超絶ゴミ恩恵『消毒液』で無双する

びゃくし

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第三十二話 痴女

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「おう、そこの奴ら、ちょっと止まれ。冒険者ギルドの特別待遇を受けてるってのはお前らのことだろ?」

 それは冒険者ギルドからダンジョンに向かう道すがら、いかにも柄の悪そうな冒険者風の奴らに絡まれたことから始まった。

「あ、人違いっす。オレ“万年Dランク”なんで」

「ああ、そうか。呼び止めて悪かったな……ってオイ! 俺らが探してるのも“万年Dランク”って呼ばれてる奴なんだよ! お前じゃねぇか!!」

 あー、ヤバ、普段からそう呼ばれてたから条件反射で答えちまった。
 
 絡んできた胡散臭そうな奴らを見れば、男三人組のムサイおっさん連中だった。

 こっち見ろよ。
 一人は男装しているとはいえかなりの美人で、もう一人は絶世の美少女だぞ。
 格が違うんだよ格が!
 
「で、なんのご用でしょう?」

「話は簡単だ。聞いたぜ。お前ら冒険者ギルドから調査依頼を受けてダンジョンに潜ってるんだろ。――――それを今すぐ辞退しろ。代わりに俺たちを推薦するんだ」

 おい、マリネッタ、ギルドの掌握が緩いぞ。
 オレたちの情報が漏れてるじゃないか!
 もっとキツく締め上げてくれ!

「いや~~、それはちょっと困るな。他を当たってくれないかな?」

「何言ってやがる! お前らはDランク一人とEランク二人のパーティーだろうが! 俺たちはDランク三人の冒険者パーティー〈砂モグラ〉様だぞ! 俺たちの方が調査依頼を受けるのに相応しいだろうが!!」

 〈砂モグラ〉か……お揃いの茶色いローブを纏ってるからそんなパーティー名なのか?
 この街では見たことも聞いたこともないってことは、ダンジョンの噂を聞きつけてやってきた連中の一組か。
 最近街を歩いても知らない奴らが急激に増えてきてたからな。

 しかし……確かに相応しいな。
 対外的に見ればDランク三人の方がパーティーとして優れていると俺でも思う。
 マリネッタが強権を発動してダンジョン調査のために俺たちに依頼してくれた形にこそなっているけど、普通はおかしいと思うもんな。

 実際あのセヴランとの模擬戦モドキを知っているランクルの街の冒険者は、冒険者ギルドで幅をきかせていたセヴランがあっさり負ける姿をみて、オレに面と向かって蔑みの言葉をかけてくることは少なくなっていた。
 ある意味いい牽制にはなったようで、マリネッタから多少優遇してもらっていても、表立って文句を言われることはなかったんだが……外からきた冒険者なら関係ないよなぁ。

 ていうか、なんでマリネッタがオレたちに色々便宜を図ってくれるのか……それがいまいちわからない。
 脅しのネタに使えるかとかそんな理由か?
 ……深く考えないほうがいいかも。

 さて、それよりもこの状況をどうするか……。
 隣を見ればコイツらの失礼な態度に師匠はもう爆発寸前だし、ラーツィアはいまいちなぜ絡んできたのかをわかってないのかニコニコとオレを見ているし……可愛いな。

「ちっ、言って聞かねぇならしかたねぇ。俺たちの実力を見せてやるよ! 『ブロンズスモールハンマー』!」

 痺れを切らした砂モグラのリーダーらしき男が生成したのは銅製の槌。
 武器系統か……小振りながら金属の武器とはどう対処するか。

「ガフ、やりすぎじゃねぇか? 街中だぞ!」

「ヤーン、別に俺たちはコイツらを襲って何かを奪おうって訳じゃねえ。ちょっと自分たちの本当の実力を知ってもらおうってだけだ」

「そうか……なら俺も『ピックマトック』」

 おい、あっさり説得されんなよ。

 そんでもって師匠は、もうすぐやる気になるんだから。

 あー、どうする、すでに目立っちまってるけど、ここで恩恵をぶっ放すのは流石に不味いよな。
 
 オレが迷いから動けないでいると、一触即発の空気を破るように甲高い女の静止の声が街中に響いた。

「待ちなさい! こんな街中で恩恵をだして何をしようっていうの? 早まるのは辞めなさい!」

 そこには一人の女が立っていた。

 碧く艶やかな長い髪。

 それを後ろで一つに纏め、尻尾のように垂らしたポニーテール。

 瞳は澄んだ黒曜石のような黒く引き込まれる魅力に溢れ、くっきりとした目鼻立ちは非常に整っている。

 高い身長と抜群のプロポーションからも道で擦れ違えば、男女を問わず振り返るのは間違いない。

 ランクルの街では見かけたこともないその女が……。

 水着姿で仁王立ちしている。

 騒ぎに集まっていた観衆の前で。

「痴女かっ!!」

「ええっ!?」

 なぜ驚く?
 真っ昼間の街中だぞ、なんて格好してるんだ。
 鉄板の取り付けられたブーツのようなものこそ履いているが、あと身につけているのは腰元のマジックバックらしきポーチのみ。

「アンタなんて格好してるんだ! ここには子供もいるんだぞ! 何考えてるんだ!?」

 咄嗟にラーツィアの目を両手で塞ぐ。
 純粋な彼女にはまだ早い。
 というか、この変な痴女にラーツィアが影響を受けて欲しくない。

「なにかしら? 私の恩恵『競泳水着』は防具系統なんだから普段から着用するのは当たり前でしょう」

 そりゃあ防具系統なのはわかるけど、その格好はないだろう。
 上下一体で太ももの半分近くまで覆っているとはいえ、あまりにも身体のラインが見え過ぎだ。
 恥ずかしくないのか?

「恥ずかしい? 羞恥心と命、どっちが大切なことかぐらい子供でもわかることでしょう?」

 動揺して声に出てしまったらしい。
 ただ……恥じらいは人には必要だと思うぞ。
 
「な、なんだこの変態は!?」

 おい、ガフ君まで動揺してるぞ。
 良かった、人を突然襲うヤバい奴らと思ってたけど、パーティーでお揃いの格好をするぐらいだから服装には常識があったようだ。

「クソッ、こうなったらお前にも俺たちの強さってやつを思い知らせてやる! いいな! お前たちには必ず調査依頼を辞退させてやる! 覚悟しろ!!」

 なんで戦いを止めてくれないんですか?
 この痴女の登場でもうこっちの余力はないです。
 帰ってください。

「仕方ありませんね。こんな街中で暴れようとするならこちらも相応の対応を取らせて貰います」

「え?」

 水着痴女が腰元のマジックバックから取り出したのは、身の丈の半分ほどの菱形の大盾と金属製らしき片手剣。
 どちらもかなり質がよく手入れされているのはその輝きと重厚感からも窺える。

「ほう、魔力付与された武器と防具か……」

 師匠の呟きに驚く。
 あれが恩恵で生成した武器とも打ち合える品物なのか……。

「貴方たちはこの私、ヴィルジニー・シャノワールがお相手して差し上げましょう。さあ、掛かってきなさい!!」

 水着痴女改めヴィルジニーが戦いの始まりを天高く叫ぶ。

 オレは……すべて見なかったことにしてこの場から立ち去りたい、そんな衝動に駆られていた。
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