俺の動きに対応してきた、なんて反応の速さだ。)

 鬼恐山での戦いにおいて千歳は霊写たまうつしの眼という長門家の人間が発現する魔眼の視力によって雷神を見に宿した千尋の速度に反応することができたのである。しかし有間家の人間であり魔眼を持たないはずである一陽は千尋の動きに即座に反応し、回避しながら反撃までしてきたのだ。

 千尋はひとつ深呼吸をすると体勢を立て直す、一陽から攻撃を仕掛けてくる様子はなく、まるで稽古をつけているかのように千尋の攻撃を待っている。

「さて、まずはアナタに本気を出させるところからってとこですかね、初代様。」

「俺の本気か・・・出させてみろ。」

 千尋の挑発ともとれる言葉に一陽は『ふっ』と小さく微笑んだ、千尋が意識を集中させると身体に纏っている雷が青から紫へと変わっていき、目の色も赤紫色へと変色した。

 そして千尋の纏う紫電は仏のような形状へと姿を変えた、その変貌ぶりを見た一陽は感嘆の声をもらした。

─────
───


 書物庫にて鎧の男が初代有間だということを突き止めた千尋は父親である道雪どうせつと共に鬼恐山の屋敷にて"雷切らいきり"を習得するための修行に励んでいた。

 元々格闘術に長けていたこともあり、あっという間にコツを掴んだ千尋は短期間で雷切を習得した。

「さすが、やっぱり御前は天才だな千尋。僕が教えなくともひとりで会得していたんじゃないか?」

 息子の才能に道雪は感嘆の声をあげた、千尋の周りには雷切によって両断された岩がいくつも転がっている。

「そんなことはない、父さんの教え方が丁寧だったからだよ。」

「そうか・・・それはよかった。さて千尋、次は少しだけ難しいぞ。」

 汗を拭いながら千尋は言葉を返す、道雪は嬉しそうな笑みを浮かべるがもうひとつ千尋に伝授することがあった。

「次・・・?」

「覚えてるかい?魁の黒い雷を切った時の僕の雷を。」

 そう言われ千尋は『あっ』と声をあげた。

「紫色・・・」

「そう、あれは建御雷タケミカヅチの雷を右腕一本に集中させた時の熱量で───という単純なものではないんだ。」

 そう言って道雪は右手に建御雷の雷を纏って千尋に見せる、この時点ではまだ青白い雷のままである。

「この雷に炎の属性を掛け合わせる、すると・・・」

 道雪が集中した様子で右手の雷を見つめていると青白い雷は光は紫色へと変色していく、紫電の正体は雷の魔力に炎の属性を掛け合わせることにより起こる属性変化だったのだ。

 千尋も道雪に倣い左手に建御雷の雷を纏う、そして自身の身体に宿る炎の属性を掛け合わせると色を変え、青白い雷から紫電へと昇華した。

 煌びやかな光を放つ千尋の紫電は雷というよりも"光"のようであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか? これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...