異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)

文字の大きさ
16 / 103

六日目―行き先、決定!


 子爵邸に辿り着くまでのヒヤヒヤもしたし、到着した後の一悶着もあったが、今となっては、実に有益な時間だった。

 無駄になったか?と思えた目標ターゲットの魔力の残滓が切っ掛けとなり、ベーラン子爵と会話の糸口が掴めのは、重畳だった。
 しかも、図書館の顔パスは勿論、冒険者カードよりも強い後ろ盾メダルを得られたことは、なによりもの収穫だった。
 憂いは払うべきだと準備したあの時の自分を褒めたいぜ。結果なにもなかったが、無ければ、それはそれでいいのだ。

 そして一番の成果は、魔法都市アルティメットの存在を知れたこと。その魔法都市にある魔法学園の大図書館。
 そこにある書籍や研究論文で、生活魔法や古代の魔法文字コードの研究がどれほど進んでいるのかを知りたい。
 それによって、他人に知られても良い生活魔法の領域も見えてくる。当分の間は、バレンさんの生活魔法事典が頼りだ。
 
 なにせ、魔法都市の大図書館の入場権で顔パスは勿論、書物の拝見料も無料タダだ。正に、至れり尽くせりだ。
 ……なのだが、魔法都市アルティメットは隣国にある。そこへ行くまでの旅銀を、これから稼がなればならない。

 しかし、貴族の至れり尽くせりには、庶民としては文句の一つも言いたくなるが、こういう権利の受容の変わりに、民の為に頑張らなければならないのが、貴族だったな。

 確か……ノブレス・オブリージュだったか?果たしてこの世界に、その道徳観を持った貴族が、どれほど存在するかな?

 俺は、ベーラン子爵に貰った受領サインの依頼書を大事に懐へ仕舞いながら、報告の為、冒険者ギルドへと歩を進めていた時だっった。

 俺の天啓の声が聞こえたのは。

『冒険の身分証明書が出来たなら、入領税が返ってくるよ!木札も、門兵さんに返さなきゃ!今日の夕没までが時間制限タイムリミットだよ』


 ……はっ!? 

(依頼にすっかり夢中になっていて忘れるところだった!?まだぎりぎり、三日目の範囲だ!)

 せっかくの銀貨2枚2千円。無駄になるなど、論外だぜ!?俺はギルドに向けていた足を、颯爽と外壁へと向け直し、急ぎ足となったのだった。

(誰か分からないけど、神様ありがとう!)
 と、俺は誰かも分からぬ存在に感謝した。

 銀貨と銀貨では、どちらが額が大きいか?それは、小銀貨となる。銀の鋳造率が多く、銀貨よりも価値は上である。また金貨も、小金貨が相手では価値が下になる。


 通貨の価値
 虹銀貨ミスリル貨幣1枚=100億円
 大金貨1枚=1億
 小金貨1枚=1000万
 金貨1枚=100万円
 大銀貨1枚=10万円
 小銀貨1枚=1万円
 銀貨1枚=1000円
 銅貨1枚=100円
 鉄貨1枚=10円

 という具合に制定されているが、市井の市場や生活圏で出回るのは、せいぜい小銀貨までだな。商家などは、その限りではない。

 ♢

「ちょっと貴方!?」
「……うへぇ」


 外壁の門兵さんに声を掛け、ぎりぎり三日前に貰った木札を返せば、彼には苦笑いで出迎えられた。
 時々、いるそうなのだ。新たな新生活に夢中になり、木札を返しそびれそうになる奴が……いや、実際にいたそうだが。

 そんなコメディを終え、報告の為にギルドに来れば、またもや現れたアンナ。
 まだ、俺とのパーティー結成を目論んでいるのか?俺にはその気はないからなぁ。早々な諦めてくれることを願う……でないと、敵わん。

「ちょっと聞こえてるからね!?なんで、そんな嫌そうな声出すのよ!?」
「それは……なぁ?」

 何故って、本当のことを言えば、アンナは泣いてしまいかねない。俺は困った表情を作り、後ろ手で頭を掻いた。

「貴方と、パーティーを組むのが嫌だからに決まっているではありませんか!?」
「うぉ!?」

 またなんか出てきた!?
 この間はいなかったのに、なんだ!?この辺りの子供界隈の二大巨塔か!?

 茶色のボブカットをしたアンナに対し、桃色のツインテールをした、取り巻きに囲まれた勝ち気な瞳の女の子。

 何故、こうも苦手な女子ばかり現れるんだ?思わず、頭を抱えてしゃがみ込みそうになるのを耐えながら、俺は無視をスルーすることにした。

 どちらに転んでも、俺に得はない。

「すみません。依頼完了報告にやってきました」
「…あっ、はい!では、依頼の受領書をお願いします」

 俺達のやり取りを見ていたソフィアさんは、俺の行動に一瞬呆けたが、すぐに我に返り、お仕事を開始した。

 今は、普通にカウンター業務なんだね。
 冒険者同士のトラブルには、口を挟まないのがギルドの方針だ。(余りにも一方的で、酷い場合は別だ。その際の罰則も、ちゃんと取り決められている)
 だから、俺が依頼の報告をしても、ギルドとしてはなんら問題はない。

 少々困惑気味のソフィアさんだが、俺は、ベーラン子爵のサインが書かれた受領書を渡した。

 俺の行動による女子たちの反応は、口をあんぐりと開けて、信じられない!とでも言いたげだ。

「お待たせしました!受取人のサインの確認も取れましたので、依頼達成となります!こちら、依頼料の小銀貨1枚となります」
「ありがとうございます」

 木で出来た簡素なお盆に載せられた硬貨1枚を受け取った俺は、(次は、魔法具店だな…)と踵を返した。

 ソフィアさんが可笑しさ堪え、ギルドを去る俺を見ていたとも知らずに。
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生?憑依?したおっさんの俺は【この子】を幸せにしたい

くらげ
ファンタジー
鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は、四十目前の独り身の普通という名のブラック会社に務めるサラリーマンだった。だが、目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた。しかも【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? 「誰も【この子】を幸せにしないなら俺が幸せにしてもいいよな?」

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

最弱Sランク冒険者は引退したい~仲間が強すぎるせいでなぜか僕が陰の実力者だと勘違いされているんだが?

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
冒険者のノエルはSランクパーティーの荷物もちだった。 ノエル自体に戦闘能力はなく、自分のことを足手まといだとすら思っていた。 そして、Sランクになったことで、戦うモンスターはより強力になっていった。 荷物持ちであるノエルは戦闘に参加しないものの、戦場は危険でいっぱいだ。 このままじゃいずれ自分はモンスターに殺されてしまうと考えたノエルは、パーティーから引退したいと思うようになる。 ノエルはパーティーメンバーに引退を切り出すが、パーティーメンバーはみな、ノエルのことが大好きだった。それどころか、ノエルの実力を過大評価していた。 ノエルがいないとパーティーは崩壊してしまうと言われ、ノエルは引退するにできない状況に……。 ノエルは引退するために自分の評判を落とそうとするのだが、周りは勘違いして、ノエルが最強だという噂が広まってしまう。 さらにノエルの評判はうなぎのぼりで、ますます引退できなくなるノエルなのだった。 他サイトにも掲載

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。