先生と千鶴

井中かわず

文字の大きさ
16 / 17
二人の関係

恋人

しおりを挟む
その夜、千鶴と私は確かめあうように深く愛し合った。
セックスのあとも裸のままベッドに横たわり、お互いの温もりを感じあう。

「先生、もう一度好きって言って…?」

「大好きですよ」

千鶴は心底嬉しそうに私の胸に顔をうずめる。

「私は先生の恋人になれたんですね」

ああ、そうか。
この子が私のものになったと同時に、私もこの子のものになったのだ。
不安がないわけではないが、今は特に、安心感が大きい。

「そうですね、これからよろしくお願いします」

「早速なんですが…
今日は泊まっていっていいですか……?」

「明日は祝日ですし私は構いませんが、親御さんは大丈夫ですか?」

「大丈夫です、お父さん今日も泊まり込みでお仕事だから」

このとき私は、千鶴の家族のことを初めて知った。
母親は中学生の頃に事故で亡くなったそうだ。
元より余裕のない暮らしをしていた彼女の家は、働き手をひとり失ってかなり貧窮したらしい。
大学進学こそ諦めざるを得なかったが、父親は彼女に苦労をかけないよう、今も働き詰めで借金をひとりで返済していると。
それなりに苦労してる子なのだ。

「先生のおうちは?どんな家族ですか?」

「どんなと言っても、普通ですよ。
両親は幼い頃に離婚して、父親とはそれきり。母親とも今はもうあまり連絡をとってません。
祖母には時々電話をしてますが…」

そう言えば、最近田舎に住む祖母に会いに行けていない。
彼女ももう90歳を迎えようとしている。電話で話していても時々つじつまがあわないことがある。一瞬に過ごせる時間は少ないのだろうな…。

「そろそろ顔を出さないとな…」

そう独り言を呟いた。

「…。」

静かになった千鶴の顔を覗くと、すやすやと寝息をたてていた。
こう見るとまだあどけなささえ残している。
その子を祖母のところに連れていったら、驚くだろうな。
と思ってから、自分で自分を少し笑った。

結婚する気か?この18歳も歳下の子と?

それでも、付き合うと言うことはそれを視野に入れるということだ。
少なくとも私はそう言う認識でいる。

千鶴とはこの先も苦労や障害は多いだろう。
それでも私は私を愛してくれるこの女性のためにできる限りのことをしたいと思う。

「…おやすみ千鶴さん」

私も彼女を抱き締めながら眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

お義父さん、好き。

うみ
恋愛
お義父さんの子を孕みたい……。義理の父を好きになって、愛してしまった。

密会~合コン相手はドS社長~

日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...