先輩のことが大大大好きな俺となんだかんだ全部許してくれる先輩

りちょ

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8話

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黒崎夕希
大学3年生 高校時代はバレー部
好きな動物はうさぎ(特にロップイヤー)


綾瀬健太
大学2年生 高校時代は陸上部
好きな動物は大きい犬(特にゴールデンレトリバー)

-------



「綾瀬今日来るの?」

「行きます」

「おっけー、じゃあ一緒に帰ろ」

毎週火曜と隔週木曜の排球サークル。
学業とサークル活動、それからバイトもどちらも優先できるようにと決められた頻度で、気軽に顔を出せるところも俺は気に入っていた。

ただ最近は他大学との合同練習や試合もなく、比較的緩い時期だったため、今日は参加する人数が少なかった。
集まったメンバーで軽くトレーニングをして、あとはのんびり練習をした程度で今日は終わり、着替え途中に黒崎から声をかけられる。

もう更衣室には人が俺たちしか残っていない。
着替え終わった服を畳みつつ荷物をまとめ、ちらっと後ろを見ると、黒崎がまたパズルゲームをぽちぽちプレイして遊んでいた。
広告でよく見かけるくだらないアプリをしょっちゅうインストールしてはすぐに飽きてやめるのを繰り返している黒崎は、いつも違うゲームをやっている。

「綾瀬、こっち見てないで早く終わらせて」

「見てないです」

「いやバレてるから。早く帰ろうよ」

「うー」

大学用に買ったリュックに着替えを急いで詰め込んで、お待たせしましたと黒崎に声をかける。
ん、と返事が返ってきて、黒崎が立ち上がって歩き出した。

こんな風に、サークルがある日はどちらかの家に泊まりに行くことが俺たちの中では決まりになっていた。
少し前に俺が酔った勢いのまま告白して、その次の朝には黒崎がそれを受け入れ、それから何となく決まった流れだった。大体は、大学から近い黒崎の家にお邪魔することが多い。
なんか簡単なのなら作るけど、食べたいのある?と歩きながら黒崎が俺に聞いた。炒飯食べたいと答えると、お前そればっかだねと呆れた顔で黒崎が笑う。
それが嬉しくて幸せで、本当に嬉しくって、飛びついて甘えたい衝動に駆られた。
当然それはしっかり我慢しつつ、頬は緩めたままちょっとだけスキップを混ぜて歩いた。

------

「ただいま~」

「お邪魔しますだろ」

「えへへ、お邪魔します」

ガチャリと黒崎が鍵をかけて、途中スーパーで買った食材を俺に手渡す。

「とりあえず一旦冷蔵庫入れておいて。どこに何入れるとかもう分かるよね」

「ばっちりです。ちゃんと卵も開けて一個一個しまいます」

「偉いじゃん」

「じゃあその前に」

レジ袋を持っていない方の手を、黒崎の肩において引き寄せる。靴を脱ごうとしていて足元が不安定な黒崎が少しよろけたので、背中に腕を回して抱き寄せるようにしてそのままキスをした。

先に玄関から上がっていた分身長差が無くなって、いくらか楽な体制でのキス。角度を変えて何度も重ねて、薄い唇をふにふに確かめるように繰り返した。
背中を叩かれてしぶしぶ口を離す。

「…まだ上がってもないから、待って」

「ずっと我慢してたんだもん」

「ばか」

黒崎が俺の頬を軽くつねってから、ようやく家に上がった。
手を洗って、それから言われた通りに冷蔵庫を開けて食材を詰め込んでいく。
しばらくすると部屋着に着替えた黒崎がきて、その辺はもう使うから置いといていいよと声をかけてくれた。

「もう作るんですか」

「腹減ってるでしょ?先食べちゃおうよ」

「うーん。…うん。そうします」

俺が返事をするのと聞く前に黒崎は準備に取り掛かる。冷凍してあったご飯を温めつつ、買ったばかりのネギを細かく切っていく。トントンまな板から響く音が心地よかった。

部屋着姿をまじまじと眺める。
緩い黒のスウェットと、通気性の良い素材のハーフパンツの格好になることが黒崎は多い。肌の色が白い分、多く襟の空いたスウェットを着ていると首筋や鎖骨が少し見えるのにも妙な色気を感じる。
ネギを切り終えた黒崎がベーコンを荒く刻み始めた。これだったら手元が狂うことはないかなと予想して、後ろから抱きついてみる。黒崎は何も言わなかったので、遠慮なくうなじに顔を寄せた。

鼻先を押し付けてすんすん息を吸い込む。今日は香水も何もつけていないらしく、匂いが薄い。
黒崎は体臭がほとんどなくて、柔軟剤や香水が変わると一緒に匂いが変わってしまうと付き合ってからすぐ気がついた。もう少し日が経ってから、ほんのちょっと残る甘い匂いが黒崎の匂いだって事も知った。
それを探すように少し深く息を吸い込む。さっきの汗拭きシートの涼しい匂いに混じって、汗の匂いと甘い匂いがした。今1番好きな匂い。ちょっとドキドキして、それと同じくらい安心する匂いだった。
そのまま、うなじの少し骨が出ているところにキスをする。何度かちゅ、ちゅ、とキスをしてもまだ黒崎は俺を止めない。良いんだ、と思ってぬるりと舌を這わせると、ちょっとだけ汗の味がしてしょっぱかった。ぴく、と黒崎が肩を振るわせる。

「大人しく待ってられないの?お前」

「…ちょっとだけ」

「もう火使うからダメ。手伝うならここに居て、手伝わないなら座って面白そうな映画探してて。あ、皿だけ出しといてよ」

「……はーい」

腹に回していた手をペシっと払い落とされて、仕方なく離れて2人分の皿を取り出した。
レンジからご飯を取り出してラップを軽く外し、フライパンを使う黒崎のそばに置いておく。
気を利かせて卵も解いておくとありがとうと礼を言われて、嬉しくなってまた頬が緩んだ。

手際の良い黒崎がフライパンを煽って米を炒めていく。上手いなあと思って眺めていた。もうできるから椅子とか用意して、と言われて素直に従い、テーブルを拭いて2人分のクッションを取り出した。

-------

「美味かった?」

「めっちゃ美味かった、俺これすごい好き」

「じゃあまた作るよ」

ふふ、と得意げに笑う黒崎と2人で皿を片付ける。作ってもらった方が皿を洗うルールなので、そのまま俺はスポンジを泡立て始めた。

「俺先風呂入ってて良い?汗かいてて気持ち悪い」

「えー……まだ行かなくていいんじゃないの」

「だってお前嗅ぐじゃん!嫌だよあれ恥ずかしいし」

「いい匂いするから平気ですよ」

「やだよそれは!入ってるからね!」

バタンと音を立てて脱衣所のドアが閉じられた。
しばらくしてからシャワーの音が聞こえてきて、いつものように俺はちょっとドキドキする。
手を滑らせないよう慎重に、最近買ったばかりの俺の皿から洗った。

黒崎の家には元々1人分の食器しか無かった。初めの頃は有り合わせの食器で食事をとっていたため、1人は平皿、もう1人はどんぶりで、味噌汁はマグカップに注ぐなどしていた。
それはそれでめちゃくちゃで俺は楽しかったけれど、意外と形から入るタイプだった黒崎は見栄えが悪く気に入らないと言って、2人で俺の分の食器を買いに行ったのだった。
アホそうな芝犬が描かれているマグカップを、綾瀬に似てる!と言って黒崎が買っていたのをよく覚えている。

食器を軽く拭き、乾燥させるために立てかけていく。言われた通りシンクも綺麗に拭いて終了。このまま黙って風呂場に入って一緒にシャワーを浴びてしまおうかと考えが浮かぶ。
下着を用意して脱衣所の前に立ち、どうしようか迷っているうちに黒崎が出てきてしまった。

「おーどしたのそんな所に立って」

「いや…皿洗い終わったから風呂行こうかなって」

「じゃあタイミング良かった、皿もありがとね」

濡れた髪をゴシゴシ拭きながら黒崎がリビングに向かって歩いて行った。さっきつけたばっかりであろうヘアオイルの匂いがふわっと香る。俺は女の子と付き合ったことが無いけれど、多分きっとこの人の方がいい匂いをさせていると思う。
脱衣所を開けると、さっぱりした柑橘類の匂いでいっぱいだった。
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