超絶ゴミ恩恵『消毒液』で無双する

びゃくし

文字の大きさ
36 / 52

第三十五話 吐露

しおりを挟む

 失うのが怖い。

 オレは思わず自身の内面を曝け出していた。
 
「なに?」

 師匠は怪訝な顔でオレに問いかける。
 そうだよな。
 弟子がこんな情けないことを告白しだしたらそんな顔にもなる。

 眉間にしわを寄せ目を細める師匠の方向を見ることができない。
 オレは顔を伏せたままその理由を吐露していた。

「だって……やっと、やっとオレを見てくれて認めてくれる人たちができたんだ。魔物だって倒せるようになった。金だって見たことがないくらい稼げるようになった。まだ不安はあるけど未来に希望を持てるようになってきたんだ。それなのに……ヴィルジニーが加わったらそれが……崩れてしまうようで怖いんだ」

 自分でも馬鹿な告白だと思う。
 失望され、呆れられてもおかしくない。

 でも本当なんだ。

 ラーツィアと師匠と出会った時、オレの鬱屈した時間は終わったように感じた。
 自由に向かって踏み出せるように感じていたんだ。
 
 それが、その幸福な時が崩れてしまうようで……オレは怖かった。 
 
「変化が怖いか……」

「アル様……」

 師匠の言う通りだ。
 変化を望んでいたのに、いまは変化を恐れている。

 二人の顔を見上げられなかった。
 顔を伏せ嘆くことしかできなかった。
 それが、情けなかった。

「アル様……わたしはアル様ならヴィルジニーさんが加わるのを認めてくれる、そう信じています」

 ラーツィアは笑顔だった。
 嘆くオレの手を取り両手で包む。
 そこにはぬくもりがあった。

「なんでだ……ラーツィアも聞いただろ。オレはいまみたいに情けないことを考えて……」

「だって……アル様は困っている人を放っておけないですから」

「違う! オレはラーツィアを師匠を助けたのは……偶然なんだ。たまたま上手くいった。それだけなんだよ……」

 オレの手を優しく包み込むラーツィアはそっと首を横に振る。

「いいえ、アル様が助けて下さったのは偶然なんかではありません」

 目と目が合う。
 ラーツィアは澄んだ眼差しで見てくる。
 堪らずオレは目を逸らす。
 そんな資格はないと思っていたから。

「アル様はわたしたちを助けてくれたあの時、本当は見捨てても良かったんです。いえ、自らの幸福を考えるなら見捨てて逃げるべきだった」

「それは……」

「そうです。わたしをオーガの前から颯爽と抱え上げて下さったあの時からアル様が見ず知らずの他人のために命を賭けて戦える方だとわたしにはわかっていました。その心根が善良で慈愛に満ちた方だと……」

 いつの間にか伏せていた顔を上げていた。
 しかし、ラーツィアは哀しそうな顔で続ける。
 それは懺悔にも似ていた。

「わたしが不躾にも匿って欲しいとお願いしたのは、アル様に助けられたからではありません。貴方様が信頼に値する方だから、決してわたしを見捨てないと確信していたから。……だからわたしはアル様のその善良なお心に縋ったのです。貴方様をわたしは利用した」

「違う! それは違う! オレが救ってもらったんだ! オレが――――」

 オレの言葉は最後まで紡がれなかった。
 師匠がオレを見る真剣な目にそれ以上は話せなかった。

「バステリオ……いや、アルコ。私も姫様と同じ気持ちだ。お前が姫様を救い出し、あの残忍なオーガを一顧だにせず撃破した時……私はお前という男が目に焼き付いた。こんながむしゃらで無鉄砲で……不敵に笑う奴がいるのかと。だから姫様共々お前の元に世話になることを決めたんだ」

「……」

「お前は自分のことを卑下するが、わたしはお前の事情を知った。だから……気持ちは推察できる。だがな、ヴィルジニーを、あの変態女を私たちの仲間に入れることはお前のためでもあるんだ」

「オ、オレの……?」

「わたしたちだけではお金を稼ぐにも限界がある。……そうですよね?」

 ダンジョン攻略は安定している。
 だけど土地の代金のためにはより一層稼ぐ必要があるのは確かだ。

「実はレオパルラと相談していました。わたしたちには防御役が足りないのではないかと。そんな方さえいればもっとダンジョンの奥深くに潜りお金を稼ぐことも可能ではないかと」

「それは……」

 オレの恩恵も、ラーツィアの魔法もまだ発展途上だ。
 師匠の剣技も守りより攻撃が得意なのは、最近の鍛錬を通じてなんとなくわかってきていた。
 防御の手は足りていない。

「アル様、わたしたちに……貴方様の手助けをさせて下さい。貴方様の優しさを利用しているわたしたちを、貴方様の目標のために利用して下さい!」

 叫んでいた。
 あのいつも朗らかな笑顔を浮かべていたラーツィアが、顔を歪ませて苦しそうに。

「本当は探し人なんてどうでもいいんです! 帝国に見つかったとしても構わないんです! だって、わたしはアル様と出会えて嬉しかった。こんなにも素晴らしい人がいるなんて、古城でただ幽閉される日々ではわからなかった! ですから、わたしたちはアル様の目標のために一緒に進みたいんです!」

 オレが一方的に助けられたと思っていた。
 二人はそんなことを思ってくれていたのか……。

「でないと不公平です。わたしたちは仲間なんですから……」

「バステリオ。お前があの女はどうしても無理だというのなら私たちも諦める。……だがな。お前もわかっているんだろ? お前は目の前で困っている相手を見捨てられない。それが自分を助けてくれた相手なら尚更だ。そして、あの女は誰かの助けを求めている。そうだろ?」

「アル様どうか恐れないで。わたしたちも貴方様と同じ気持ちです。何かの変化でこの幸福な時間が失くなってしまうかもしれないと考えると恐ろしい。でも、アル様の幸福がわたしたちの幸福でもあるんです。ですから、どうか勇気をもって一歩前に踏みだして……わたしの勇者様」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

処理中です...