超絶ゴミ恩恵『消毒液』で無双する

びゃくし

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第五話 無双の始まり

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 オレは恩恵への理解が足りなかった。
 『消毒液』について何もわかっていなかった。
 その特性も用途も知らず、ただの変な液体としてしか認識していなかった。

 だが、ラーツィアの吸魔の指輪を装着したことでわかったことがある。
 恩恵は保有する魔力の量によってその理解度が深まるのだ。

 莫大な魔力を有する吸魔の指輪を装着したことで、オレの中で消毒液への理解度が急速に深まっていた。





 オーガと戦っていた女騎士が、オレが草陰から姿を現したことに怪訝な顔をする。

 だからオレは彼女に向かって叫んだ。

「女騎士! そいつから離れろ!! 後はオレがやる!!」

「何をいう! 姫様を助けてくれたことには礼をいうが、さっきまで逃げ隠れていた奴に何ができる!!」

「できるさ」

 そういってオレは左手を掲げて見せた。

「それはっ!? 姫様の吸魔の指輪か? 何故お前ごときが身に着けている!?」

「その姫様に預かったんだ。……後はオレに任せろ」

「ぐ……、納得はできんが、その話に乗ってやろう。――――死ぬなよ」

 やはり怪我はそれなりに深かったのか女騎士はオーガから距離を取る。

 助かった。

 ――――巻き込むかもしれないからな。

「ガアァァァアァァァッーーー!!!」

 雄叫びをあげるオーガ。
 標的は女騎士から完全にこちらに移った。
 血走った目でオレを捉えると一心不乱に走り出す。

 ラーツィアを目前で取り逃したのがそんなに悔しかったのか?
 脇目も振らずに全力で近づいてくる。

「ガアァァァーー!!」

 赤黒い腕を振り上げる。
 それはまさしく、絶大な威力と絶望の混ざった死への一撃。
 これが降ろされればオレは痛みを感じる間もなく死ぬことになるだろう。


 オレはそっと右手を前に突きだす。


「『消毒液砲撃サニタイザー・キャノン』」

「ギッ、ギャァァァーー!?」

 激流が三メートル近い体格のオーガを飲み込み押し流す。
 
「ギャアッ」

 森の巨木にぶつかり悲鳴をあげた。

「な、なんだアレは……オーガが水に流された?」

 そうだ。
 吸魔の指輪の莫大な魔力は、オレの『消毒液』の放出量を圧倒的に引き上げた。

「ギィィ」

「そういえば消毒液だから傷口に染みるのか」

 巨木を背にしたオーガは、女騎士のつけた傷口に大量の消毒液をぶち撒けられて身悶えていた。
 それでも、一頻り悶えた後もう一度体勢を立て直しこちらに向かってくる。

「ガアァァァッ!!」

「んー、意外と元気だな。ならもう一発、『消毒液砲撃サニタイザー・キャノン』」

 再びの消毒液の激流。

「吸魔の指輪の魔力は過剰なほどある。この程度じゃ尽きないぞ」

 オレの言葉が聞こえたかは定かではないが、怒りに任せて腕を振り上げるオーガ。

「その腕も邪魔だな。『消毒液断刃サニタイザー・スライスブレード』」

 魔力で消毒液の放出を操作し腕を斜めに振るう。

「やばいな、後ろの森まで切っちまった」

 ドスンと重苦しい音が響いた後、オーガの振り上げた右腕が落ちる。
 次いで連続した轟音が鳴り響き、オーガの後ろの木々が半ばほどで倒れていく。

 瞬く間に森の一角が切り開かれていた。
 
「ギャァァァァァァーー!!」

「腕を切るだけのつもりだったのに、ミスったな……」

 力加減が分からず森まで切っちまった。
 ……これあとで冒険者ギルドで噂になるな。

「ギギィ……ァ……」

 ふと見ればオーガはすっかりと戦意を失っていた。
 その瞳は恐怖に濡れ、巨木の根本で傷口を押さえて蹲っている。

「悪いな、お前を見逃すことはできないんだ」

 消毒液の特性を俺は理解している。
 知っているぞ。
 消毒液は――――燃えるんだろ。

「これで終わりだっ」

 足元に転がった石に剣を叩きつける。

 飛び散る火花。

 逆巻く火炎。

 消毒液の川を伝ってオーガを焼く。

「ギャアアアアアアアッ!!!」

 オレの魔力を宿した消毒液の業火がみるみるオーガを燃やし尽くす。

「……お前はなんなんだ」

 木陰から呆然とした顔で出てきた女騎士に答える。

「オレはアルコ・バステリオ。ゴミ恩恵の万年Dランク冒険者だ」

 この日鬱屈した日々は終わりを告げる。

 ここからがオレの物語。
 
 運命が好転する。

 その始まりだった。
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