【書籍発売中!】神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)

文字の大きさ
38 / 138
第一章

第七十二話 療養院のススメ①―治療費の問題―

 ジョウ Side

「師匠~!」
「ミオ!?…どうしましたか?」

 奴と会うなり、駆け寄って足元にしがみついたミオを見て、吾輩に視線を走らせるエイル。吾輩は、奴と視線が会うのを認めて、ため息を吐く。

「ふぅ…安心しろ、エイル。ウルシア様からお願いがあってな。それに関する様々な事に、頭を悩ませているだけだ」
「また、厄介ごとですか!?」

 吾輩の言葉に、エイルはギョッとした。まぁ、ウルシア様の頼みはややこしい物が多いから、無理はないか。ポーションしかりだ。

「師匠は、ポーションにょ運搬は済みましたか?」
「えぇ!次のポーションの材料も、ドリアンに頼んできましたから、問題ありません」
「ドリアン、元気そうでしたか?」
「えぇ。ミオからのお願いを伝えたら『今度はミオ様たってのお願いですので、叱られる恐れはありません!』と言って、張り切っていましたからね」
「にゃはは…元気になったんなら、いいにょかにゃ?」

 やはりミオは、前回の聖域に赴いた際、ドリアンの憔悴に気づいておったか。それを気にして…ではないだろうが、薬草採取の依頼が、ドリアンの意欲に繋がったのなら、ミオの中で良しとなるだろう。

 祭りの催事の相談やミディの経過観察、エイルとのポーションの新たな改良研究(錠剤)など、やることが多すぎる。
『手伝える人員がいるならば、そちらに振れ』と、吾輩がミオを説得した。初めは難色を示していたが、この様子ならば御の字である。

「時に、ミオよ」
「ん?にゃに?ジョウ」

 吾輩の問いかけに、引っ付き虫と化したミオが、首だけをこちらに向ける。

「……ミディの件を、エイルに聞いてもらわないかんだろう?いつまで休憩しているつもりだ」

 引っ付き虫のように、エイルにしがみついているミオに、吾輩は呆れの視線を向ける。現実逃避をするのも構わないが、それだけ時間は過ぎていくのだがな。

「だってミディってば、大人顔負けにょ精神力にょお答えにゃんだもん。逆にこっちがにゃやむってもんでしょ~!」

 頭を抱えたミオに、また悪い癖が出ているな…ミオのなんでも抱え込む癖は、治らないんだろうか?と思う。思ったけれども。

(……無理か。32歳まで治らなかったのだ。『三つ子の魂、百まで』とは、よく言ったものだ)
 と思い直し、密かに息を吐き、頭を振る吾輩だった。


「珍しい症例とは言え、一度は死を覚悟したんだ。それだけの経験をしたならば、子どもだろうと、精神年齢の成熟は不思議ではない」
「そうにゃんだけど…はぁ、どうしようかな」

 へにゃんと潰れたカエルのように、ソファにもたれたミオ。今日は、かなり気疲れしたようだな。

「ジョウ。ミディアンナ嬢のところで、なにかあったのですか?」
「実はな―――」

 潰れたミオを気遣わしげに見ながら、吾輩に話を振ってきたエイル。仕方がないので、吾輩が掻い摘んで話した。

「そんなことが…」
 顎に手を当てて考え込むエイル。吾輩は、ミオの様子を視界の端で見ながら、更に話を続ける。

「ミディアンナ嬢は、治療費が安価でもいいから、女神様の話を受けたいと言っているんだ」
「安価は……無理でしょう」
「…であろうな。ミオも、ウルシア様と話している時には浮かばなかった問題点に気づいて、その対処をどうしようかと悩んでおるのだ」
「問題点?」
「ウルシア様との話では、ミディアンナ嬢の安全確保の為に、祖母であるジョバンナのところ薬師ギルドで治癒院を開くいう方向だったが……そもそも重篤な患者を動かすのはマズイんじゃないか?という事に思い至ったらしい。ならば治療は、患者の家であろう?」
「そうなりますね。なにか、問題があるのですか?」
「ここで肝になるのは、ポーションが買えない世帯ということになる。分割方法で払える人々はまだかまわないが……『あぁ、なるほど』そういうことだ」

 吾輩の濁した言葉を理解したエイルが、相槌を打った。

「でもだからと言って治療を断るのは、ウルシア様の理念に反するからな。幸いと言ってはなんだが、ウルシア様は、魔法契約の支払い方法を快諾してくれている。だが当の本人が、病人の気持ちを痛いほど理解しているからな。ウルシア様へのお勤めとして、高額な治療費を無理に徴収することを善しとしないのだ」
「ミディアンナ嬢の気持ちも分かりますが、やはり難しいですね」
「あぁ…管轄外での治療になると、護衛か同行者大人を用意する必要がある。その費用もかかるからな」
「それ以外にも、安価な値段設定の前例を作れば、治療を仕事にする人々に、後々迷惑がかかることになります。個々に任された価格設定とはいえ、それは避けたいことです」
「そうだな。ミディアンナ嬢は『安価で治療を』と言うが、当初の奴隷宣言をしてでも、ミオに治療をお願いした人の言葉とは思えん」
「それは…その時は藁にも縋る思いだったのでしょう。説得力がないと言えばそこまでですが、彼女の治療を最後まで諦めなかったサミュエル父親の姿を見てきているのです。希望の光が見えれば、それを掴もうとするのが人間です」
「なる程な。体験しているからこその願いとも言えるか。本音は、ミディアンナ嬢しか分からぬがな」
「はい……とりあえず、ミディアンナ嬢の希望は分かりました。彼女の保護者であるサミュエルや、会場予定に指定されたジョバンナにも意見を聞くべきですね。これ以上の話はそれからになりますが……ミオは、どうしたいですか?」
「ミディにょ気持ちも分かるけど、やっぱり対価は払うべきだと思います。そにょ分野を仕事にしている人々が、ミディに『蔑ろにされた』と誤解させない為にも。それと分割は、利子が発生しにゃい無利子がいいです」
「なるほど。業界の暗黙のルールというものがありますからね。ミディアンナ嬢は、未成年の為にその辺りが疎いのでしょう。彼女には、ちゃんと理由を話せば、理解してくれますよ」
「はい、そうですね」
 
 やはり……どうしても、師匠には迷惑をかけてしまうんだな、と思うミオだった。

 ♢

「あぁ、そうだ。商業ギルドのマットからの連絡で、次回のアポを明日の午後にお願いしたいそうですよ?」
「わっ!?明日にょ午後ですか?」

 途端に慌てだした私に、師匠は首を傾げた。それはそうだ。調薬釜を使いたくて、午後までに帰ってきてもらうように、魔鳥で頼んだのだ。

「ジョウから魔鳥が届いていましたが、なにか用事がありましたか?」
「はい。次回にょ面会までに、ギルマスへ渡す見本の植物紙を渡す約束をしていたんです。だから調薬釜を使いたくて、師匠へ魔鳥を飛ばしてもらったんです」

 私は、師匠をチラチラと横目で様子を見ながら、そう言った。

「あぁ…ジョウが言っていたミオの用事は、そのことなんですね。調薬釜の使用には、私の同席を約束させましたからね。いいでしょう。その植物紙とやらを、一緒に作りましょうか」

 そうすると、師匠は苦笑いをしながら移動を始めた。

「材料は、なにが必要ですか?調合室に移動しながら聞きますよ」
「えっとですね…材料は、精製水、コンゾー、灰汁、山芋、美白にょ実ですね!」
「残念ながら、美白の実はありませんね。変わりに、ホワイトスライムの液はどうでしょうか?」
「分かりませんけど、試してみる価値はあると思います」

 なんだ?ホワイトスライムって…と考えながら、師匠の後をついて、調合室に向かったのだった。

感想 4

あなたにおすすめの小説

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

成瀬一
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

『なでなで』しかできないと追放されたテイマー少女、無自覚に神獣をワンコ化して無双する

葉山 乃愛
ファンタジー
「お前の『なでなで』なんてゴミスキル、戦闘じゃの役にも立たねえんだよ!」 冒険者パーティーを無情にクビにされたテイマーの少女・ミレーヌ。 彼女の持つスキルは、対象を優しく撫でるだけの、攻撃力ゼロ、射程距離ゼロのハズレ枠。 行く当てもなく、命の保証もない『迷いの森』へ迷い込んだ彼女が出会ったのは、一匹の「大きな黒いワンちゃん」だった。 「わあ、フワフワ! よしよし、寂しかったの?」 空腹で死にかけ、ただモフモフに癒やされたかったミレーヌは、持ち前のスキルでその巨体を撫で回す。 だが、彼女は知らなかった。 そのワンちゃんの正体が、かつて世界を終焉に導きかけた伝説の神獣『フェンリル』であることを。 そして、ミレーヌの「なでなで」は、ただの愛撫ではなかった。 どんな凶悪な魔物も一瞬で野生を失い、絶対の忠誠を誓う「神の愛撫」だったのだ! 「次は大きな赤いトカゲさん? 鱗がツヤツヤで綺麗だね!」 伝説の赤竜(レッドドラゴン)さえも「アカくん」と名付けてペットにし、ミレーヌは危険地帯のど真ん中に、世にも恐ろしい(本人は幸せな)モフモフ・スローライフを築き上げていく。 一方、彼女を捨てた元パーティーや、異常事態を察知した王国騎士団は、ミレーヌの背後に控える「終末の軍団(※ただのペット)」を見て、泡を吹いて絶望することになるのだが……。 「みんな、とってもいい子ですよ?」 本人はどこまでも無自覚。 最強の神獣たちを従えた、少女ののんびり無双劇が今、幕を開ける!

婚約破棄されたので田舎の一軒家でカフェを開くことにしました。楽しく自由にしていたら居心地が良いとS級冒険者達が毎日通い詰めるようになりました

緋月らむね
ファンタジー
私はオルレアン侯爵令嬢のエルティア。十四歳の頃、家の階段を踏み外して頭を打った衝撃で前世を思い出した。    前世での名前は坂島碧衣(さかしまあおい)。祖父母の引退後、祖父母の経営していた大好きなカフェを継ぐつもりでいたのに就職先がブラック企業で過労の挙句、継ぐ前に死んでしまった。そして、自分が息抜きでやっていた乙女ゲーム「星屑のカンパニー」の悪役令嬢、オルレアン侯爵令嬢エルティアに転生してることに気がついた。  エルティアは18歳の舞踏会で婚約破棄を言い渡される。それだけならまだしも、婚約者から悪役令嬢として断罪され、婚約破棄され、父親から家を追い出され、よからぬ輩に襲われて殺される。  前世だってやりたかったことができずに死んでしまったのに、転生してもそんな悲惨な人生を送るなんて、たまったもんじゃない!!それなら私は前世継ごうと思っていた祖父母のやっていたようなカフェを開いて楽しく自由な人生を送りたい。  森が開けた自然豊かな場所で念願のカフェを侍女のシサとともに開いて楽しく自由にカフェをやっていたら、個性豊かなS級冒険者たちが常連として私のカフェにやってくるようになりました!

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)