先生と千鶴

三糸タルト

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先生と私

運命

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私はいつも通り土曜の9時40分に先生の家の前についた。
18歳の誕生日に貰った合鍵を使って家に入るとき、いつも少しドキドキする。

先生のことは、一目惚れだった。

あの日私はとても不愉快な思いをして、産まれて初めて学校をサボった。
そんな日に出会ったぐったりとした男性。
サボった罪悪感もあって、善い行いをしたかった。
声をかけた。
目が合った。

私は堕ちた。

理由は全くわからない。
少し釣り気味の目、薄い唇、整った鼻筋、確かに好みのタイプの顔だ。でも、それにしたって大袈裟なくらい胸が高鳴った。
今にして思えば、私の第六感のようなものが反応したとしか思えない。

その男性が佐礼谷ミチフミ先生だと知ったとき、私は運命というものを信じた。

いつの頃からか忘れたが、昔から性的な事柄に興味があった。
アダルトビデオや漫画、アニメ、色々見てきたがその中でも一番ハマったのが官能小説だ。
映像のない文章のみで綴られるエロティックな世界は、最も私の妄想を掻き立て、興奮させた。
18歳未満でも購入出来る点も都合がよかった。

そんな中で、佐礼谷ミチフミ先生の作品は少し異質だった。

性に奔放な女性に翻弄される主人公の男性が、右往左往するが最後には身を滅ぼす…そんな作品ばかりだった。
乱暴で自暴自棄な物語なのに、性描写はとても繊細で艶かしく、そのアンバランスさがなんだかとても好きだった。
いつしか小説の内容ではなく、佐礼谷ミチフミ先生に抱かれる妄想をした。

実際の先生のセックスも、とても優しく繊細で、それでいて支配的だ。

私はいつもワンピースを着て先生のところに向かう。抱いてもらえることを期待しているからだ。
先生を直接感じるためにピルも飲んでいる。

楠千鶴という人間は、身も心も先生のものなのだ。

「お邪魔します」

休日のこの時間、先生は寝ていることが多い。
案の定今日もまだベッドの中のようだ。

「せんせ」

顔を覗き込んでその顔を撫でる。
少しお酒臭い。昨晩は晩酌をしたか飲み会だったのだろう。
先生がうっすらと目を開ける。
私の顔を少し眺めたあと、布団に引きずり込んで抱き締めてきた。

いつもより少し体臭が濃くて、どきどきする。

「先生たら、どうしたんですか?」

「…嫌な夢を見たんですよ」

「そうですか、可哀想ですね」

まさに怖い夢を見て怯える子どものように、先生は私の胸元に顔をうずめて甘えてきた。その黒い髪の毛を撫でた。
とてつもない幸福感に包まれる。

先生はとても臆病な人だ。

私と触れ合うことさえも、常に恐れ、怖じ気付き、警戒している。
支配的な一面と矛盾しているように思えるが、だからこそなのだと思う。

先生の心を慮って、私も一定の距離感を保つように心がけている。
私は先生の仕事や故郷などのプライベートなことは殆ど知らないし、私のことも聞かれたこと以外は話さない。

私はただ心と身体をこのひとに捧げられたらそれで良い。
少なくとも、今はそれで満たされている。

「んっ…」

私を抱き締めていた先生の手が下半身に移動し、スカートの中に入り込む。
私のより大きくて温かい手が太ももやお尻を撫で回す。

こんな風に朝から求めてくることは珍しい。

先程まで甘えてきていたのに、焦るようにワンピースを脱がされた。
今日はいつもより少し乱暴で期待してしまう。

「先生、やっ…あ」

先生は布団の中に潜ると、私の太ももの内側に強く吸い付く。
痛みを感じるが、それだけで私の奥からじわあと熱いものが込み上げる。

「こんな跡がついてたら、私以外の男には見せられませんね」

「そんな人いません…っんっ…」

私の興奮が高まる。

「私だけですか?」

足をなで回し、内ももにキスをする。
秘部の近くまで舌を這わして愛してくれたが、肝心なところには触れてくれない。
そして再び強く吸い付き、甘く噛んだ。

「ひゃ…あっ…ん…先生だけです…っ!」

その言葉に満足そうに微笑むと、優しく唇を奪う。
キスは好きだ。
愛されているような気持ちになれる。
先生の指はついに私の敏感な部分に触れる。それだけで軽く果ててしまう。
私の身体はもうぐずぐずだ。たったこれだけのことでこんなにも濡れてしまうのだから。
手での愛撫もそこそこに、先生のペニスがあてがわれる。
やはり今日はいつもより乱暴だ。

「何をどうして欲しいか教えてください」

入り口をぬるぬると擦られる。
腰が勝手に動いてしまう、もうそういう身体なのだ。先生のものを受け入れたくて仕方がない。

「んっ…あっ…
お、お願いします…先生の……いれてください…」
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