2 / 5
2
しおりを挟む
ビビアンの実家の伯爵家は巷でも有名な富豪である。
なので、きっとすぐに目にしたレオノーラと同じドレスが縫えるよう、ある程度の布も確保しているのだろう。
実際、ビビアンの目自体はよいのだ。
見ただけでレオノーラのコーディネートを覚え、細かいデザインを盗み、それを家に常駐しているお針子に伝えられているのだから、頭もいいのではないかとレオノーラは思っている。
その努力の方向性が間違っているのがもったいないのであったが。
着てきたドレスをカバンにいれさせ、まるっきり違うドレスで現れたレオノーラを、ビビアンが火の点くような視線で見つめているのを感じるが、それを無視してお茶会の席に現われた。
あっという間にレオノーラの周囲には人が集まってきた。
ファッションに詳しいレオノーラのアドバイスを聞きたくて待ち構えていたのだ。レオノーラの色彩感覚やバランスのアドバイスを守るとぐっと自分が引き立つことを知っているから。
しばらく歓談し、そろそろ帰ろうかという頃だった。
小さく黄色い悲鳴が聞こえた。それは羨ましそうなため息に変わって場に広がっていく。
その様子に気づいたレオノーラがそちらを見ると、見覚えのある長身の男性が自分に向かってまっすぐ歩いてきていた。
「あらフィリップ……迎えに来てくれたの?」
「もちろん」
今日は女性だけの集まりだが、さりげなく自分の男を見せびらかして牽制する場でもある。
婚約者や兄などに迎えに来させて、自分と縁があるということをアピールしたりするのだ。
レオノーラの場合は、フィリップが勝手に迎えに来ているだけであって、自分から頼んだりするようなことはしない。
フィリップは伯爵家の令息で幼なじみであり、いわゆるレオノーラの取り巻きの一人であった。
幼馴染で親同士も知り合いという立場を活かして、フィリップは周囲の取り巻きより頭1つ分飛び出たようにレオノーラに近い距離感の男ではあったが、レオノーラと恋人同士というわけではない。
フィリップはレオノーラに近づくと腕を出し、エスコートをする。
「今日も綺麗だね」
「ふふ、ありがとう」
レオノーラは目の端でビビアンを捕らえる。そのどこか悔しそうな表情を見て、ふっと思った。
(ビビアンって、フィリップのことが好きなのかしら)
フィリップがレオノーラにぞっこんなのは昔から有名な話だが、容姿端麗で将来は伯爵家を継ぐことが運命づけられている彼を慕う女性は多いだろう。
ビビアンはフィリップが惚れているレオノーラの真似をしてれば、彼の好みの女になれて、フィリップの恋人になれるとでも思っているのだろうか。
(でも、私には関係ないわね)
それはあくまでもフィリップとビビアンの問題で、レオノーラが関与するものではないのだから。
しかし、しばらくすると、そうもいっていられない状況になってしまった。
『ビビアンのドレスのデザインをレオノーラが盗んだり、ファッションの真似をいつもしている』と、ビビアンが吹聴しだしたのだ。
「なんでそんな真似を私がしなければならないの?」
レオノーラは呆れてその噂を無視していたが、ビビアンの家の発言力もあり、まことしやかな噂となって周囲に流れだしてしまった。
レオノーラの方がいつも一歩先んじて装っていることなど、二人を比べて注視している人でないと気づけない。
しかも、とうとう問題に直面せざるを得ない時がきた。
レオノーラとビビアンの両方ともが招待され、参加した宮中園遊会で、二人が着ている海のように鮮やかな藍色のドレスがまるっきり同じだったのである。
「これはブティックで仕立てさせた新作のマーメイドラインのドレスよ! デザインを盗んだわね!」
そう声高に言いビビアンはレオノーラを強く非難する。
レオノーラの方は、どこで自分のドレスのデザインが漏れたのかしら、きっとゴミ捨て場辺りだろうと呑気に思っていた。
レオノーラはビビアンのようにブティックで作らせたわけでなく、自分でデザインをして、自分の家で仕立てさせたドレスなので、オリジナルのデザインであるという証拠を持つわけではない。
あまりにも堂々としたビビアンの態度に、周囲がざわついた。
なので、きっとすぐに目にしたレオノーラと同じドレスが縫えるよう、ある程度の布も確保しているのだろう。
実際、ビビアンの目自体はよいのだ。
見ただけでレオノーラのコーディネートを覚え、細かいデザインを盗み、それを家に常駐しているお針子に伝えられているのだから、頭もいいのではないかとレオノーラは思っている。
その努力の方向性が間違っているのがもったいないのであったが。
着てきたドレスをカバンにいれさせ、まるっきり違うドレスで現れたレオノーラを、ビビアンが火の点くような視線で見つめているのを感じるが、それを無視してお茶会の席に現われた。
あっという間にレオノーラの周囲には人が集まってきた。
ファッションに詳しいレオノーラのアドバイスを聞きたくて待ち構えていたのだ。レオノーラの色彩感覚やバランスのアドバイスを守るとぐっと自分が引き立つことを知っているから。
しばらく歓談し、そろそろ帰ろうかという頃だった。
小さく黄色い悲鳴が聞こえた。それは羨ましそうなため息に変わって場に広がっていく。
その様子に気づいたレオノーラがそちらを見ると、見覚えのある長身の男性が自分に向かってまっすぐ歩いてきていた。
「あらフィリップ……迎えに来てくれたの?」
「もちろん」
今日は女性だけの集まりだが、さりげなく自分の男を見せびらかして牽制する場でもある。
婚約者や兄などに迎えに来させて、自分と縁があるということをアピールしたりするのだ。
レオノーラの場合は、フィリップが勝手に迎えに来ているだけであって、自分から頼んだりするようなことはしない。
フィリップは伯爵家の令息で幼なじみであり、いわゆるレオノーラの取り巻きの一人であった。
幼馴染で親同士も知り合いという立場を活かして、フィリップは周囲の取り巻きより頭1つ分飛び出たようにレオノーラに近い距離感の男ではあったが、レオノーラと恋人同士というわけではない。
フィリップはレオノーラに近づくと腕を出し、エスコートをする。
「今日も綺麗だね」
「ふふ、ありがとう」
レオノーラは目の端でビビアンを捕らえる。そのどこか悔しそうな表情を見て、ふっと思った。
(ビビアンって、フィリップのことが好きなのかしら)
フィリップがレオノーラにぞっこんなのは昔から有名な話だが、容姿端麗で将来は伯爵家を継ぐことが運命づけられている彼を慕う女性は多いだろう。
ビビアンはフィリップが惚れているレオノーラの真似をしてれば、彼の好みの女になれて、フィリップの恋人になれるとでも思っているのだろうか。
(でも、私には関係ないわね)
それはあくまでもフィリップとビビアンの問題で、レオノーラが関与するものではないのだから。
しかし、しばらくすると、そうもいっていられない状況になってしまった。
『ビビアンのドレスのデザインをレオノーラが盗んだり、ファッションの真似をいつもしている』と、ビビアンが吹聴しだしたのだ。
「なんでそんな真似を私がしなければならないの?」
レオノーラは呆れてその噂を無視していたが、ビビアンの家の発言力もあり、まことしやかな噂となって周囲に流れだしてしまった。
レオノーラの方がいつも一歩先んじて装っていることなど、二人を比べて注視している人でないと気づけない。
しかも、とうとう問題に直面せざるを得ない時がきた。
レオノーラとビビアンの両方ともが招待され、参加した宮中園遊会で、二人が着ている海のように鮮やかな藍色のドレスがまるっきり同じだったのである。
「これはブティックで仕立てさせた新作のマーメイドラインのドレスよ! デザインを盗んだわね!」
そう声高に言いビビアンはレオノーラを強く非難する。
レオノーラの方は、どこで自分のドレスのデザインが漏れたのかしら、きっとゴミ捨て場辺りだろうと呑気に思っていた。
レオノーラはビビアンのようにブティックで作らせたわけでなく、自分でデザインをして、自分の家で仕立てさせたドレスなので、オリジナルのデザインであるという証拠を持つわけではない。
あまりにも堂々としたビビアンの態度に、周囲がざわついた。
55
あなたにおすすめの小説
姉が私の振りして婚約者に会ってたので、罠に嵌めました。
coco
恋愛
姉は私の振りをして、婚約者を奪うつもりらしい。
以前から、私の婚約者とデートを繰り返していた姉。
今まで色んな物をあなたに奪われた…もう我慢の限界だわ!
私は姉を罠に嵌め、陥れることにした。
闇から立ち上がった私の、復讐劇が始まる─。
死のうと思って家出したら、なんか幸せになったお話
下菊みこと
恋愛
ドアマットヒロインが幸せになるだけ。
ざまぁはほんのり、ほんのちょっぴり。
ご都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
元夫をはじめ私から色々なものを奪う妹が牢獄に行ってから一年が経ちましたので、私が今幸せになっている手紙でも送ろうかしら
つちのこうや
恋愛
牢獄の妹に向けた手紙を書いてみる話です。
すきま時間でお読みいただける長さです!
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
婚約者には既に美しい妻が居た…私を騙そうとした愚か者たちには、天罰が下りました。
coco
恋愛
婚約者には、既に美しい妻が居ました。
真実を知った私は、嘆き悲しみましたが…二人には天罰が下ったようです─。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる