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Road Ⅰ to Ⅲ
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千歳と千晶を前にして伊邪奈美命に憑依された紗奈は笑みを浮かべながら両眼を変異させる。その眼差しに千歳は動揺した。"見覚えがある"なんてものではない、紗奈の両眼に宿った魔眼は自身の左眼の霊写しの眼と同じ紋様だったのだ。
「なんで・・・紗奈ちゃんが霊写しを?」
「『なんで』?そもそもお前のその眼は我らが神の権能、たかが人間ごときにソレを扱えていることの方が妾には不思議だよ。」
千歳の問にイザナミは『ふっ』と小さく微笑む。そして眼の瞳孔を中心とした五つの波紋の紋様、そのうちのひとつの円環が不気味に光を放つ。
「堕ちろ───"地獄"」
そしてイザナミが指をパチンッと鳴らし、その摩擦で黒い火花が散る。それを目にした次の瞬間、女性の断末魔が千晶の耳に響いた。
声の方を向くと桐江が地面に倒れている。虚ろに自分を見詰める眼からは血が流れ、額には銃弾で撃たれたかのような小さな穴がひとつ空いていた。
その光景の意味を理解するのに1秒もかからなかった。千晶は剣をかざすと振り下ろし、イザナミに向けて黄金の斬撃を放つ。
怒りの感情をもって放たれた斬撃が迫ってもイザナミは不敵な笑みを崩さず、悠々と手を前にかざした。
「喰らえ───"餓鬼"」
眼の円環が再び光を放ち、イザナミがなにかを掴むのかのように手を握ると黄金の斬撃は寸前で消失した。そしてイザナミは腕を振り払いながら握った拳をパッと開く。
「───吐き散らせ。」
すると千晶が放った斬撃と同じような黄金の光の渦が千歳たちに飛翔した。千歳は刀を抜き、龍脈を刀身に纏わせる。
「断風ッ!」
そして黒い斬撃を放つと黄金の渦とぶつかり合い、相殺した。千晶が剣を構えるとイザナミに向かって駆け出し、千歳が前に立ちはだかる。
「どけ、千歳ッ!」
そう叫びながら千晶は千歳に向かって剣を振り払い、千歳は刀で受け止めた。鍔迫り合いになり、千歳が千晶の顔を見ると表情は怒りを露にしている。だというのに眼はどこか虚ろであった。千歳は目一杯の力で押し弾くと刀を鞘に納め、右手に龍脈を纏わせる。
「目を・・・覚ませッ!」
千歳の右手の拳が顔面を直撃し、千晶は倒れた。そして再び女性の断末魔が耳に響く。頬を撫でながら千晶が声の方を向くとそこには桐江が立っており、心配そうに自分を見詰めていた。混乱する千晶に千歳が手を差し伸べる。
「大丈夫か?千晶」
千晶はひとつ深呼吸をすると『あぁっ!』と力強く返事をしながらその手を掴み、千歳に引き上げられながら立ち上がった。
(いつの間にか俺は幻覚に陥ってたみたいだな。そして千歳は正気のまま、俺の幻覚を解いた。となれば・・・)
「千歳、さっきは『休んでろ』なんてカッコつけたが・・・お前にも頑張ってもらうぞ」
「望むところだ」
そう言って千歳は千晶に向けて拳を突き出した。それを見て千晶は『ふっ』と小さな笑みを浮かべながら拳を突き出し、千歳の拳と合わせる。
「ふん、やはりあの眼には効かんか・・・」
イザナミはニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべながらぼやいた。眼の円環が光を放ち、黒い影が渦を巻く。
「這え───"畜生"」
影は龍の姿を象っていくが突如として変化が止まり、全身がスライムのような、"生物"と呼ぶにはあまりにも異形なものがイザナミの前に現れた。
「おっと、邪龍然なるものを創ろうとしたのだが、この器の知識量ではそれも叶わぬか・・・」
イザナミは残念そうにつぶやくがその言葉とは裏腹に、目の前にいる生物のおぞましさにどこか満足気であった。
全身がスライムのようなソレは身体と口からドロリとした液体を吐き出しながら千歳と千晶を見据える。
「千歳、お前が前で戦ってくれ。俺が援護する」
千歳は両眼の魔眼で幻覚を看破できる。そう考えた千晶は自身がまたイザナミの幻覚に囚われぬよう、後方からの支援を申し出た。
「頼んだ!」
その意図を汲み取ったかのように千歳は鞘に納めた刀の柄に手を添えながらスライムの異形に向かって駆け出す。
異形の動きは鈍く、千歳は瞬時に背後へ回り込むと刀を抜いて斬り掛かる。そして刃が異形の身体を切り裂き、傷口からはドロッとした液体が飛び出した。千歳は声を上げながら後ずさり、異形と距離をとる。
『ゴポッ』という不気味な音と共に口から、身体からスライム状の液体が漏れ出る。その異形は千歳や千晶に向けて液体を吐き出す、ということはせずにただ唸り声をあげながら千歳を睨みつけていた。
そして異形が巨大な腕を千歳に向けて振り下ろすと千晶の放った剣がその異形の腕を切り裂いた。千歳が星映しの眼で異形を見ると身体の中に1箇所、魔力が集まって核になっているような塊を見つける。
千歳は異形に近づき、その核に向けて刀を振るう。しかしスライム状の身体に阻まれ、刃が核に届かない。そこへ1本の剣が飛来し、異形の身体に突き刺さる。剣は炎の魔力を帯びており、核を覆うスライムを溶かしていく。そして核が剥き出しになると千歳は秋水の刀身に龍脈を纏わせ、核に向けて刃を走らせる。
核は真っ二つに切り裂かれ、異形は断末魔をあげることもなく形を崩す。身体を形成していたスライムは地面に広がり、ブクブクと泡を立てながら蒸発するかのようにコンクリートの床へ染み込んでいった。
その様子を見ていたイザナミは落胆したかのような表情を浮かべる。そして気だるそうなため息をひとつつくと千歳に歩み寄った。
「イザナミ、紗奈ちゃんを解放しろ」
「失敗作の畜生を倒した程度で図に乗るなよ、童・・・」
二人の眼差しが交差する。千歳は刀を構え、刃を返えした。
「なんで・・・紗奈ちゃんが霊写しを?」
「『なんで』?そもそもお前のその眼は我らが神の権能、たかが人間ごときにソレを扱えていることの方が妾には不思議だよ。」
千歳の問にイザナミは『ふっ』と小さく微笑む。そして眼の瞳孔を中心とした五つの波紋の紋様、そのうちのひとつの円環が不気味に光を放つ。
「堕ちろ───"地獄"」
そしてイザナミが指をパチンッと鳴らし、その摩擦で黒い火花が散る。それを目にした次の瞬間、女性の断末魔が千晶の耳に響いた。
声の方を向くと桐江が地面に倒れている。虚ろに自分を見詰める眼からは血が流れ、額には銃弾で撃たれたかのような小さな穴がひとつ空いていた。
その光景の意味を理解するのに1秒もかからなかった。千晶は剣をかざすと振り下ろし、イザナミに向けて黄金の斬撃を放つ。
怒りの感情をもって放たれた斬撃が迫ってもイザナミは不敵な笑みを崩さず、悠々と手を前にかざした。
「喰らえ───"餓鬼"」
眼の円環が再び光を放ち、イザナミがなにかを掴むのかのように手を握ると黄金の斬撃は寸前で消失した。そしてイザナミは腕を振り払いながら握った拳をパッと開く。
「───吐き散らせ。」
すると千晶が放った斬撃と同じような黄金の光の渦が千歳たちに飛翔した。千歳は刀を抜き、龍脈を刀身に纏わせる。
「断風ッ!」
そして黒い斬撃を放つと黄金の渦とぶつかり合い、相殺した。千晶が剣を構えるとイザナミに向かって駆け出し、千歳が前に立ちはだかる。
「どけ、千歳ッ!」
そう叫びながら千晶は千歳に向かって剣を振り払い、千歳は刀で受け止めた。鍔迫り合いになり、千歳が千晶の顔を見ると表情は怒りを露にしている。だというのに眼はどこか虚ろであった。千歳は目一杯の力で押し弾くと刀を鞘に納め、右手に龍脈を纏わせる。
「目を・・・覚ませッ!」
千歳の右手の拳が顔面を直撃し、千晶は倒れた。そして再び女性の断末魔が耳に響く。頬を撫でながら千晶が声の方を向くとそこには桐江が立っており、心配そうに自分を見詰めていた。混乱する千晶に千歳が手を差し伸べる。
「大丈夫か?千晶」
千晶はひとつ深呼吸をすると『あぁっ!』と力強く返事をしながらその手を掴み、千歳に引き上げられながら立ち上がった。
(いつの間にか俺は幻覚に陥ってたみたいだな。そして千歳は正気のまま、俺の幻覚を解いた。となれば・・・)
「千歳、さっきは『休んでろ』なんてカッコつけたが・・・お前にも頑張ってもらうぞ」
「望むところだ」
そう言って千歳は千晶に向けて拳を突き出した。それを見て千晶は『ふっ』と小さな笑みを浮かべながら拳を突き出し、千歳の拳と合わせる。
「ふん、やはりあの眼には効かんか・・・」
イザナミはニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべながらぼやいた。眼の円環が光を放ち、黒い影が渦を巻く。
「這え───"畜生"」
影は龍の姿を象っていくが突如として変化が止まり、全身がスライムのような、"生物"と呼ぶにはあまりにも異形なものがイザナミの前に現れた。
「おっと、邪龍然なるものを創ろうとしたのだが、この器の知識量ではそれも叶わぬか・・・」
イザナミは残念そうにつぶやくがその言葉とは裏腹に、目の前にいる生物のおぞましさにどこか満足気であった。
全身がスライムのようなソレは身体と口からドロリとした液体を吐き出しながら千歳と千晶を見据える。
「千歳、お前が前で戦ってくれ。俺が援護する」
千歳は両眼の魔眼で幻覚を看破できる。そう考えた千晶は自身がまたイザナミの幻覚に囚われぬよう、後方からの支援を申し出た。
「頼んだ!」
その意図を汲み取ったかのように千歳は鞘に納めた刀の柄に手を添えながらスライムの異形に向かって駆け出す。
異形の動きは鈍く、千歳は瞬時に背後へ回り込むと刀を抜いて斬り掛かる。そして刃が異形の身体を切り裂き、傷口からはドロッとした液体が飛び出した。千歳は声を上げながら後ずさり、異形と距離をとる。
『ゴポッ』という不気味な音と共に口から、身体からスライム状の液体が漏れ出る。その異形は千歳や千晶に向けて液体を吐き出す、ということはせずにただ唸り声をあげながら千歳を睨みつけていた。
そして異形が巨大な腕を千歳に向けて振り下ろすと千晶の放った剣がその異形の腕を切り裂いた。千歳が星映しの眼で異形を見ると身体の中に1箇所、魔力が集まって核になっているような塊を見つける。
千歳は異形に近づき、その核に向けて刀を振るう。しかしスライム状の身体に阻まれ、刃が核に届かない。そこへ1本の剣が飛来し、異形の身体に突き刺さる。剣は炎の魔力を帯びており、核を覆うスライムを溶かしていく。そして核が剥き出しになると千歳は秋水の刀身に龍脈を纏わせ、核に向けて刃を走らせる。
核は真っ二つに切り裂かれ、異形は断末魔をあげることもなく形を崩す。身体を形成していたスライムは地面に広がり、ブクブクと泡を立てながら蒸発するかのようにコンクリートの床へ染み込んでいった。
その様子を見ていたイザナミは落胆したかのような表情を浮かべる。そして気だるそうなため息をひとつつくと千歳に歩み寄った。
「イザナミ、紗奈ちゃんを解放しろ」
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