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7話
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「ごめんなさい、無かったことにとか、スルーとか、そういう事俺できない。なんであんな事急に言ったのかは分かんないけど、でも好きなんです。…それも、どういう好きかまで分かんなくて」
「綾瀬待って」
「本当に酔って変なこと言ったんじゃないんです、言い方は、変だったかもだけど…。俺黒崎さんのこと相当好きです。好き。分かんないけど大好きでむぐ」
「待っ、一旦ストップ!」
勢いをつけて喋り出した俺の口を黒崎が手で塞いだ。見ていたスマホを放り投げて身体を起こした黒崎は、また変なふうに髪が跳ねていた。
口を塞がれている俺は何も言えなくなってしまって、もがもが返事だけ返す。
「……起き抜けに、告白してくると思わないじゃん」
喋れないからやる事のない俺は黒崎をまじまじと見つめて観察していた。
目を伏せていると二重のラインがくっきり見える。普段は奥二重だったんだなと思って目元を見ていると、じわじわ赤くなっていくのがわかった。耳も頬も、首筋もだ。
顔真っ赤じゃん。黒崎さん照れてる?
そう気がついて、釣られて自分も顔が熱くなった。
「んむむんぐ」
「まだダメだよ」
「むぐむぐ」
「挑戦しようとするなよ、まだお前のターンじゃないからダメ!」
黒崎は自分の顔を隠すようにもう片方の手で覆った。昨日の反応と全然違う。話半分で聴き流されていたから勝手に、こういうコトに慣れきっているんだと思っていた。
ふー、と呼吸を置いて冷静になろうとしているところがまたかわいい。
「……昨日お前ベロベロだったから、その場のノリで大袈裟に言ってるだけだと思ってて聞き流してた」
「むむぐ!」
「ごめんって、ちょっと待って。…お前怖いよ、居ないってこんな素直に言える人」
赤みが引かないどころかますます真っ赤になる。こんな風に余裕のない黒崎さんがめずらしくてちょっとドキドキした。
「…無かったことにしようとしたのはごめん。それは不誠実だったと思う。あとは……まあその、好いてくれてるのは素直に嬉しいと思った」
「むむ」
「あきらめないね、喋るの!わかったもう良いよ」
「ぷは、好きです」
「…………………」
黒崎が眉間に皺を寄せる。呆れたような、でも照れ隠しのような、くすぐったくなる表情だった。
「ありがとう。……嬉しいよ。俺もまあ、結構好きだし」
「……やったー」
「…ただでも、お前の好きと同じかはまだちょっと、分かんない。綾瀬がどう思ってるのかもまだ分かってないけどさ。だから、その…それに応えられるかはちょっと、分かんない」
「…はぁ、なるほど。…これ今何の話してます?」
「は?…付き合う上の話とか?」
「えっそんな考えてくれてたんだ」
「…お前どういうつもりで告白したの?」
「えー、言いたくなったから言っただけです。その後とか何も考えてなかった」
「なんだそれ!!なんなのお前!!うわっ!」
たまらなくなって黒崎に飛びついた。勢い余ってベッドに倒れ込んで、首筋に顔を寄せるとまた甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「いいよ、俺好きって言ってもらえたからもうすごい嬉しいです」
「…でも、お前が言ってくれたほどかは」
「黒崎さん誠実だね。いいよなんだって、ちょっとでも俺のこと好きなら。あーすっごい嬉しい」
「犬みたい」
「それ昨日も言われた気がする」
「柴犬っぽい。尻尾みえるもん」
「でも俺人だから、独占欲はあるし嫉妬もしますよ。多分神田さんとチューしてるところみたら俺また拗ねます。絶対思っちゃうな、俺のこと好きって言ったのに!て」
犬って言われても喜んでるんだからどうしようもない。
「…付き合ったら、そういうの全部辞めてって言って俺のこと縛れるんだよ」
「…そうなんだ。いいなーそれ」
「いいよ、別に」
顔を上げて黒崎の方を見た。
まだ少し頬が赤いまま、今度はちゃんと目が合った。
「いいよって?」
「わざとやってる?…付き合おうかって言ってるの」
「………え。いいの?本当に?」
「うん。もうなんかかわいく見えてきちゃったし」
「…キスしたいです、していいすか」
「もう聞かないでしていいよ。好きにして良いから」
「…なんかそれエロいですね」
「ばか」
俺が顔を近づけると、黒崎さんが目を瞑った。
待ってるんだ、と思ったらグラグラするほど頭に血が登って、勢いのままにキスをしてがち、と歯が当たる音がした。
「いっぱいして慣れよっか」
黒崎はそう言って笑って、クシャクシャと俺の頭を撫でた。
「綾瀬待って」
「本当に酔って変なこと言ったんじゃないんです、言い方は、変だったかもだけど…。俺黒崎さんのこと相当好きです。好き。分かんないけど大好きでむぐ」
「待っ、一旦ストップ!」
勢いをつけて喋り出した俺の口を黒崎が手で塞いだ。見ていたスマホを放り投げて身体を起こした黒崎は、また変なふうに髪が跳ねていた。
口を塞がれている俺は何も言えなくなってしまって、もがもが返事だけ返す。
「……起き抜けに、告白してくると思わないじゃん」
喋れないからやる事のない俺は黒崎をまじまじと見つめて観察していた。
目を伏せていると二重のラインがくっきり見える。普段は奥二重だったんだなと思って目元を見ていると、じわじわ赤くなっていくのがわかった。耳も頬も、首筋もだ。
顔真っ赤じゃん。黒崎さん照れてる?
そう気がついて、釣られて自分も顔が熱くなった。
「んむむんぐ」
「まだダメだよ」
「むぐむぐ」
「挑戦しようとするなよ、まだお前のターンじゃないからダメ!」
黒崎は自分の顔を隠すようにもう片方の手で覆った。昨日の反応と全然違う。話半分で聴き流されていたから勝手に、こういうコトに慣れきっているんだと思っていた。
ふー、と呼吸を置いて冷静になろうとしているところがまたかわいい。
「……昨日お前ベロベロだったから、その場のノリで大袈裟に言ってるだけだと思ってて聞き流してた」
「むむぐ!」
「ごめんって、ちょっと待って。…お前怖いよ、居ないってこんな素直に言える人」
赤みが引かないどころかますます真っ赤になる。こんな風に余裕のない黒崎さんがめずらしくてちょっとドキドキした。
「…無かったことにしようとしたのはごめん。それは不誠実だったと思う。あとは……まあその、好いてくれてるのは素直に嬉しいと思った」
「むむ」
「あきらめないね、喋るの!わかったもう良いよ」
「ぷは、好きです」
「…………………」
黒崎が眉間に皺を寄せる。呆れたような、でも照れ隠しのような、くすぐったくなる表情だった。
「ありがとう。……嬉しいよ。俺もまあ、結構好きだし」
「……やったー」
「…ただでも、お前の好きと同じかはまだちょっと、分かんない。綾瀬がどう思ってるのかもまだ分かってないけどさ。だから、その…それに応えられるかはちょっと、分かんない」
「…はぁ、なるほど。…これ今何の話してます?」
「は?…付き合う上の話とか?」
「えっそんな考えてくれてたんだ」
「…お前どういうつもりで告白したの?」
「えー、言いたくなったから言っただけです。その後とか何も考えてなかった」
「なんだそれ!!なんなのお前!!うわっ!」
たまらなくなって黒崎に飛びついた。勢い余ってベッドに倒れ込んで、首筋に顔を寄せるとまた甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「いいよ、俺好きって言ってもらえたからもうすごい嬉しいです」
「…でも、お前が言ってくれたほどかは」
「黒崎さん誠実だね。いいよなんだって、ちょっとでも俺のこと好きなら。あーすっごい嬉しい」
「犬みたい」
「それ昨日も言われた気がする」
「柴犬っぽい。尻尾みえるもん」
「でも俺人だから、独占欲はあるし嫉妬もしますよ。多分神田さんとチューしてるところみたら俺また拗ねます。絶対思っちゃうな、俺のこと好きって言ったのに!て」
犬って言われても喜んでるんだからどうしようもない。
「…付き合ったら、そういうの全部辞めてって言って俺のこと縛れるんだよ」
「…そうなんだ。いいなーそれ」
「いいよ、別に」
顔を上げて黒崎の方を見た。
まだ少し頬が赤いまま、今度はちゃんと目が合った。
「いいよって?」
「わざとやってる?…付き合おうかって言ってるの」
「………え。いいの?本当に?」
「うん。もうなんかかわいく見えてきちゃったし」
「…キスしたいです、していいすか」
「もう聞かないでしていいよ。好きにして良いから」
「…なんかそれエロいですね」
「ばか」
俺が顔を近づけると、黒崎さんが目を瞑った。
待ってるんだ、と思ったらグラグラするほど頭に血が登って、勢いのままにキスをしてがち、と歯が当たる音がした。
「いっぱいして慣れよっか」
黒崎はそう言って笑って、クシャクシャと俺の頭を撫でた。
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