超絶ゴミ恩恵『消毒液』で無双する

びゃくし

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第三十八話 決意表明

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「おい、アルコ! いるんだろ! 出てこいよ!」

 朝っぱらからマジでうるさい。
 何なの?
 こちとら昨日はヴィルジニーが顔を真っ赤にして『不束者ですが……』なんて泊まりにきて、ドキドキして眠れなかったんだぞ。

 まあ、勿論寝る場所はラーツィアたちと同じく居間だけどな。
 今じゃ、居間の一角はカーテンで仕切られてラーツィアの恩恵でベットを出すため専用の場所になってるよ。
 そこで女三人で仲睦まじく過ごしているようだ。

 オレか? オレは一人寂しく部屋で寝たよ。

「あ~、はいはい。何の用だ?」

「何の用だとぉ? このボクが直々に君の家を訪ねてあげたんだぞ! なんだその態度は!」

 頼んでないし。

 唾でも飛ばす勢いで急接近してくるロガン。

 そこに騒ぎを聞きつけた不思議そうな顔をしたヴィルジニーが外にでてくる。

 水着で。

「な、な、な、っ――――」

 おいおい、なんだ気持ち悪いな。
 ヴィルジニーを目撃した途端、発声の仕方を忘れてしまったかのように、一音しか出せなくなるロガン。
 挙動不審で意味もなくキョロキョロとしだし、額には汗が浮かんでいる。

 えー、なんか怖いんですけど。

「アルコ、この人は誰なのかしら? 突然固まってしまったみたいだけど」

 小首を傾げるヴィルジニー。

 その仕草はどこか上品で貴族のお嬢様というのも間違いではないなと感じさせる所作だった。

「あー、そのヴィルジニー、コイツはだな……」

「……ヴィルジニー、さん……め、女神様?」

 ホ、ホントに気持ち悪いんだけど!?
 視線を一点に集中し、うわ言のように名前を呟く頬を赤らめたロガンは、普段から変な奴だとは思っていたけど、今日は輪をかけておかしかった。
 
「その……はじめまして。私はヴィルジニー・シャノワール。なんの御用でこちらを訪ねたのかは知らないけど、取り敢えずよろしくお願いするわ」

「も、勿論です! ボクはロガン。こ、こちらこそよろしくお願いします!!」

 ロガンの本性を知らないヴィルジニーは優雅に挨拶をする。
 それに、まるで突然好青年にでもなったかのような気持ち悪い上目遣いで挨拶を返すロガン。
 いや、お前誰だよ!

「そ、そ、その! 女神様は! なぜこんな廃屋に? アルコ君がなにか粗相を致しましたでしょうか? でしたらボクから言って聞かせますよ。ボクは彼とはほら、無二の親友ですから!」

 いや、ホントお前誰だ!

 それとお前みたいな親友はこっちから願い下げだから、悍ましいことを言うんじゃねぇよ!
 後、肩を組もうと近づいてくるな。

 オレは渾身の力でロガンの手を払うが、ヤツはまったく気にしない。
 おい、痛覚とかどこいったんだ。
 結構な炸裂音がしたんだけど、一切オレの方を見ないでヴィルジニーしか目に入ってないんだけど……。

「ん? アルコには別に迷惑はかけられてないわよ? むしろ私が押しかけたんだもの。迷惑をかけたのも私だわ」

「へ? ……押し、かけ、た?」

「ええ、一緒に住んでるもの」

「こ、こ、ここでですか? このボロ家でアルコと一緒に?」

「そうよ? 私からお願いしたの」

「…………」

 ロガンの動きが完全に止まる。
 
 ゆっくりとこちらに振り返る。
 それは血の涙でも流しそうな凄い形相だった。
 この世のすべてを憎むような怨嗟の表情。

「ぐ、ぐ、ぐぅぅぅぅ」

 ロガンの取り巻きたちもあまりの迫力に最早存在感を無くし隠れることしかできない。
 いや、アイツらは元からそんな奴らか。

 ともかくロガンは並々ならぬ想いをヴィルジニーに向けていたようだ。
 そして、その想いの矛先は一緒に生活を共にしているオレに今度は向けられている。

 純粋な殺意となって。

「オマエェェ、オマエ如きがボクの女神様と一緒に生活しているだとぉぉぉ」

 地の底から這い上がるような声だった。
 
「薄汚い“ゴミ恩恵”のお前如きが、女神様と共にいることなど許されないだろうがぁぁぁ。誰の許可を得てここで過ごしていると思ってるんだぁ! ボクの、このボクの温情でここに住まわしてやってるんだぞぉ! それがなぜわからない! お前なんか大人しく野垂れ死んでいればいいものを、ボクの逆鱗に触れやがって、金の期日なんてどうでもいい、追い出してやる! 追い出してやるぞ!」

 激昂するロガン。
 髪を振り乱し、目は血走り、思い通りにならない事態に地団駄を踏む。
 それは正しく発狂だった。
 怒りを全身から表していた。

 だが、そんなロガンの激情の渦を……オレは切り裂く。

「約束だろ」

「約束ぅ? なんのことだ?」

「土地の売買だよ。オレに金貨三千枚で売るとお前は約束した」

「そんなもの関係ない。関係ないんだよ! そもそもお前なんか“ゴミ恩恵”と――――」

「いいのか? お前商人だろ? 書類の上での約束だ。それを自ら破るのか?」

「ぐ……う……」

 ロガンは商人だ。
 正確には商人一家の一人息子。
 勿論バカ息子だが……商売の上での約束を自ら故意に破ることなど出来はしない。

 そんなことをすれば商会の名は地に落ちる。
 なぜなら土地売買の約束は、商会を運営するトップであるロガンの父を交えて行われたものだからだ。

 ロガンはこんなだが、その祖父が爺さんと知り合いだったように、ロガンの父も悪い人ではない。
 ただ優しくもないだけだ。
 ロガンがオレに吹っかけた金貨三千枚もビタ一文まけることはなかった。

 しかし、商人としては非常に厳しい人だ。
 ロガンの一時の癇癪で約束を破棄したと知ったら、ロガンはこの先商会での居場所を失う。
 信用で成り立つ商売において、自ら結んだ約束を破棄する者をロガンの父は許しはしないだろう。
 それどころか、どんな目に会わされるかわかったものじゃない。

 それに気づいたからこそロガンは怒りに狂っていても、僅かに冷静さを取り戻していた。

 さて、ここからはオレのターンだ。

 ボロクソに言ってくれた礼をしないとな。

「ロガン」

「な、なんだ……」

「お前は少し黙ってろ! 催促されなくとも金は必ず用意してやる!」

「な、なんだと!?」

「ヴィルジニーはオレの、オレたちの仲間だ! お前の女神なんかじゃない! オレたちは必ず目標に到達する! だから期日まで大人しく待っていろ!」

「お、お前如きがっ、お前如きがっ……ク、クソ」

 反論もできないロガンは取り巻きに連れられ悔しそうに去っていった。

 その背を見て思う。

 誰だろうとオレたちの道を阻ませない。

 オレは得た。

 真に信頼できる仲間を。
 
 だからこそ、仲間と共に前に進む。

 この幸福な時間を誰にも奪わせはしない。
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