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レオノーラ……子爵令嬢、ファッションリーダーと呼ばれるほどお洒落好きで上級者
ビビアン…伯爵令嬢。なぜかレオノーラの恰好をパーティーなどで真似してくる女性
***
「レオノーラ、ちょっとこっちにきて!」
馬車を降りようとしたら、待ち構えていた友人のミランダに手招きをされた。
彼女はレオノーラの腕を引き、木陰に連れ込むとそっと耳打ちしてきた。
「貴方の服装も髪型も全部同じ状態でビビアンが会場にいるわよ」
「また?」
(まさか、こんな小さなお茶会でまで、ことごとく真似してくるなんてね)
レオノーラは苦笑を押さえきれなかった。
「ありがとう。でも大丈夫。これくらいのことは想定済みだから。先に休憩室で変えてくるわね」
「さすが準備万端ね。貴方のファッションリーダーっぷりには頭が下がるわ」
「単にお洒落が好きなだけよ」
レオノーラは自分の後ろに控えている侍女の持つ大きな旅行用カバンに目をやった。
その中には化粧道具や替えのドレスに小物類まで一通りそろっていた。
それは淑女の嗜みにしては量が多すぎるだろう。
それもこれもビビアンのせいだ。
「あの娘も同じようにドレスを変えるかもしれないわよ。貴方がオーダーしたもの、全部チェック入れて同じものを買って、貴方が来るパーティーにぶち当てるようにしているみたいだから」
「その調べる労力を他のところに使えばいいのにね」
ミランダはレオノーラについて歩きながら、ビビアンに対して文句を言っている。
家に閉じ込められてあまり外に出られない女性貴族にとって、パーティでのファッションは個性を露わにする大事な機会だ。
それなのに、ビビアンはレオノーラをターゲットにして徹底的に毎回模倣してくる。
最初のうちは「なんかかぶっている?」とだけしか思っていなかったレオノーラだったが、さすがに毎回続けば真似されていることに気づく。
しかし1つの会場の中で、似たドレスを着ているのはあえてお揃いでもしているのでなければ、周囲の失笑を買ってしまう。
どちらかが変更しなければいけないので、お洒落なレオノーラはいつも自分が着替えたりしていた。
とはいっても、レオノーラの家は豊かな家というわけではない。いつも新しいドレスをオーダーできるわけではないのだ。
そこで小物使いや組み合わせを変えたり、メイクや髪型でイメージを変えたりしているのだが、ビビアンは今度はそれすら真似て現れる。
イタチごっこである。
「ビビアンも何を考えているのかしらね。貴方のファッションを全部真似するなんて」
「そうなのよねえ……」
相手が自分を徹底的に真似てくる。それになんのメリットがあるか想像つかないのも不気味な話である。
「真似されたら今度は別のに着替えるわ」
「本当に面倒ね」
ミランダはため息をついていた。
ミランダがレオノーラの友人になったのも、ビビアンに真似されるようになってからだ。
正義感の強い彼女は、ビビアンがレオノーラの真似をしていることに気づき腹を立て、とあるパーティーの真っ最中にレオノーラに自分のドレスを貸したのである。
ドレスは資産にもなりうる高価なものだ。随分と思い切ったことをしたものである。
ミランダのワードローブなんてチェック入れていないビビアンはさすがにそれを模倣することができなかったため、その時はそのまま何事もなく終わったのだが。
それからも、何かと小物を貸したりしてくれるようになり、対ビビアンの戦友のようになっていた。
「そうね。でも結構楽しいのよね」
「貴方はのんきすぎるわよ」
レオノーラはミランダをなだめるように微笑んだ。
ビビアンの行動は不気味ではあったが、お洒落をすることが元々大好きなレオノーラだ。
少ない手持ちを工夫して思いがけない組み合わせを発見したり、父や兄から譲り受けた男物を取り入れたりして個性を出す作業をしたり、ドレスを縫い直してアレンジしたりするのは、楽しく思えることだった。
ビビアン…伯爵令嬢。なぜかレオノーラの恰好をパーティーなどで真似してくる女性
***
「レオノーラ、ちょっとこっちにきて!」
馬車を降りようとしたら、待ち構えていた友人のミランダに手招きをされた。
彼女はレオノーラの腕を引き、木陰に連れ込むとそっと耳打ちしてきた。
「貴方の服装も髪型も全部同じ状態でビビアンが会場にいるわよ」
「また?」
(まさか、こんな小さなお茶会でまで、ことごとく真似してくるなんてね)
レオノーラは苦笑を押さえきれなかった。
「ありがとう。でも大丈夫。これくらいのことは想定済みだから。先に休憩室で変えてくるわね」
「さすが準備万端ね。貴方のファッションリーダーっぷりには頭が下がるわ」
「単にお洒落が好きなだけよ」
レオノーラは自分の後ろに控えている侍女の持つ大きな旅行用カバンに目をやった。
その中には化粧道具や替えのドレスに小物類まで一通りそろっていた。
それは淑女の嗜みにしては量が多すぎるだろう。
それもこれもビビアンのせいだ。
「あの娘も同じようにドレスを変えるかもしれないわよ。貴方がオーダーしたもの、全部チェック入れて同じものを買って、貴方が来るパーティーにぶち当てるようにしているみたいだから」
「その調べる労力を他のところに使えばいいのにね」
ミランダはレオノーラについて歩きながら、ビビアンに対して文句を言っている。
家に閉じ込められてあまり外に出られない女性貴族にとって、パーティでのファッションは個性を露わにする大事な機会だ。
それなのに、ビビアンはレオノーラをターゲットにして徹底的に毎回模倣してくる。
最初のうちは「なんかかぶっている?」とだけしか思っていなかったレオノーラだったが、さすがに毎回続けば真似されていることに気づく。
しかし1つの会場の中で、似たドレスを着ているのはあえてお揃いでもしているのでなければ、周囲の失笑を買ってしまう。
どちらかが変更しなければいけないので、お洒落なレオノーラはいつも自分が着替えたりしていた。
とはいっても、レオノーラの家は豊かな家というわけではない。いつも新しいドレスをオーダーできるわけではないのだ。
そこで小物使いや組み合わせを変えたり、メイクや髪型でイメージを変えたりしているのだが、ビビアンは今度はそれすら真似て現れる。
イタチごっこである。
「ビビアンも何を考えているのかしらね。貴方のファッションを全部真似するなんて」
「そうなのよねえ……」
相手が自分を徹底的に真似てくる。それになんのメリットがあるか想像つかないのも不気味な話である。
「真似されたら今度は別のに着替えるわ」
「本当に面倒ね」
ミランダはため息をついていた。
ミランダがレオノーラの友人になったのも、ビビアンに真似されるようになってからだ。
正義感の強い彼女は、ビビアンがレオノーラの真似をしていることに気づき腹を立て、とあるパーティーの真っ最中にレオノーラに自分のドレスを貸したのである。
ドレスは資産にもなりうる高価なものだ。随分と思い切ったことをしたものである。
ミランダのワードローブなんてチェック入れていないビビアンはさすがにそれを模倣することができなかったため、その時はそのまま何事もなく終わったのだが。
それからも、何かと小物を貸したりしてくれるようになり、対ビビアンの戦友のようになっていた。
「そうね。でも結構楽しいのよね」
「貴方はのんきすぎるわよ」
レオノーラはミランダをなだめるように微笑んだ。
ビビアンの行動は不気味ではあったが、お洒落をすることが元々大好きなレオノーラだ。
少ない手持ちを工夫して思いがけない組み合わせを発見したり、父や兄から譲り受けた男物を取り入れたりして個性を出す作業をしたり、ドレスを縫い直してアレンジしたりするのは、楽しく思えることだった。
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