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鎧の男はおもむろに開いた右手を空にかざすとなにかを掴み、引き寄せるようにグッと拳を握る。鎧の男の行動をその場にいる誰もが不思議に思った。すると『ゴゴゴゴ…』という地鳴りのような音が辺りに響き、空が暗くなりはじめた。一同が空を見上げると空を覆う程の巨大な隕石がこちらに向かって墜落してくる。
その光景に千尋たちはもちろん、玄信も我が目を疑う。そしてできるだけ遠くへ逃げるように大声をあげて指示を出すと周囲の黒服たちは一斉に慌ててその場から逃げ出した。
「貴様、伊邪奈美命がおられるこの場にあのようなものを・・・」
「お前たちはすぐに逃げられるだろう?」
憤慨する天翁の言葉に鎧の男は返事をしながら千尋たちを見詰めた。
「さぁ・・・どうする?この程度を凌げないようではどのみち俺には勝てんぞ。」
突如として現れた巨大隕石を千尋は睨みつけ、先の戦いで初代有間に言われたことを思い出す。
─── 御前が退けば、後ろにいる者達に災厄の牙が近づく。
千尋は紫電を身に纏い、拳を握りしめる。そして大地を蹴ると隕石に向かって飛翔した。
「千尋!?無茶だ、止められるわけない!」
千晶の呼び止める声にも応じる事なく千尋は真っ直ぐ空へ飛んでいく。
「俺が───"止める"!」
千尋は拳を構えると隕石に向かって突き出した。一発で止まるわけもなく、千尋は打撃の連打を隕石に叩き込む。千晶は千尋の拳撃によって砕け落ちた隕石の欠片をさらに砕いて砂にするとその大量の砂で巨大な腕を形成した。そしてその腕で隕石を支え、落下速度を落とそうとするが止まる気配はまったくない。千悟も魔力元素弾を撃てる限り撃ち込むが隕石があまりに巨大で表層の岩を削る程度しかできず、千晶はその破片を砂にしてまた新しく巨大な腕を形成して隕石を支える。
しかし隕石は轟音を響かせながら地上へと迫り、辺りの空気も震えはじめている。それでもなお千尋は拳を止めず、むしろ速度を増していた。己の中に芽生えた"双璧"としての覚悟、誇りが心の中に一筋の光を灯し、千尋はその光を掴むように拳を突き伸ばした。
───臆せず戦え、御前にはその力がある。
「"帝釈天"───!」
解号と共に千尋の纏う紫電は紫色の威光へと昇華し、巨大な神仏の姿となって顕現した。そして千尋と帝釈天は共に拳を振るい、光速の連打は隕石に亀裂を走らせた。やがて亀裂は隕石全体を覆い、千尋は雄叫びと共に拳を突き出す。
「散れ!」
威光を纏った拳が直撃すると隕石は爆発したかのように崩壊し、残骸が空を舞う。帝釈天の威光を纏う千尋を鎧の男はさも懐かしげに見詰めていた。
「帝釈天───ならアレは有間の人間か、懐かしいものだ」
千尋は着地すると残骸をも砕きにいこうとするが体力と天力が底を尽き、帝釈天が解かれてしまった。よろめいて膝をつき、息を切らしながらも千尋は残骸を睨んだ。
「邪魔だ───」
同じようにこの場へ向かって堕ちてくる残骸を鬱陶しげに睨んでいたイザナミがつぶやくと巨大な残骸の群れが一瞬で空から姿を消した。絶望的な状況から起きた奇跡に逃げ惑っていた黒服たちは足を止め、安堵と歓喜に声をあげる。
「なにを止まっている!早くこの場から離れろ!」
しかしそんな彼らに玄信は怒号を飛ばした。空に巨大な隕石を出現させた鎧の男、そしてその隕石が崩壊した後に生まれた巨大な残骸をイザナミは一瞥しただけで消し去った。もはや"人間"が相手にできる領域を超えてしまっている。玄信は部下たちの命を最優先に考え、再び退避命令を出した。
そんな玄信の慌てぶりに黒服たちは我に返ると蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく。やがてこの場に残った黒服は玄信のみとなった。
静まり返った場にイザナミの呆れたようなため息が響く。
「まったく、そもそも妾は椎名 紗奈と話をしようとしただけだというのに。ぞろぞろと・・・」
イザナミが不満げにぼやくと次の瞬間、まるでワープでもしたかのように紗奈の目の前に現れた。その目にも止まらぬ速さに千尋たちは驚き戸惑う。
「気は変わったか?紗奈。」
妖しげな眼差しで微笑みかけながらイザナミが紗奈に問う。紗奈は首を横に振り、イザナミと睨み合うかのように視線を合わせる。
「私の気持ちは変わらないよ。」
その答えにイザナミは頬を膨らませ、ぷいっと鎧の男の方を向くとある命令を下した。
「もうよい、この小娘を殺せ。」
突拍子もない明らかな八つ当たりの命令に鎧の男も『は?』と訝しげな表情を浮かべた。
「女子を殺す趣味などない。」
「できるだろう?お前は星霊、妾はお前の主だ。」
そう言ってイザナミは黒い影を集めて刀を創り出し、鎧の男へ放り投げると元いた場所へと瞬間移動していた。鎧の男は刀を受け取る素振りを見せず、むしろ砕こうとも考えていた。しかし鎧の男の身体は刀を受け取り、鞘から引き抜くとそのまま紗奈のいる方へ駆け出した。
星霊降臨とは星の記憶に残された者達を現世に呼び出し、使役する大魔法。よって、イザナミは鎧の男の自由を縛り、紗奈を殺すための行動をとらせた。
(無粋な真似を・・・しかし───)
心の中で不満を呟きながらも鎧の男の身体は刀を構える。しかし紗奈に怯えた様子は無く、鎧の男は不思議に思った。
(この娘、俺の刀を前にして恐れも喚きもしない。なぜだ・・・?)
そして、鎧の男の疑問に答えるように紗奈が口を開いた。
「私は・・・信じてるから───!」
すると鎧の男の前に立ち塞がるように、紗奈を守るように、二人の間で黒い影が渦を巻く。その中からひとつの黒い人影が姿を現すと手に持っている棒状の黒い影で鎧の男の凶刃を防ぎ、辺りに金属質な音が響き渡る。
押し合いになりながら鎧の男は突如現れた黒い人影が自身の一振を防いだことに感嘆の声をもらした。
「おもしろい小僧だ、名乗ってみろ。」
名を聞かれた黒い人影は黒と白の眼差しで鎧の男を睨みながら口を開く。
「長門───千歳」
その光景に千尋たちはもちろん、玄信も我が目を疑う。そしてできるだけ遠くへ逃げるように大声をあげて指示を出すと周囲の黒服たちは一斉に慌ててその場から逃げ出した。
「貴様、伊邪奈美命がおられるこの場にあのようなものを・・・」
「お前たちはすぐに逃げられるだろう?」
憤慨する天翁の言葉に鎧の男は返事をしながら千尋たちを見詰めた。
「さぁ・・・どうする?この程度を凌げないようではどのみち俺には勝てんぞ。」
突如として現れた巨大隕石を千尋は睨みつけ、先の戦いで初代有間に言われたことを思い出す。
─── 御前が退けば、後ろにいる者達に災厄の牙が近づく。
千尋は紫電を身に纏い、拳を握りしめる。そして大地を蹴ると隕石に向かって飛翔した。
「千尋!?無茶だ、止められるわけない!」
千晶の呼び止める声にも応じる事なく千尋は真っ直ぐ空へ飛んでいく。
「俺が───"止める"!」
千尋は拳を構えると隕石に向かって突き出した。一発で止まるわけもなく、千尋は打撃の連打を隕石に叩き込む。千晶は千尋の拳撃によって砕け落ちた隕石の欠片をさらに砕いて砂にするとその大量の砂で巨大な腕を形成した。そしてその腕で隕石を支え、落下速度を落とそうとするが止まる気配はまったくない。千悟も魔力元素弾を撃てる限り撃ち込むが隕石があまりに巨大で表層の岩を削る程度しかできず、千晶はその破片を砂にしてまた新しく巨大な腕を形成して隕石を支える。
しかし隕石は轟音を響かせながら地上へと迫り、辺りの空気も震えはじめている。それでもなお千尋は拳を止めず、むしろ速度を増していた。己の中に芽生えた"双璧"としての覚悟、誇りが心の中に一筋の光を灯し、千尋はその光を掴むように拳を突き伸ばした。
───臆せず戦え、御前にはその力がある。
「"帝釈天"───!」
解号と共に千尋の纏う紫電は紫色の威光へと昇華し、巨大な神仏の姿となって顕現した。そして千尋と帝釈天は共に拳を振るい、光速の連打は隕石に亀裂を走らせた。やがて亀裂は隕石全体を覆い、千尋は雄叫びと共に拳を突き出す。
「散れ!」
威光を纏った拳が直撃すると隕石は爆発したかのように崩壊し、残骸が空を舞う。帝釈天の威光を纏う千尋を鎧の男はさも懐かしげに見詰めていた。
「帝釈天───ならアレは有間の人間か、懐かしいものだ」
千尋は着地すると残骸をも砕きにいこうとするが体力と天力が底を尽き、帝釈天が解かれてしまった。よろめいて膝をつき、息を切らしながらも千尋は残骸を睨んだ。
「邪魔だ───」
同じようにこの場へ向かって堕ちてくる残骸を鬱陶しげに睨んでいたイザナミがつぶやくと巨大な残骸の群れが一瞬で空から姿を消した。絶望的な状況から起きた奇跡に逃げ惑っていた黒服たちは足を止め、安堵と歓喜に声をあげる。
「なにを止まっている!早くこの場から離れろ!」
しかしそんな彼らに玄信は怒号を飛ばした。空に巨大な隕石を出現させた鎧の男、そしてその隕石が崩壊した後に生まれた巨大な残骸をイザナミは一瞥しただけで消し去った。もはや"人間"が相手にできる領域を超えてしまっている。玄信は部下たちの命を最優先に考え、再び退避命令を出した。
そんな玄信の慌てぶりに黒服たちは我に返ると蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく。やがてこの場に残った黒服は玄信のみとなった。
静まり返った場にイザナミの呆れたようなため息が響く。
「まったく、そもそも妾は椎名 紗奈と話をしようとしただけだというのに。ぞろぞろと・・・」
イザナミが不満げにぼやくと次の瞬間、まるでワープでもしたかのように紗奈の目の前に現れた。その目にも止まらぬ速さに千尋たちは驚き戸惑う。
「気は変わったか?紗奈。」
妖しげな眼差しで微笑みかけながらイザナミが紗奈に問う。紗奈は首を横に振り、イザナミと睨み合うかのように視線を合わせる。
「私の気持ちは変わらないよ。」
その答えにイザナミは頬を膨らませ、ぷいっと鎧の男の方を向くとある命令を下した。
「もうよい、この小娘を殺せ。」
突拍子もない明らかな八つ当たりの命令に鎧の男も『は?』と訝しげな表情を浮かべた。
「女子を殺す趣味などない。」
「できるだろう?お前は星霊、妾はお前の主だ。」
そう言ってイザナミは黒い影を集めて刀を創り出し、鎧の男へ放り投げると元いた場所へと瞬間移動していた。鎧の男は刀を受け取る素振りを見せず、むしろ砕こうとも考えていた。しかし鎧の男の身体は刀を受け取り、鞘から引き抜くとそのまま紗奈のいる方へ駆け出した。
星霊降臨とは星の記憶に残された者達を現世に呼び出し、使役する大魔法。よって、イザナミは鎧の男の自由を縛り、紗奈を殺すための行動をとらせた。
(無粋な真似を・・・しかし───)
心の中で不満を呟きながらも鎧の男の身体は刀を構える。しかし紗奈に怯えた様子は無く、鎧の男は不思議に思った。
(この娘、俺の刀を前にして恐れも喚きもしない。なぜだ・・・?)
そして、鎧の男の疑問に答えるように紗奈が口を開いた。
「私は・・・信じてるから───!」
すると鎧の男の前に立ち塞がるように、紗奈を守るように、二人の間で黒い影が渦を巻く。その中からひとつの黒い人影が姿を現すと手に持っている棒状の黒い影で鎧の男の凶刃を防ぎ、辺りに金属質な音が響き渡る。
押し合いになりながら鎧の男は突如現れた黒い人影が自身の一振を防いだことに感嘆の声をもらした。
「おもしろい小僧だ、名乗ってみろ。」
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