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今日も隣で寝息をたてて
今日も隣で寝息をたてて #3
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映画は流したまま、テレビからこぼれる光を頼りに寝室へと向かう。ベッドにそっと捺生を下ろした。寝室はフロアライトが灯されており、暖房も入っていて暖かい。準備をしてくれていた数十分前の捺生に、心のなかで感謝の言葉を告げる。
「なっちゃん、眠くなったら寝ていいからね」
「……起こしてくれないと怒るからな」
拗ねるような表情を浮かべた捺生に、今日何度目か分からないキスをされる。彼からキスをしてもらえる度に奇跡みたいだ、と思うのをやめられない。
一緒の部屋で暮らしていても手を繋いでキスをしても、両頬をひっぱりたい気持ちになる。墓場まで持っていくつもりだった初恋は、赤く膨れて多分ただれてしまっているのだ。厄介だと誰よりも僕自身が思うのに、思考は止められそうにない。
重ねたくちびるの隙間からこぼれ落ちる捺生の吐息に色っぽさを感じて、ばくばくと心臓がうるさくなる。彼に聞こえてしまわないだろうか。
キスをしながらそっとパシャマのボタンを外した。空気に触れた捺生の胸の突起に指先を滑らせると「ん……、」と声が落ちる。彼が胸への刺激で気持ちよくなるようになったのは完全に僕の影響だ。僕が触るたびに素直な反応を返してくれる彼に優越感のような感情でいっぱいになる。びくびくと身体を震わせる捺生は誰にも見せたくない。もっとたくさん気持ちよくさせたい。
芯を持ち始めた突起の片方を爪先でかりかりと柔く引っ掻きながら、もう片方の突起を口に含んで舌で転がす。僕の頭を軽く掴みながら「っみお、……あ、」とちいさく声をこぼす捺生に口角が上がった。
「ん、なっちゃん、きもちい?」
「……ん、んん」
僕の問いかけに言葉が出せずにこくこくと頷く捺生に、ゆるゆるに緩んだ顔が直らない。「俺の胸いじってて楽しいの……?」とまだ胸で気持ちよくなれなかった頃の捺生に聞かれたことがあるけれど、あの時から今までずっと、毎回楽しくてたまらなかった。
するするとてのひらを滑らせて捺生の肌を撫でる。どこもかしこもすべすべだ。ほんのりと入浴剤の匂いがする。僕も同じ匂いがするのかな。
そんなことを考えながら捺生の腹を撫でて腰を撫でて、パンツと下着を一緒にずり下ろす。性器にゆっくりと指を這わせると、ゆるく勃ちあがっているのが分かった。胸から口を離して、ちゅっと音をたててくちびるにキスをする。
「なっちゃん、舐めていい?」
「いいけど、出すと眠くなるから途中でやめて」
「寝ちゃっていいよ」
「嫌だ。みお、お腹すいてるだろ」
最後にセックスしたのちょっと前だし、と続ける捺生の言葉を遮るようにくちびるをくっつけあわせる。
「こうやってさ、キスしてくれてるでしょ。お腹、すいてはいないよ」
「……でも、満腹ではないよね」
むっとした表情を浮かべる捺生に、へら、と笑い返すことしかできなかった。
捺生のことが大好きだ。こんなに大事で夢中になれるひとはできっこないと確信している。自分のことよりも大切だからこそ、彼には自分のことをなによりも大切にしてほしいのだ。
恋人として、彼に触れたいし抱きたいと思う。
けれど、淫魔の血が流れている僕が彼を「抱く」という行為をすると、単なる愛情表現だけにはならない。どうしたって「食事」という要素がつきまとってしまうのだ。捕食者と被食者の関係だ。
「精気をもらうのは俺からだけにしてほしいっていうのは、俺のわがままだから」と彼は言うけれど、僕から見ると自己犠牲でしかなかった。誰よりも大切にしたいし大切にしてほしいのに、他でもない僕が彼を傷つけている。
だから僕は、捺生を抱きたくなかった。
相反する感情で胸のなかがぐちゃぐちゃになる。ただただ彼のことが好きなだけなのに。いつも痛くて痛くて仕方がなかった。
今日もじくじくと痛む胸の奥には気がつかないふりをして、ずりずりと身体を移動させる。捺生の性器を指先で擦ると、びくっと大きく彼の身体が跳ねた。捺生が特に好きな部分を擦ると、いつもよりも高い声が彼の口からこぼれてどきどきする。この声を出させているのは自分なのだと思うとたまらない。
先っぽにちゅ、とキスをしてからぱくりと咥え込む。舌を使って刺激をしながらじゅるじゅると啜るとひときわ高い声が漏れた。すぐにくぐもった音に変わる。顔を上げて捺生を見やると、くちびるをぎゅっと噛んでいる姿が目に入る。
「なっちゃん、声我慢しないで。くちびる、痕ついちゃう」
「だ、って、あ、……ぅ」
ぺろぺろとくちびるを舐めると薄く隙間があいた。そこから舌を差し込む。どんな砂糖菓子よりも甘い。僕の体液を一定量以上摂取した捺生の瞳がとろんと蕩け始めているのが分かった。
彼は「みおが満腹になれて、気持ちよくなるのが一番いいから」と、僕のせいでこうなってしまうことにも肯定的だ。けれど僕は、毎回罪悪感が止まらない。それなのに嬉しく感じてしまう気持ちも確かにあって、もうめちゃくちゃだ。
キスをしながら捺生の性器を強めに握って扱く。身を捩る捺生をぐっと押さえつけて逃さない。
「んん、ん……っ」と鼻から音をこぼした捺生がびくびくと身体を震わせた。彼の性器からどろどろと垂れ落ちた精液が僕の指にまとわりつくのが分かる。擦りつけるように手を動かすと、くちびるを離した捺生に「イったから、もう、やめ……っ!」と怒られてしまったので手を止める。
はあ、はあ、と肩で息をする捺生に「途中でやめてって言ったのに……」と恨めしそうに言われてしまったけれど、にっこりと笑って躱した。
「なっちゃん、もう眠くなった?」
「眠くない。だから挿れていいよ」
「本当?無理しなくていいからね」
「……みお。俺のこと、抱きたくない?」
「そんなことあるわけないでしょ」
すらすらと口から出てきた言葉は本音であるが嘘でもある。
たぶんきっと、捺生は薄々気づいているのだろう。それでも見ないふりをしてくれているのは彼のやさしさだ。
「じゃあほら、もう挿入るから」
「え、」
「風呂で準備したし……ちょっと待って」
ベッドサイドのチェストに手を伸ばしてごそごそと漁り、いつも使っているローションを取り出す彼から目を逸らせない。かぱ、と蓋を開けててのひらにとろとろと垂らしたローションを指に纏わりつかせて、後ろにつぷり、と突き入れた。
「っ、なっちゃん、」
ぐちゅぐちゅと音をたてながら捺生の指を二本も咥え込むそこに目が釘付けになる。あたたかなそこに挿れたら、気持ちもお腹も十二分に満たせることを知ってしまっている身体がずくりと疼くのが分かった。
「……僕がやるからっていつも言ってるのに」
「ごめん、待ちきれそうになかったから」
先に準備しちゃった、と言う捺生はまぶたを閉じてはー、はー、と熱い息をこぼす。こんな状態で、何食わぬ顔で一緒に夕飯を食べて映画を観ていたのか、と思うとどうにかなりそうだった。
ローションを掬って、捺生の指に自分の指を添えるように差し挿れる。ずぶずぶと難なく咥え込まれた。捺生の性感帯に触れないように注意しながらゆっくりと抜き差しをすると、いやいやと言うように首を振られる。
「ごめんなっちゃん、しんどい?」
すぐに指を引き抜いて捺生の顔を覗き込むと「わざとだな……」と言われた。
「だってなっちゃん、触ったらすぐイっちゃうでしょ」
「それは、そうだけどさ……みお、早く挿れて」
うー、と唸った捺生に直接的におねだりされて、我慢とか葛藤とか罪悪感とか、そういうものは全部どこかに吹っ飛んでいってしまった。捺生に触れたい。受け入れてほしい。ごめん、ごめんね、なっちゃん。
念のためローションを注ぎ足してから、押し当てた性器をゆっくりと彼のなかへと沈み込ませる。薄い膜越しでも溶けてしまいそうな熱に正常な思考が焼かれそうになりながら、自分を落ち着かせるために大きく息を吐いた。
「なっちゃん、大丈夫?苦しくない?」
「ん、大丈夫……、ふ」
僕のものが捺生のなかに馴染むまでじっと耐える。僕よりも細い腰を掴んで引き寄せて、めちゃくちゃに打ちつけたくなる衝動をぐっと自分の奥底に押し込んだ。
伸ばされたてのひらが僕の頬に触れる。はあ、と熱い息を吐き出しながら「動いていいよ」と言われて、ゆっくりと動き始めた。指では触れないように気をつけてところをトントンと突くと「あ、っあ、ん、そこ……」と喘ぎ声が漏れる。
「ん、なっちゃん、気持ちいいね」
「んん、ん、きもちい……」
言い聞かせるようにそう言いながら同じところを執拗に責めたてると、どろどろに溶けた捺生が僕にしがみつきながらもっともっととねだる。くっつけ合わせた皮膚の温度が心地よくてなんだか泣きそうになった。このまま全部全部溶け合ってひとつになれればいいのに。そんな夢以外ありえないことを思いながら、大好きで大切でたまらない恋人を僕は今日も食む。
◇ ◆ ◇
「なっちゃん、お風呂どうする?動ける……?」
加減したつもりだが、つい何度も抱いてしまった。疲れがたまっているであろう捺生を早く寝かせてあげたいと、途中までは思っていたのに。今となっては完全に言い訳だ。頭を抱えることしかできない。
「べたべたになっちゃったし、そのままだと気持ち悪いよね……」
完全に僕のせいだが、捺生は身体を動かすのが辛い状態だろう。申し訳なさにずきずきと胸が痛む。彼に許可されたとはいえ、これはさすがにやりすぎた。
お湯で流してきれいにしたいだろうけれど、風呂場まで行けるだろうか。とりあえず温めたタオルで拭こうか、と考えながら彼を見やる。ばちり、と視線がかち合って、パッとそらしてしまった。
「みお、……っ、けほ」
「ごめん、水持ってくるね!」
「いい、待って」
「っうん?なに?」
「風呂」
「うん」
「俺のこと、連れていってくれないの?」
予約したのに、と言われて、数時間前の彼との会話が脳裏に過ぎる。ぶわ、と顔中に熱が集まるのが分かった。あれはそういう意味だったのか。
「連れてく、連れていきます。お風呂入れさせてください!ローションも掻き出すから」
「それはいい、自分でやる」
「準備させちゃったし、それくらいは僕にさせてよ」
「うーん……」
どうしようかな、と悩んでいる素振りで言った捺生は「じゃあ、今回は頼んだ」と掠れた声で呟いて、すり、と猫のように僕に身体を擦り寄せる。思わず変な声が漏れそうになった。破壊力がすごい。
残り少ない今日は眠るまでずっとうんと甘やかそうと決めて、捺生の身体を抱き上げた。
「なっちゃん、眠くなったら寝ていいからね」
「……起こしてくれないと怒るからな」
拗ねるような表情を浮かべた捺生に、今日何度目か分からないキスをされる。彼からキスをしてもらえる度に奇跡みたいだ、と思うのをやめられない。
一緒の部屋で暮らしていても手を繋いでキスをしても、両頬をひっぱりたい気持ちになる。墓場まで持っていくつもりだった初恋は、赤く膨れて多分ただれてしまっているのだ。厄介だと誰よりも僕自身が思うのに、思考は止められそうにない。
重ねたくちびるの隙間からこぼれ落ちる捺生の吐息に色っぽさを感じて、ばくばくと心臓がうるさくなる。彼に聞こえてしまわないだろうか。
キスをしながらそっとパシャマのボタンを外した。空気に触れた捺生の胸の突起に指先を滑らせると「ん……、」と声が落ちる。彼が胸への刺激で気持ちよくなるようになったのは完全に僕の影響だ。僕が触るたびに素直な反応を返してくれる彼に優越感のような感情でいっぱいになる。びくびくと身体を震わせる捺生は誰にも見せたくない。もっとたくさん気持ちよくさせたい。
芯を持ち始めた突起の片方を爪先でかりかりと柔く引っ掻きながら、もう片方の突起を口に含んで舌で転がす。僕の頭を軽く掴みながら「っみお、……あ、」とちいさく声をこぼす捺生に口角が上がった。
「ん、なっちゃん、きもちい?」
「……ん、んん」
僕の問いかけに言葉が出せずにこくこくと頷く捺生に、ゆるゆるに緩んだ顔が直らない。「俺の胸いじってて楽しいの……?」とまだ胸で気持ちよくなれなかった頃の捺生に聞かれたことがあるけれど、あの時から今までずっと、毎回楽しくてたまらなかった。
するするとてのひらを滑らせて捺生の肌を撫でる。どこもかしこもすべすべだ。ほんのりと入浴剤の匂いがする。僕も同じ匂いがするのかな。
そんなことを考えながら捺生の腹を撫でて腰を撫でて、パンツと下着を一緒にずり下ろす。性器にゆっくりと指を這わせると、ゆるく勃ちあがっているのが分かった。胸から口を離して、ちゅっと音をたててくちびるにキスをする。
「なっちゃん、舐めていい?」
「いいけど、出すと眠くなるから途中でやめて」
「寝ちゃっていいよ」
「嫌だ。みお、お腹すいてるだろ」
最後にセックスしたのちょっと前だし、と続ける捺生の言葉を遮るようにくちびるをくっつけあわせる。
「こうやってさ、キスしてくれてるでしょ。お腹、すいてはいないよ」
「……でも、満腹ではないよね」
むっとした表情を浮かべる捺生に、へら、と笑い返すことしかできなかった。
捺生のことが大好きだ。こんなに大事で夢中になれるひとはできっこないと確信している。自分のことよりも大切だからこそ、彼には自分のことをなによりも大切にしてほしいのだ。
恋人として、彼に触れたいし抱きたいと思う。
けれど、淫魔の血が流れている僕が彼を「抱く」という行為をすると、単なる愛情表現だけにはならない。どうしたって「食事」という要素がつきまとってしまうのだ。捕食者と被食者の関係だ。
「精気をもらうのは俺からだけにしてほしいっていうのは、俺のわがままだから」と彼は言うけれど、僕から見ると自己犠牲でしかなかった。誰よりも大切にしたいし大切にしてほしいのに、他でもない僕が彼を傷つけている。
だから僕は、捺生を抱きたくなかった。
相反する感情で胸のなかがぐちゃぐちゃになる。ただただ彼のことが好きなだけなのに。いつも痛くて痛くて仕方がなかった。
今日もじくじくと痛む胸の奥には気がつかないふりをして、ずりずりと身体を移動させる。捺生の性器を指先で擦ると、びくっと大きく彼の身体が跳ねた。捺生が特に好きな部分を擦ると、いつもよりも高い声が彼の口からこぼれてどきどきする。この声を出させているのは自分なのだと思うとたまらない。
先っぽにちゅ、とキスをしてからぱくりと咥え込む。舌を使って刺激をしながらじゅるじゅると啜るとひときわ高い声が漏れた。すぐにくぐもった音に変わる。顔を上げて捺生を見やると、くちびるをぎゅっと噛んでいる姿が目に入る。
「なっちゃん、声我慢しないで。くちびる、痕ついちゃう」
「だ、って、あ、……ぅ」
ぺろぺろとくちびるを舐めると薄く隙間があいた。そこから舌を差し込む。どんな砂糖菓子よりも甘い。僕の体液を一定量以上摂取した捺生の瞳がとろんと蕩け始めているのが分かった。
彼は「みおが満腹になれて、気持ちよくなるのが一番いいから」と、僕のせいでこうなってしまうことにも肯定的だ。けれど僕は、毎回罪悪感が止まらない。それなのに嬉しく感じてしまう気持ちも確かにあって、もうめちゃくちゃだ。
キスをしながら捺生の性器を強めに握って扱く。身を捩る捺生をぐっと押さえつけて逃さない。
「んん、ん……っ」と鼻から音をこぼした捺生がびくびくと身体を震わせた。彼の性器からどろどろと垂れ落ちた精液が僕の指にまとわりつくのが分かる。擦りつけるように手を動かすと、くちびるを離した捺生に「イったから、もう、やめ……っ!」と怒られてしまったので手を止める。
はあ、はあ、と肩で息をする捺生に「途中でやめてって言ったのに……」と恨めしそうに言われてしまったけれど、にっこりと笑って躱した。
「なっちゃん、もう眠くなった?」
「眠くない。だから挿れていいよ」
「本当?無理しなくていいからね」
「……みお。俺のこと、抱きたくない?」
「そんなことあるわけないでしょ」
すらすらと口から出てきた言葉は本音であるが嘘でもある。
たぶんきっと、捺生は薄々気づいているのだろう。それでも見ないふりをしてくれているのは彼のやさしさだ。
「じゃあほら、もう挿入るから」
「え、」
「風呂で準備したし……ちょっと待って」
ベッドサイドのチェストに手を伸ばしてごそごそと漁り、いつも使っているローションを取り出す彼から目を逸らせない。かぱ、と蓋を開けててのひらにとろとろと垂らしたローションを指に纏わりつかせて、後ろにつぷり、と突き入れた。
「っ、なっちゃん、」
ぐちゅぐちゅと音をたてながら捺生の指を二本も咥え込むそこに目が釘付けになる。あたたかなそこに挿れたら、気持ちもお腹も十二分に満たせることを知ってしまっている身体がずくりと疼くのが分かった。
「……僕がやるからっていつも言ってるのに」
「ごめん、待ちきれそうになかったから」
先に準備しちゃった、と言う捺生はまぶたを閉じてはー、はー、と熱い息をこぼす。こんな状態で、何食わぬ顔で一緒に夕飯を食べて映画を観ていたのか、と思うとどうにかなりそうだった。
ローションを掬って、捺生の指に自分の指を添えるように差し挿れる。ずぶずぶと難なく咥え込まれた。捺生の性感帯に触れないように注意しながらゆっくりと抜き差しをすると、いやいやと言うように首を振られる。
「ごめんなっちゃん、しんどい?」
すぐに指を引き抜いて捺生の顔を覗き込むと「わざとだな……」と言われた。
「だってなっちゃん、触ったらすぐイっちゃうでしょ」
「それは、そうだけどさ……みお、早く挿れて」
うー、と唸った捺生に直接的におねだりされて、我慢とか葛藤とか罪悪感とか、そういうものは全部どこかに吹っ飛んでいってしまった。捺生に触れたい。受け入れてほしい。ごめん、ごめんね、なっちゃん。
念のためローションを注ぎ足してから、押し当てた性器をゆっくりと彼のなかへと沈み込ませる。薄い膜越しでも溶けてしまいそうな熱に正常な思考が焼かれそうになりながら、自分を落ち着かせるために大きく息を吐いた。
「なっちゃん、大丈夫?苦しくない?」
「ん、大丈夫……、ふ」
僕のものが捺生のなかに馴染むまでじっと耐える。僕よりも細い腰を掴んで引き寄せて、めちゃくちゃに打ちつけたくなる衝動をぐっと自分の奥底に押し込んだ。
伸ばされたてのひらが僕の頬に触れる。はあ、と熱い息を吐き出しながら「動いていいよ」と言われて、ゆっくりと動き始めた。指では触れないように気をつけてところをトントンと突くと「あ、っあ、ん、そこ……」と喘ぎ声が漏れる。
「ん、なっちゃん、気持ちいいね」
「んん、ん、きもちい……」
言い聞かせるようにそう言いながら同じところを執拗に責めたてると、どろどろに溶けた捺生が僕にしがみつきながらもっともっととねだる。くっつけ合わせた皮膚の温度が心地よくてなんだか泣きそうになった。このまま全部全部溶け合ってひとつになれればいいのに。そんな夢以外ありえないことを思いながら、大好きで大切でたまらない恋人を僕は今日も食む。
◇ ◆ ◇
「なっちゃん、お風呂どうする?動ける……?」
加減したつもりだが、つい何度も抱いてしまった。疲れがたまっているであろう捺生を早く寝かせてあげたいと、途中までは思っていたのに。今となっては完全に言い訳だ。頭を抱えることしかできない。
「べたべたになっちゃったし、そのままだと気持ち悪いよね……」
完全に僕のせいだが、捺生は身体を動かすのが辛い状態だろう。申し訳なさにずきずきと胸が痛む。彼に許可されたとはいえ、これはさすがにやりすぎた。
お湯で流してきれいにしたいだろうけれど、風呂場まで行けるだろうか。とりあえず温めたタオルで拭こうか、と考えながら彼を見やる。ばちり、と視線がかち合って、パッとそらしてしまった。
「みお、……っ、けほ」
「ごめん、水持ってくるね!」
「いい、待って」
「っうん?なに?」
「風呂」
「うん」
「俺のこと、連れていってくれないの?」
予約したのに、と言われて、数時間前の彼との会話が脳裏に過ぎる。ぶわ、と顔中に熱が集まるのが分かった。あれはそういう意味だったのか。
「連れてく、連れていきます。お風呂入れさせてください!ローションも掻き出すから」
「それはいい、自分でやる」
「準備させちゃったし、それくらいは僕にさせてよ」
「うーん……」
どうしようかな、と悩んでいる素振りで言った捺生は「じゃあ、今回は頼んだ」と掠れた声で呟いて、すり、と猫のように僕に身体を擦り寄せる。思わず変な声が漏れそうになった。破壊力がすごい。
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