【書籍発売中!】神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)

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第二章

第十六話

「なっ!?お前たちは、他領に行ったのではないのか!!」

 師匠の転移でここに転移したのはいいものの⋯⋯牢屋の鉄の棒を握り、驚きに染まった表情で目を見開き、こちらをガン見している伯爵。
 ジョウはそれを見て、口角を上げて勝ち誇った笑みを浮かべた。

「ふっ!?やはり、我々に悟らせられないように、上手く隠れておったな!?キュウに偵察させた、吾輩の頭脳の勝利よ!」
「ジョウ兄ちゃん、やっぱり臭いのはこいつ?」
 と、ジョウに確認を取るキュウちゃん。だがその表情は、偉く険しい。

「キュウよ。自分で報告してきたではないか。現地で分からぬとは、どういうことだ?」
「臭すぎて、鼻死んだ。もげちゃったの!」

 ん~!っと鼻を摘むキュウちゃん、かわゆす。でも、鼻が利かないのは嫌だよね。分かる。

「そうか、確かに尋常な腐敗臭だからな…⋯慣れなければ、キツイか」

 最後は、独りちるように呟いたジョウ。流石、年の功。慣れるだけの経験を積み重ねたのね。

「そうだよ、ジョウ兄ちゃん!だから、こいつらを早く、浄化させよう!」

 慣れない身体の変化に、普段は温和なキュウちゃんがブチ切れたか?♤マークの尻尾をブンブン振り回し、その遠心力で自らをもぶん回す……どこに行くのかな?

「きゅうちゃん?どうしたのですか!?」

 案の上、師匠が錯ら... 混乱している。

 これは、混乱しても仕方がない。トルネード化したキュウちゃんは、誰にも止めれない。

「ジョウ!キュウちゃん、キレちゃったの!?元に戻すには、どうしたら……」

 少し焦った私に、ジョウは淡々と喋る。

「簡単なことよ。匂いの元を、消臭。キュウの望み通り、浄化させてやればいい。あの伯爵は、操られておる。まぁ……彼自身の野心に付け込まれた状態だから、自業自得と言えなくもないが。その罪はこの後、きっちりその身で贖うことになるだろう……キュウ!自分の箱庭聖域を喚び出せ!」

 ジョウの要請に答えたキュウちゃんは、先ほどの暴れん坊で怒りを発散させたのか。既に、温和なキュウちゃんに戻っている。

「やっと浄化が出来るんだね!?了解!……我が箱庭聖域、来てちょうだい!」
「……なんだ、これ!?」

 キュウちゃんが喚び出した箱庭聖域は、畳20帖ほどの広さだった。

 半透明な固い結界に覆われている以外は、なにも変わらない不思議な空間。だが、一人だけは違ったみたい。

「「「「ぐあ~~!?やけ"る"~!?い"た"い~!!」」」」
 と、牢屋の中で身体を掻き抱きながら、床をのた打ち回っている伯爵。

「ミオ。奴らは、ウルシア様が石化した奴らの残留思念成れの果てだ。ウルシア様が、神力で硬めたはずだったのだが、奴らの欲望は神力をも超えた。石像から漏れ出た残留思念が、有象無象の集合体となり、ミオに仇なさんとしていたのだ」
「私に?……っていうか、またウルシアさんかい」

 迷惑な。ちゃんと、後処理をせんかい!私の目が座ったのを確認したジョウは、前脚で顔を洗う。

「そう言うな、神も完璧ではない。それに奴らは、ただの残留思念だ。同じ狢の波長同士を引き寄せ合う……ただそれが、ミオがいたアターキル領の近くの領主……あの伯爵と合ったというわけだ」
「なるほど。それに見合う野心を持つって、相当だよ?キュウちゃんは、どうやって浄化するつもり?」

 元教皇一味の、神力をも越えた執念と波長が合うとか。並大抵のやり方では、浄化出来ない。

「キュウのこの聖域は、吾輩も持つ聖獣(神獣)特異能力だ。キュウの得意技は、浄化。残留思念の奴らには、この聖域自体が毒だ」
「だから、あんなに苦しんでるんだ」
「そうだ。そしてこの聖域では、自身の眷属。つまり、自分の体毛の具現化が可能だ」
「体毛って……また引っこ抜くの?」

 自己回復が出来るといっても、痛みは感じるのだ。私は想像して、眉を顰めた。 

「そうではない。この聖域の中では、毛周期を自由に操れる。勿論、痛みはない。それに、ミオもエイルも、キュウの必殺技をまだ見てないだろう?」
「必殺技?浄化の?」
「そうだ……キュウ!今こそ、練習した成果を見せる時だぞ!?」
「分かった~!ジョウ兄ちゃん!奴の足止めをおねが~い」
「よし来た!足止めなど、笑止!はりつけにしてくれる!?」

 キュウちゃんの声を境に、聖域の中に具現化し始めた眷属モフモフたち。
 伯爵は、やっと来た出番でハイテンションになったジョウにより、宙に磔にされた。 

「……ちょっと待って?あのモフモフたちの連結って、なにかに似てない?」

 ある物を頭をかすめたが、名前が出てこない。縦に横、360°のもっぷ…モフモフたちが、包囲網を着々と狭めつつあった。

「それはそうだろう!キュウの必殺技に相応しいきっかけを探すべく、ミオの記憶を覗いたのだ。キュウは、一目見てアレを気に入ったぞ?」
「勝手に、なにやってるのさ!?」

 人の記憶を黙って覗くなんて……なんて破廉恥な!思わず怒鳴りつけた私は、悪くない。

「なにを言う!キュウが初めて、自分で選んだ必殺技だぞ!?キュウの体毛で、残留思念を消滅させるのだ!これで、キュウの聖獣としての地位も盤石だ!」

 もしかして、狙いはそっちじゃないの!?

「モフモフが一杯!」
 って、師匠は幸せそうな顔してるけど、そんな顔してる場合か!?いっそ、あれで揉みくちゃにされてしまえ!

「あの迫り来る感じとか、そっくりだ!」
「そうだろう、そうだろう!」

 練習した甲斐があったって……いつ?誇らしげに何度も頷くジョウを、後で質問攻めにしなければ。

「……名付けて!キュウの回転浄化術ローリングクリーンスキル!」
「そのままやんけっ!?」

 即座に突っ込んだ私は、わるくない。

「「「「ぐぁ~~!?来るなぁ~~!!」」」」

 伯爵の瞳が恐怖に染まる。

 顔面は土気色になり、唯一動く頭を必死に振り乱す。拒絶の言葉を吐けど、迫り来る脅威は拭えない。

「ぴゅ~~!聖水だよ~!」
「ぴゅ~~!くらえ~!」
「ぴゅ~~!当たれ~!」
「ぴゅ~~!滅べ~!」

 数多の声が響く中、伯爵に投げかけられた洗剤聖水。その効果は、抜群で。浴びた部分は、じゅうぅ…と焼ける音がする。

「ひぇ!?ちょっと!!あれ、焼けてない?ねぇ!?」

 人の肉が焼けるリアルすぎるホラーに、私の頬は盛大に引き攣る。私の苦手なゲテモノ!?
 私はジョウを揺らすが、体幹の強いジョウめ。びくともしない。

「残留思念の瘴気が濃すぎた故の弊害よ。大丈夫。全ての傷は、キュウのヒールで治る……野心が聖心に変わるだけだ。問題ない」
「なんてことないように言わないでくださる!?…私、無理!こういうの、無理!ここから出して~~!?」

 半透明の壁を叩いて抗議をするも、哀れかな。誰も答えてくれるものは、いなかった。
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