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第六話 護衛騎士は見た
しおりを挟む「は?」
私は自らの口から間抜けな声が出たことに驚いていた。
目の前の光景が到底信じられない。
恩恵とは神々からの賜り物だ。
一人一人違う恩恵を授けられることになるが、そのどれもが魔力で物体を生成する力をもつ。
私の恩恵『ファルシオン』もそうだ。
魔力によって鋭利な短刀ファルシオンを具現化させる武器系統の恩恵。
恩恵は個々人の技量で様々なことが可能になる。
勿論そのまま生成するだけでも強力だ。
武器や防具なら普通の武器に打ち負けることはない。
また、同時に複数展開も可能で、射出、連続攻撃、特定の陣形に配置することもできる。
さらには、恩恵からそれほど離れすぎなければ、多少の形状変化も可能だ。
それらは恩恵技とも呼ばれ、戦闘の際の切り札となる。
翻ってあの男は何だ。
まるで川の決壊の如き洪水の奔流。
それも三メートルのオーガを押し流す勢い。
普通じゃない。
そもそも、液体を作り出す恩恵だと!?
恩恵は固体だ。
固く、頑丈で戦闘に使えるものほど重宝される。
それが固定の形を持たないものが存在するのか?
この辺境にそんな人材が隠れていたのか?
そんな訳ない。
あの男は姫様を抱えあげているときですら、オーガに怯えていた。
私の思考が驚きで真っ白になっている間も事態は動いていた。
切れた。
三十メートルは離れた位置からオーガの腕を切断した。
あれ程私がファルシオンで傷つけても、筋肉に阻まれ骨まで断つことが叶わなかった腕を……。
地鳴りが響き、森の一角までが切れた。
鬱蒼としていた木々がなくなり、太陽の光が降り注ぐ。
それを楽しそうに笑って見ている。
オーガが怯えていた。
あの男に恐怖し、動けないでいる。
それは最早屈服だった。
「ウソだろう……」
アイツは何度私を驚かせば気が済むんだ。
火が唐突に現れていた。
あの男が振りかぶった剣が地面を、いやそこに落ちていた石を叩く。
金属のぶつかる甲高い音が響いた途端に、オーガまで線を引くように火の道ができていた。
「ギャアアアアアアアッ!!!」
焼けただれ炭化していくオーガの断末魔の絶叫。
この世のものとは思えない絶望がそこに内包されていた。
あの地獄のような炎はなんだ。
私は何を見させられてる。
魔法ではない。
そんな素振りは一切なかった。
一体何の恩恵ならあの光景を作り出せるんだ!
あの男は一体何者なんだ!!!
「……お前はなんなんだ?」
気付けば口から疑問が溢れでていた。
あの男は私に振り返り不敵に笑う。
「オレはアルコ・バステリオ。ゴミ恩恵の万年Dランク冒険者だ」
私はその笑みを不覚にも眩しいもののように感じていた。
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