ぼくらの国防大作戦

坂ノ内 佐吉

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第六章

Chapter.20 セカンドステージへ

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 セカンドステージへ

 10月25日 東京
 幸来紗は、総理大臣の父、岸部利蔵としぞうに会うため、首相公邸を訪ねた。秘書官の月川に案内されると、首相の部屋に入る。
「幸来紗、久しぶりだな。元気か? 会えて嬉しいよ」利蔵は嬉しそうに笑顔を見せる。
「うん、お父さんは元気?」
「まあ、ぼちぼちやってるよ。とりあえず、座りなさい」
 二人はローテーブルを挟んで、高級なソファーに腰を下ろす。
「インドのボランティアはどうしたんだ? 帰国の予定はまだ、だいぶ先のはずだったんじゃないのか?」
「ちょっと、食事がしんどくなってきて。体調も壊しちゃったりしちゃってさ。でも、すごく楽しかったよ。いい体験ができた」
「そうか、幸来紗が満足できたならよかった。それと、横浜に引っ越したって?」
「そうなの。なんか急に環境を変えたくなっちゃって」幸来紗は、適当な理由付けをする。
「それで、わざわざ東京まで来たのは、なにか大事な話があるのか?」
「その理由なんだけど…… 信じられないような話だから…… 最後までちゃんと聞いてくれる?」
「失礼します」月川はノックをして、部屋に入ると テーブルにコーヒーを置く。
「なんだ。言ってみなさい」
 幸来紗は、‟読み始めたら止まらない近代日本史”、友杏からもらった未来の写真集、今後、1ヵ月以内に発生する事件や出来事のリストが入ったトートバッグをテーブルに置くと、少しドギマギしながら話し始める。
「お父さん、最初に言っておくけど、私は決して頭がおかしくなってないからね」
「いいから、言ってみなさい」利蔵は首をかしげる。
「裏付けと一緒に説明するから、ちゃんと聞いてね」幸来紗は、トートバッグから中身を出す。
「結論から言うと、お父さんの力で国防力を強くしてほしい」
「どういうことだ?」利蔵は眉をしかめる。
「まず、再来年、第三次世界大戦が勃発するの」
「なぜ、それが分かるんだ?」
「もう一度言うけど、私は正常だからね。……あのね、私のところに未来人が来たの」
 利蔵は、一瞬、呆れたような表情を見せるが、黙っている。
「これなんだけど、その未来人が未来から持ってきた未来の歴史書なの。それで、これが未来の写真集、第三次世界大戦の戦時中の写真がいっぱい入ってる」
 利蔵は黙って聞いている。
「それで、最後にこれなんだけど、今後、1ヵ月以内に発生する事件や出来事のリストなの。……たぶん、今、お父さんは私の頭がおかしくなっちゃったと思ってる。そうでしょ?」
 幸来紗は冷静に話し、利蔵は真剣な表情で黙って頷く。
「とりあえず、今後1ヵ月、そのリストが現実になるから、毎日確認してみて。それで信じてもらえると思うから」
「ああ、分かった」利蔵の表情は常に変わらなく、口調も一定のトーンだ。
「じゃあ、今日はもう帰るね」 
「幸来紗、秘書官の月川に遅らせるから、待っていなさい」 
 利蔵に呼ばれた月川は、幸来紗を横浜のマンションまで送った。

 4時間後、首相公邸の利蔵の部屋に月川は戻る。
「月川、幸来紗の言っていた話、どう思う?」
 月川は、部屋に設置された盗聴器で、利蔵と幸来紗の会話をすべて聞いていた。
「普通に聞いたら、……娘様なのに恐縮ですが、正気とは思えませんでしたが」
 月川は気まずそうに答える。
「しかし、横浜への道中、インドの話とか、いろいろなことを話しましたけど、とてもしっかりされたお嬢様で正常な方ですよ。……お嬢様、証拠になるようなものを渡していたようですが、ご覧になられたのですか?」
「ああ、見てみたが、まあ、よく手の込んだ代物だ。誰がこんなものを作ったのか? 幸来紗に、そんな人脈があったものか。とりあえず、今後1ヵ月以内に発生する事件や出来事のリストが本当に起こるか毎日確認して、5日毎に私に報告してくれ。それと、あの未来の歴史書に記されている出版社は実在しているのかを調べておいてくれ」
 ―幸来紗は頭がおかしくなっちまったのかな?
 利蔵は、残念な表情を浮かべていた。

 幸来紗と美智は横浜に引っ越し、幸来紗は周人と同棲を始めていた。
「ただいま。周人」
「おかえり。どうだった、お父さんは? いい感触あった?」
「まだ分からないよ。たぶん、私の頭がおかしくなったと思ってるんじゃないかな」
「事件や出来事のリストで現実だって証明できるでしょ。とりあえず、今はお父さんの反応を待つしかないよ」 

 5日後、月川は、利蔵にリストが合致していたか報告する。
「総理、あのリストですが、すべて当たっています。また、あの歴史書の出版社は実在しません。あの本に記されている住所は、今は天ぷら屋でした」月川は、淡々と言う。
 月川はリストと、合致を裏付ける資料を利蔵に渡すと、利蔵は表情を変えずに資料に目を通す。
「なるほどな…… 信じられないが、ニュースの内容からして、人的にコントロールできないこともない」
利蔵は1ヵ月分のリストを最後まで細かくチェックする。
「ポイントはこれだ。この2点に注目しておこう。1日は『11月8日、コスタリカで震度7の地震が発生』、もう1日は、『11月23日、アイスランドで火山が噴火』。自然災害などは、人的にコントロールできないからな。月岡、引き続き、毎日リストのチェックをしておいてくれ」
「かしこまりました。総理」
 利蔵はは手を口に当て、眉間にしわをよせる。   
 ーどういうことだ? 幸来紗は、どこかの秘密結社と繋がりがあるのか?
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