超絶ゴミ恩恵『消毒液』で無双する

びゃくし

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第三十四話 団欒の一時

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「ヴィルジニーさんってお強いんですね。男の人三人をあっという間に倒してしまうなんて、わたしびっくりしました!」

「そ、そうかしら。でも彼らはDランクだというし、Cランクの私が簡単に負けるわけにはいかないもの。当然の結果よ。――――熱っ」

 この目の前でラーツィアに褒められた照れ隠しに、紅茶を一気飲みして舌を火傷しているヴィルジニーは、口振りからしてどうやらCランク冒険者らしかった。

 そう考えるとあの強さも納得だ。
 終始余裕があって動きに無駄がなかった。
 なにより片手剣も菱形の盾も魔力付与された品のようだし、それを扱う技量も高い。
 あの三人とは明確な差のようなものを感じた。
 ……あれがCランク冒険者の戦いか。

「え! ヴィルジニーさんはお一人で冒険者をしているんですか!?」

「そうよ。私の恩恵『競泳水着』は防具系統だけど、仲間を即座に守れるものではないから、私一人の方が動きやすいの」

 水着……だからな。
 盾やヘルメットみたいに仲間に向かってくる攻撃を直接庇ったり防げたりしないよなぁ。

「たまにパーティーに誘ってくれる人もいるんだけど、私が競泳水着を生成して着るように言うと何故か断わられてしまうのよね。防具なんだから絶対に常日頃から身に着けておくべきなのに……皆口々に『そんな恥ずかしい格好はできない』って言われちゃって、困った人たちよね」

「おい、ソロなのはそれが原因だろうが!!」

「そうかしら? でも強要はしていないつもりなんだけど、何故か皆去っていってしまうのよね。不思議」

 惚けた顔で今度こそ優雅そうに紅茶を飲む水着痴女。
 コイツと一緒に街中を歩くのは勇気がいるだろうからな。
 そりゃあ皆逃げるのも無理ないって。

「ヴィルジニーさんはどうしてこの街に来たんですか? やっぱりダンジョンの噂ですか?」

「ん? ええそうよ。大規模ダンジョンが出現したって聞いたからここに来たの。ただ、まだここの冒険者ギルド自体が混乱しているのよね。冒険者が急に殺到したことでギルドの機能が軽く麻痺しているみたいなの。ダンジョンに入るには冒険者ギルドから直接依頼されないと駄目みたいなのよ」

 だからダンジョンに入れなくて困っているのよね、と水着痴女は続けた。
 〈砂モグラ〉の連中もそれで焦ってあんな行動にでたのかな。
 そうだとしたら、俺たちの存在はかなり目障りだったろうな。

「ここ周辺の魔物は私には弱くて実入りの少ない相手だから他の街に行くか悩んでいるのよね。……私はどうしてもお金を稼がないといけないもの」
 
 ヴィルジニーは一瞬暗い表情を表した。
 それは深い悩みを抱えていると簡単に推測できてしまうほど意味深な表情。
 さっきまで襲いかかってきた〈砂モグラ〉三人組に大立ち回りを見せていた人物とは同一人物と思えないほどの落差だった。
 ……こんな奴でも悩みはあるんだな。

「そうなんですか……ならわたしたちと一緒にダンジョンに潜りませんか?」

「え?」

「へ?」

 ラーツィアの提案はあまりにも寝耳に水だった。
 マジで言ってるの?
 水着だよ、喫茶店で紅茶を優雅に飲んでいるように見せてても水着なんだよ?
 店内にいる誰もが見ないふりしてくれてるから助かってるけど、内心はヤバい奴らだって絶対思ってるから!?

「ちょ、ちょっと待った! 作戦タ~イム!!!」

 思わず素っ頓狂な声が出たと思う。
 それでもこれはオレたちの今後に関わる大事なことだ。
 ラーツィアと師匠を強引に集めるとテーブルから離れたところで秘密の会議を開く。

「……ラーツィア、本当にアイツを誘うつもりなのか?」

「はい! ヴィルジニーさんが困っているなら助けたいんです!」

「うぅ……」

 ラーツィアが優しい娘だと、一目で人の内面を見極めてしまうような娘だと理解していても、その迷いない態度に圧倒される。
 本当に……この娘はいつだってオレを驚かせてくれる。

 きっとラーツィアは信じてる。
 ヴィルジニーは決して自分たちを裏切らない、と。

 ヴィルジニーが見せた一瞬の暗い表情。
 そこからラーツィアがなにかを感じたかはわからない。

 ただ彼女はすでに決めていた。
 苦悩するヴィルジニーの力になってあげたいと。

 それに比べてオレはなんだ。
 この後に及んで彼女が仲間に入れない言い訳を考えてる。
 
「し、師匠はどうなんだ? アイツが一緒に冒険することになったら絶対に目立つよな? オレたちの正体だってバレかねない。アイツの前では力を隠さないといけないだろ? ……流石に一緒は無理だよな」

「私は構わない」

「ええ!?」

 師匠はオレの意見に同調してくれるかもしれないと思っていた。
 そんなことある訳がないと自分でもわかっているのに。

「姫様の望みを叶えるために私はここにいる。だからあの変態女が仲間になろうと構わない。実際腕は確かなようだしな。防具系統の恩恵なら姫様の守りをさらに盤石なものにすることも可能だろう」

「だけど……」

「お前の心配ももっともだが、変態女はこの街の外から来たんだろう? なら力がバレるバレないの問題ではない。お前の力だってわざわざ隠す必要はない。元を知らないんだからな。広く噂になったりしないように口止めすれば十分だろう」

 確かに……街全体で有名にならなければ同じパーティーで力が露呈してもさほど問題じゃないのか……。

「バステリオ」

 師匠は真剣な瞳でオレを見た。

「何を恐れる必要がある。姫様が決めたことだ。お前だってわかっているんだろ? 姫様の認めたあのヴィルジニーという女は悪い奴ではないと……」

 そうだ、オレは……怖いんだ。

「……失うのが怖いんだ」

 師匠とラーツィアの見詰める中、オレは自身の内面を曝け出していた。

 それは情けなく自分勝手な最低な告白。
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