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救出されたシャナは聞いていたラルド侯爵家の悪事を全て教会にて証言をした。
そして、シャナが記憶を取り戻したのは、全てが終わった後だった。
修道院に戻った途端、貴族令嬢であった頃の記憶が戻ってきたのである。
もちろん、馬車の事故の後の記憶も残ったままで。
今回の騒動のきっかけを作り、貴族派筆頭の悪事を裁いた立役者ということで、シャナは一躍有名になってしまった。
婚約者を奪われたとばかり思っていたが、実際は婚約者の方が自分を裏切っていたとは思わなかった。
そして、フィンセントがあんなに執拗にセシリアを口説いていた理由は、フィンセントの取り調べで判明した。
彼はシャナの実家である伯爵家の空白になった爵位を狙っていたのである。
財産を奪っただけでは飽き足らず、セシリアがシャナの替え玉となり婚約者であったフィンセントに爵位を譲るよう証言させようと企んでいたのだ。
子爵令息であるというだけではなく、伯爵という確固たる身分が欲しかったのだろう。
記憶を失っているとはいえ、シャナ本人にそんな詐欺を働かそうというのだから、間抜けな話である。
一夜にして貴族の勢力図が塗り替わってしまった。
ラルド侯爵家に没落させられた家門はシャナの家だけではなかったため、それらの家が団結し、集団で訴訟が行われることになった。
復権と財産を戻されることとなるため、シャナは現在暮らす修道院から離れ、貴族として取り戻した屋敷に戻ることになった。
修道女見習いセシリアはこの世に存在しなくなったのである。
修道院から離れる日、シャナはセントルイス修道院の修道女たちに頭を下げていた。
「今までお世話になりました。そして、あの手紙に気づいてくださってありがとうございます」
結局は、あのシャナの助けを呼ぶ手紙に修道院の人達が気づいてくれなければ、事件は無事に解決できなかったのだ。
救護院の看護師が見せていたように、貴族が平民に興味を持つことを玉の輿と思ってしまわれていれば、あの手紙の真意に気づけなかっただろうから。
シャナの礼に修道女たちは首を振った。
「これも貴方が神の僕として過ごしてきていたことの積み重ねです。あの短期間でまだ見習いだったとはいえ、貴方は神の花嫁として神に見守られていたのでしょう。なにより貴方の知識がなかったら、あの手紙を書けませんでしたしね」
そう修道女長が笑うのを、シャナは黙って微笑んで受け止めていた。
聖書に対する知識は確かにあったかもしれない。しかしそれはシャナが神をそれほど信じていない時、貴族令嬢としてつちかった賜物であって、修道院で得た物ではなかった。
それに、彼女たちは知らない。シャナがずっと神に祈るふりをして、あの人達の不幸を望んでいたということを。
なのに何も知らない修道女たちは、素直にシャナを祝福してくれていたことがどこか申し訳ない気がした。
「でも結果として修道女見習いのままでよかったと思うわ。これからの貴方の幸せを祈ります」
まだ見習いだったからこそ、容易に還俗できて、伯爵令嬢に戻れたのだから。このことも含めて、あの呪いの言葉を神が聞き届けてくださったとしか思えなかった。
「全て神の御心のままに」
そうシャナは晴れやかに笑う。
今度からは神の前では心からの感謝の祈りを捧げられるようになる予感を感じながら。
そして、シャナが記憶を取り戻したのは、全てが終わった後だった。
修道院に戻った途端、貴族令嬢であった頃の記憶が戻ってきたのである。
もちろん、馬車の事故の後の記憶も残ったままで。
今回の騒動のきっかけを作り、貴族派筆頭の悪事を裁いた立役者ということで、シャナは一躍有名になってしまった。
婚約者を奪われたとばかり思っていたが、実際は婚約者の方が自分を裏切っていたとは思わなかった。
そして、フィンセントがあんなに執拗にセシリアを口説いていた理由は、フィンセントの取り調べで判明した。
彼はシャナの実家である伯爵家の空白になった爵位を狙っていたのである。
財産を奪っただけでは飽き足らず、セシリアがシャナの替え玉となり婚約者であったフィンセントに爵位を譲るよう証言させようと企んでいたのだ。
子爵令息であるというだけではなく、伯爵という確固たる身分が欲しかったのだろう。
記憶を失っているとはいえ、シャナ本人にそんな詐欺を働かそうというのだから、間抜けな話である。
一夜にして貴族の勢力図が塗り替わってしまった。
ラルド侯爵家に没落させられた家門はシャナの家だけではなかったため、それらの家が団結し、集団で訴訟が行われることになった。
復権と財産を戻されることとなるため、シャナは現在暮らす修道院から離れ、貴族として取り戻した屋敷に戻ることになった。
修道女見習いセシリアはこの世に存在しなくなったのである。
修道院から離れる日、シャナはセントルイス修道院の修道女たちに頭を下げていた。
「今までお世話になりました。そして、あの手紙に気づいてくださってありがとうございます」
結局は、あのシャナの助けを呼ぶ手紙に修道院の人達が気づいてくれなければ、事件は無事に解決できなかったのだ。
救護院の看護師が見せていたように、貴族が平民に興味を持つことを玉の輿と思ってしまわれていれば、あの手紙の真意に気づけなかっただろうから。
シャナの礼に修道女たちは首を振った。
「これも貴方が神の僕として過ごしてきていたことの積み重ねです。あの短期間でまだ見習いだったとはいえ、貴方は神の花嫁として神に見守られていたのでしょう。なにより貴方の知識がなかったら、あの手紙を書けませんでしたしね」
そう修道女長が笑うのを、シャナは黙って微笑んで受け止めていた。
聖書に対する知識は確かにあったかもしれない。しかしそれはシャナが神をそれほど信じていない時、貴族令嬢としてつちかった賜物であって、修道院で得た物ではなかった。
それに、彼女たちは知らない。シャナがずっと神に祈るふりをして、あの人達の不幸を望んでいたということを。
なのに何も知らない修道女たちは、素直にシャナを祝福してくれていたことがどこか申し訳ない気がした。
「でも結果として修道女見習いのままでよかったと思うわ。これからの貴方の幸せを祈ります」
まだ見習いだったからこそ、容易に還俗できて、伯爵令嬢に戻れたのだから。このことも含めて、あの呪いの言葉を神が聞き届けてくださったとしか思えなかった。
「全て神の御心のままに」
そうシャナは晴れやかに笑う。
今度からは神の前では心からの感謝の祈りを捧げられるようになる予感を感じながら。
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